だが彼を雇うということは、以前に弘次が友作と取り交わした約束を踏みにじることにもつながった。友作自身も、まさか再び呼び戻されるとは思っていなかった。弥生の件を聞いたとき、彼も非常に心配していたが、すでに弘次の下では役に立たない存在となっていたため、いくら心配してもどうすることもできなかった。だが彼はそれでも諦めず、ここ数日ずっとひそかに動いていた。そんな中、思いがけず弘次から連絡が入り、再び弥生のそばで彼女を守るよう命じられた。「彼女は今、記憶を失っている。そばにいて守るなら、君がすべきことはわかっているはずだな?」友作は無表情のまま、彼の前に立っていた。「霧島さんが記憶を失っている今でも、まだ引かないつもりですか?」この言葉に、弘次の眉間が深く寄せられた。「君を呼んだのは、彼女を守るためだ」「守ることはできます。ただ、ずっと見張るのは無理です」「君はすべきことだけをすればいい」「霧島さんを思ってきた気持ちは、必ず彼女に伝わっています。だから今は無理をせずに身を引けば、記憶を取り戻したときにきっと受け入れてくれるはずです」今さらながらでも、友作はどうにかして弘次に思い直してほしかった。だが、その言葉はもう弘次の心には届かない。彼は冷ややかな笑みを浮かべ、命じた言葉だけを告げると、その場を立ち去った。残された友作はその背中を見つめながら、心の中で深いため息をついた。やはり無理なのか。弘次が霧島さんを本当に大事にしていることは、見ていてわかる。彼女がほんの少しでも傷つくのを恐れているくらいだ。でも、彼がしていることはもう取り返しがつかない。......だが、今最も重要なのは霧島さんが記憶を失っているという事実だ。弥生は同行者としてアジア系の顔立ちの女性を一人選び、彼女と会話を交わしていた。その女性の名前は前田澪音といい、弥生よりも年下で、ここに来たのも給与が良かったからだという。澪音は話すときも恥ずかしそうに頬を染め、素朴な印象を与える少女だった。こういう子なら、一緒に出かければ自分の行動の自由もある程度確保できそうだ。弥生はそう計算しつつ、適度に相手と会話を続けた。「前はどこに住んでたの?」「私は南市の出身です。学校も南市で通ってました」「へえ、そうなの? 私も南市
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