弘次にそう言われ、弥生は真剣に思い返してみた。確かに、自分はあまりにも食べていなかった。彼が差し出した薬にも、一応は理がある。でも、彼の掌の上の薬を見つめたあと、弥生は最後に首を横に振った。「やっぱり、飲みたくない」「弥生、言うことを聞いてくれないか?」弘次の声には少し困ったような響きがあり、軽くため息をついた。「もし苦いのが嫌なら、砂糖を持ってこさせようか?」「そんな手間はいらないわ」弥生は眉をひそめた。別に苦いのが嫌なわけではない。薬くらい、一気に飲み込んでしまえば済むことだ。ただ、特に不調もないのに、なぜ自分が薬を飲まされなければならないのかが納得できなかったのだ。「じゃあ、錠剤が大きすぎる?半分に割ろうか?」あれこれ案を出して心配そうに立つ彼を見て、弥生は思った。もし自分がこの薬を飲まなければ、彼は今夜じゅうでも説得し続けるに違いない。「分かった、飲むわ」弥生は彼の掌から薬を受け取り、温水で服用した。「これで満足?もう休んでいい?」弘次はそんな彼女の様子に思わず手を伸ばし、彼女の髪をやさしく撫でた。「ゆっくり休んで。おやすみ、弥生」翌朝。朝食の席で、弥生は弘次に尋ねた。「彼をいつ送るつもり?」「もうすぐだ。二、三日以内に」弥生はうなずき、それ以上は言葉を交わさず、静かに食事をとった。弘次は注意深く観察していた。だが彼女の食欲は増えるどころか、さらに減っていた。ほんの少し口をつけただけで、すぐにスプーンを置いてしまった。弘次は唇を引き結び、複雑な思いを押し隠して、去ろうとする彼女を呼び止め、あらかじめ用意しておいた薬を差し出した。「今日の分だ」弥生が見ると、昨日より一粒少なかった。昼間なので、助眠薬は抜かれているのだろう。弘次はじっと彼女を見つめた。昨日、薬を飲ませたが効果は見られなかった。それは薬が合わなかったのか、それとも彼女の問題が薬では解決できないのか。彼女の心のしこりとは何だ?弘次は薄い唇を噛んだ。分かっているはずだ。彼女が最近ずっと気にしているのは、あの男を安全に送り出すこと。もしその願いが叶えば、心のしこりも解けるのではないか。そう思い至った弘次は、この件を急がせるよう指示を出した。その知らせを聞いたとき、弥生は少し驚いた。
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