All Chapters of 夫の元カノが帰国!妊娠隠して離婚を決意した私: Chapter 1001 - Chapter 1003

1003 Chapters

第1001話

修は、ずっと侑子のそばにいて、彼女の検査を見守っていた。 ただ、心ここにあらずという感じで、どうしても―若子の哀しげな顔が頭から離れなかった。 「修、顔、大丈夫?医者に見てもらった方がいいんじゃない?」 侑子は心配そうに言う。 「もう腫れてきてるし」 修は軽く首を振りながら答える。 「大丈夫だよ。あと二日もすれば治るし、心配しないで。今はお前が一番大事だから」 侑子は、修の言葉を耳にし、心が温かくなった。 「そうだ、修。昨日、私に約束したよね?今日も検査を受けるって。じゃあ、先に行ってきて。二人で一緒にやろうよ」 修は少し迷った後、優しく言った。 「大丈夫だよ。お前が終わるまで待つよ。お前を見守ってるから」 「修、いいから先に行って。結果を待つのは一緒にするんだから、時間を無駄にしないで」 侑子は修の体調が心配で仕方なかった。 彼がしっかりと健康でいなければ―それが彼女の未来を支えるためにも必要なことだ。 この男が元気でないと、どうするんだろう― 修は、侑子が少しでも安心できるよう、そっと彼女の髪に手を置いた。 「わかったよ。今すぐ行くから、お前はここで待ってて。医者がちゃんと見てくれるから安心して」 侑子がいるのはVIP病室。最高のケアを受けられる場所だ。 それがあるから、修も少しだけ心が軽くなった。 「いってらっしゃい。何かあったら、すぐに電話するからね」 修は彼女の額に軽くキスをしてから、部屋を出て行った。 侑子はベッドに横になり、ふと窓の外に目を向け、深く息を吐き出す。 ―私はこんなに頑張ってるんだから、きっと天は私を見捨てないはず。 口元に、ほのかな自信を浮かべた笑みを浮かべながら。 しばらくして、携帯電話の着信音が鳴り響いた。 侑子はスマホを手に取った。 画面に表示されたのは、見覚えのない番号。 少しだけ首をかしげながら、通話ボタンを押す。 「はい」 「山田さん、俺だ」 その声を聞いて、侑子の表情が一瞬変わる。 楚西也―彼の声だった。 「遠藤さん......どうして、私の番号を?」 「お前の番号を調べるなんて、簡単なことだ」 そう言われて、侑子はすぐに察した。 ―紙、見たのね。 自分が渡したあの紙切れが、ちゃんと
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第1002話

「そうですよ、最初はそう思っていました」 侑子は冷ややかな口調で続ける。 「あなたがあんなことをしたと知って、本当に憎くて、できることならアメリカの刑務所で一生出てこられなければいいとすら思っていました。 でも、よくよく考えてみたんです。もしあなたが本当に捕まってしまったら、松本さんはまた『独り身』になるんですよね? そうなれば、修には山ほど理由ができます。きっと彼女と「やり直す」って言い出すはずです。そうなったら―私が捨てられる可能性も出てきます。 だから考えたんです。あなたが捕まらず、松本さんのそばにい続けてくれた方が、私にとっても都合がいいって。 ......『あなたのため』じゃなく、『私自身のため』に、そう決めたんです」 その言葉に、西也は長く沈黙した。 ―確かに、理屈としては通っている。 けれど、西也の性格は疑い深い。それだけで納得するわけがなかった。 「......俺は、なんでお前の言うことを信じなきゃならない?もしこれが罠で、俺をはめるための芝居だったらどうする?」 「信じなくても構いません」 侑子は淡々と返す。 「ただ、修は病院から出たらすぐに警察に証拠を提出します。そして私も証言します。 修は一流の弁護士を雇いました。あなたを本気で『牢の中に叩き込む』つもりなんです。 信じるも信じないも、あなた次第です。信じないなら、そのまま何もしないでいてください。そのうち、警察が迎えに来ますから」 再び、通話口から沈黙が返ってきた。 侑子の耳には、明らかに荒くなった西也の呼吸音が聞こえていた。 しばらくして― 「......もしお前が俺を騙してたら、絶対に許さないからな」 「遠藤さん、ひとつだけ申し上げておきます。 あなたが私を『許さない』ということは、つまり―修と松本さんを近づけることになります。 私たちはお互いを嫌っているかもしれませんが、お互いにとって『有益な存在』でもあります。 松本さんのそばにあなたがいれば、修は近づけない。そして、修のそばに私がいれば、松本さんに近づけない。 私たちが協力し合えば、それぞれの『愛する人』を守ることができるんです。 それでも、どうしても私を敵に回したいというのなら―仕方ありません。でも、遠藤さんほどの方なら、そんな愚かな
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第1003話

「修、検査の結果がどうであっても―もう、胃を無理させちゃだめよ」 侑子は修の大きな手を握りしめ、その手をそっと自分の頬にあてた。 「もうあなたには、私がいるのよ。私のためにも、自分の身体を大事にして。もう、そんなふうに好き勝手に傷つけるのはやめて」 修は小さく頷いた。 「......ああ、分かった。約束する」 「修......ねぇ、少しだけでいいから、ベッドで抱きしめててくれる?なんだか、急に心細くなっちゃって」 弱々しく頼むその姿に、修は逆らえなかった。 「分かった。じゃあ、横になろうか」 修は手元のリモコンを操作して、病床の背を少しずつ倒していく。 侑子がそっと横になると、修もその隣に静かに身体を横たえ、優しく彼女を抱き寄せた。 侑子は修の顔を両手で包み込み、そのまま目を閉じ、唇を重ねた。 修も彼女の後頭部に手を添え、熱を帯びたキスを返す。 ―その唇から、互いの温もりが流れ込んでくる。 修のキスは、次第に深く、激しくなっていった。 ...... その頃― ヴィンセントはついに、命の危機を脱し、意識を取り戻した。 今はすでに一般病棟へと移されていた。 窓から差し込む陽光が、静かな病室をやわらかく照らし、穏やかな空気が満ちている。 ベッドに横たわるヴィンセントは、ゆっくりと身体から疲れが抜けていくのを感じていた。 そして、視線の先には―若子の姿。 彼女はずっとそばに座っていた。 その顔には、まだかすかに不安の色が残っていたが、彼が目を覚ました瞬間、ふっと力が抜けたように安心の笑みが浮かぶ。 その瞳には、安堵と喜びが柔らかく灯っていた。 「冴島さん......やっと目を覚ましたのね」 若子の笑顔は、まるで太陽の光そのもの。見る者すべての心を温めるような―そんな優しさに満ちていた。 千景は、一瞬、動揺したように目を見開く。 「今......俺のこと、なんて......?」 若子は、微笑んだまま答えた。 「冴島さん。そう呼んでって、あなたが言ったでしょ?だから私は、ずっとその名前を覚えてたの。一生、忘れたりなんかしないわ」 その言葉を聞いて― 千景の唇の端に、やさしい笑みが浮かんだ。 彼は―少しずつ、この「名前」を好きになっていった。 ずっと
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