ビュン!振り上げられた鞭が空を裂き―バチンッ!!「―ああっ!!」鋭い音と共に、光莉の背に赤い線が走った。皮膚が裂け、血が滲む。闇の中、彼女の悲鳴が痛々しく響き渡った。......成之は今日、光莉に何度も電話をかけていた。だけど彼女は一度も出なかった。なんだか胸騒ぎがする。何か、良からぬことが起きたような―そんな直感が拭えない。そこで彼は人を使って調べさせた。調査の矛先が藤沢家に向けられたとき、ようやく手がかりを掴んだ。どうやら光莉が行方不明になったらしい。成之は即座に警戒モードに入り、人を使って彼女の行方を探させ始めた。同時に、藤沢家の動向も洗い出した。その結果、藤沢家が一つの腕時計を追っているという情報を掴んだ。その腕時計は、世界に数十本しか存在しない限定品で、国外の所有者を除けば、B国では所持者が極端に少ない。成之はその情報を元に持ち主を一人ずつ洗っていった。ところが―その中の一人が、自分の母だった。彼はすぐに母に電話をかけた。しかし、どれだけコールしても応答はなかった。メッセージもすべて既読無視。痺れを切らした成之は、自らハンドルを握り、母の元へと車を飛ばした。到着した別荘は、既に明かりが落ちていた。成之はクラクションを何度も鳴らし続けた。その音に気づいたのか、ようやく門が開いた。紀子が、寝巻きに上着を引っかけて外へ出てきた。車を降りてくる成之の顔を見て、彼女は一瞬怯んだ。「兄さん、こんな時間にどうしたの?」鉄のように冷たい顔をした成之が、一気に距離を詰めて紀子の腕を掴んだ。「母さん、家にいるのか?」「いないよ。最近はすごく忙しくしてて、ずっと外に出てる」「何で忙しいか、知ってるか?」その声には、いつもの兄とは違う重みがあった。紀子の表情に不安の色が浮かぶ。「......いったい、何があったの?兄さん」「先に答えろ。母さん、最近は何してる?」成之の声はさらに鋭くなった。紀子は思わずビクッとし、慌てて言葉を返す。「細かいことまでは知らないけど......なんか、仕事のこととか、投資とか言ってた」その「投資」という言葉を聞いた瞬間、成之の中で全てが繋がった。光莉の失踪―絶対に、母が関わってる。「本当に、何があったの?お願い、兄さん....
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