この状況を前にして、若子はしばし呆然としてしまった。―どうやって、どんな顔をして受け止めればいいのか、分からない。誰よりも大切だったおばあさんが、もう自分を覚えていない。他の女を、自分の代わりの孫娘だと信じている。けれど、それを否定することすらできなかった。無理に訂正すれば、おばあさんを傷つけてしまうかもしれないから。だから、若子は苦笑いを浮かべて言った。「そうなんです。友達として......会いに来たんです」「そうかいそうかい」華は穏やかな笑みを浮かべ、「あんたも美人さんだね。名字も松本かい?赤ちゃん、ちょっと見せてごらん」「はい」若子は胸の奥の痛みを抑えながら、暁をそっとおばあさんの腕の中に預けた。石田華はその小さな命を抱きながら、うれしそうに目を細めた。「まぁ、かわいいねぇ。この子、なんて名前?」「......松本暁です」若子は声を震わせないように、精一杯こらえた。「いい名前だねぇ」石田華はうれしそうに顔を上げ、侑子へ話しかけた。「若子、あんたも修と一緒に早く子どもを作りなさいよ。おばあさん、待ちきれないよ」「......」侑子の頬が、みるみる赤く染まった。若子はその光景をただ見つめるしかなかった。胸の奥で何かが崩れていくのを感じながら、それでも表情には出さないように努めた。ちょうどそのとき、修が姿を現した。さっきまで洗面所にいたらしく、リビングに入ってきた瞬間、若子を見つけ、視線をしばらく彼女に固定したまま動かなかった。「修、あんたの話をちょうどしてたところだよ」と石田華が言った。修は一瞬、どの「若子」の話か分からず戸惑ったようだった。「おばあさん、私たちも考えているから」侑子が修の腕にそっと手を添えた。「焦らず自然に、ってことになってるよ」「そうそう、自然が一番だねぇ」その瞬間、修にも分かった―おばあさんは、本物の若子を見ても、それが誰か分からないんだ。この家での「若子」の立場は、すでに侑子に取って代わられていた。しかも修も、それを黙認している。訂正なんて、もうできない。石田華のためにも、見て見ぬふりをするしかなかった。若子は何も言わず、暁をそっと抱き直し、立ち上がった。―もう、ここにいる理由はない。「石田さん、私、ちょっと用事があるのでこれ
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