Semua Bab 夫の元カノが帰国!妊娠隠して離婚を決意した私: Bab 1311 - Bab 1320

1359 Bab

第1311話

ノラは冷たく笑った。「もうすぐ会えますよ。その時には、もっと面白いことが起きるはずですから」バタン、とドアが閉まる音が響く。若子はその場に崩れ落ち、涙を流しながら泣き続けた。......修は手足を縛られたまま壁にもたれかかり、横目で曜を見る。曜の方が、自分よりも傷がひどい。でもノラは、曜を死なせるつもりはないらしく、しっかり手当てをしていた。曜は気を失ったあと、ゆっくりと意識を取り戻し、目を開けて修と視線を合わせた。目に一瞬、後悔の色がよぎる。「修、すまない。お前まで巻き込んでしまった」修は鼻で笑う。「父さん、前にお前、俺のせいでおばあさんが死んだって言ってただろ。でも実際、全部の元凶はお前の女癖のせいじゃないか」曜は苦しそうにうなずく。「その通りだ。全部俺のせいだよ。昔はその責任をお前に押し付けてた。すまなかった」「で、他にまだどれだけあるんだ?父さん、昔どんだけ母さんを裏切った?」修の声にも、自然と嫌悪がにじむ。「当時の俺は反抗ばかりしていた。お前の母さんとは結婚したくなかった。でもおばあさんがどうしてもって言うから、逆らうために......」曜はぐったりと壁にもたれ、顔を上げて言う。「今さらこんなこと言っても遅いな。俺は後悔してる。藤沢家のみんなを不幸にした」「父さん、今や藤沢家は死んだり傷ついたりで、桜井の目的は十分果たしただろ」「修、お前が俺を恨んでるのも、お前が俺を嫌ってるのも分かってる。全部俺が悪い。でも俺は桜井くんのことを憎めない。彼がこうなったのも俺のせいだ。もし俺が彼の母親とちゃんと向き合っていれば、こんなことにはならなかった。彼が俺を殺したいって言うなら、それも受け入れるさ。もし最初からあいつの存在を知っていたなら......放っておいたりはしなかった。絶対に、彼を一人にしなかった」父さんが泣きながら弱々しく話す姿を見て、修の心にもほんの少しだけ、動くものがあった。「俺、自分に弟がいるなんて知らなかったよ。こんなに長い間ずっと、いきなり現れて、藤沢家に災いをもたらすなんてさ。もしあいつがこんなことをしなかったら、全部違う未来があったのかもな」でも―もう、何もかも遅い。起きてしまったことは、どんなに悔やんでも取り返しがつかない。修は続けた。「あいつが俺を殺しても別にいいよ
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第1312話

ノラはゆっくりとドアを開け、中に入ると、持ってきた食事を床に置いた。「お腹が空いたでしょう?簡単なご飯と水、用意しておきましたよ」修は冷ややかにノラを見据える。「へえ、気が利くな。ありがとよ」ノラはにっこりと微笑んだ。「どういたしまして。屠殺人だって豚には親切ですからね、太らせてから食べるほうがいいですし」「桜井くん......」曜は辛そうな顔でノラを見つめる。「全部俺のせいなんだ。もし憎いなら、俺だけにしてくれ。修には関係ない。彼を放してくれないか?」「叔父さん......ああ、違う、藤沢さん?なんて呼ぶべきなんでしょうね」ノラは足を組んで床に座り込む。「どれもピンとこないなあ。お父さんって呼ぶ気にもなれないし、叔父さんなんておこがましい。藤沢さん?それも他人行儀。じゃあ、思い切って『最低男』とでも呼んでおきましょうか」曜はうなだれる。「好きに呼んでいいさ。君が俺を父親だと思わなくても、無理もない。桜井くん、もし俺がこのまま君の手で死んだとしても、君のことは絶対に恨まない。だって君は、俺の本当の息子だから......」「やめてください」ノラは彼の言葉をぴしゃりと遮る。「そういう綺麗事、気持ち悪いのでやめていただけますか」曜は何か言いかけて口を閉じ、ただ深くうつむくしかなかった。その顔には、後悔と恥が入り混じっている。次にノラの視線が修に向く。「君は、こんな男の息子でいることに、嫌悪感とかありません?こいつ、昔から女を裏切り続けてきた。君の母親にとっても、やっぱり『最低男』だったはずですよ」修は淡々と、どこまでも平静な顔つきで答えた。「最低男、ね」その三文字を呟いてから、数秒考え、ふっと口角を上げる。「俺に、そんなこと言える資格があるのか?俺だって『最低男』かもしれない。なあ桜井、お前が思う最低男ってどんな奴だ?女遊びしたら最低男か?それとも、人を殺したり、無関係な人間まで巻き込んだら最低男なのか?お前は、人殺しや放火、世界の破滅すら許せるくせに、男の過ちだけはどうしても許せないってこと?」ノラは片方の口角を上げ、鼻で笑った。「つまり、君は自分も最低男だと認めつつ、僕のことは『最低男以下』だと言いたいんですね?女遊びは悪いけど、殺人や放火はもっと悪い―僕は世界を壊して、他人を傷つけているからって
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第1313話

若子の名前が出た瞬間、修の胸に鋭い痛みが走る。「若子は、今どうしてる?俺も父さんもこうしてここにいる。お前が俺たちをどうしようと構わない。でも、もし本気で彼女を姉だと思ってるなら、絶対に傷つけないでくれ」ノラは無邪気そうに目をぱちぱちさせてみせる。「僕に彼女への接し方を指導してくれるんですか?でもね、君に言われて何かをやるのは嫌いなんですよ。僕、昔から逆らいたくて仕方がない性格なんです。何かしちゃダメって言われると、つい、やりたくなっちゃうんですよね」修は、こんな相手にまともに言葉を重ねるだけ無駄だと悟っていた。若子はまだノラの手の内にある。だから、強く出ることなんてできない。自分が死ぬだけならいい。でも、若子は絶対に死なせたくない。「今、若子はどうしてる?元気なのか?」修はただ若子の安否だけが知りたかった。けれど、自分がここに捕らえられている時点で、ノラが素直に教えてくれるはずがない。ノラはつぶやくように、「お姉さん、すごく辛そうでしたよ。僕と一緒にいたくないみたいで、僕も寂しいんですよね。君なら分かるでしょ?どうしたら彼女が僕と一緒にいたいって思ってくれるんでしょう?」「......お前は他人にやり方を教えられるのが嫌いなんじゃなかったのか?今、この俺にアドバイスを求めてるのか?」「あっ、そうでした。僕、ちょっと抜けてますね。でもこの件は特別です、どうやったらお姉さんが僕を好きになるか、君が知ってたら、ぜひ教えてほしいです」「......俺と若子の今の関係、分かってるだろ。もし本当に方法があるなら、彼女はもうとっくに俺の元に戻ってるさ」修も心のどこかで、本当はその答えが知りたかった。「たしかにね」ノラは髪をくしゃくしゃとかき乱す。「お姉さん、もう戻る気なんてないですよ。昔、君のことを好きだったのも、ずっと一緒にいたから自然と情が湧いただけかもしれませんね。ああ、そういうことか」ノラは何かひらめいたように手を叩いた。「僕とお姉さんも、時間が必要なんですね。どうせ僕たちにはたっぷり時間がありますし。いずれは僕とお姉さんの赤ちゃんもできるんですよ。男の子と女の子、一人ずつ。一人は僕の姓を、もう一人はお姉さんの姓を名乗るんです」「桜井!」修はその言葉に思わず声を荒げる。「彼女を傷つけるな!若子は何も悪くない。あんなにお
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第1314話

修の頭の中は、若子のことばかりでいっぱいだった。ノラの言葉を聞くと、いてもたってもいられなくなる。「桜井、お前が俺をどう痛めつけてもいい。でも、もう若子をこれ以上苦しめるな」ノラは修を見て、にやっと口角を上げる。「本当にお姉さんのこと心配してるんですね。命まで捨てる覚悟ですか。最低な男ではあるけど......完全に救いようがないわけではなさそうですね」顎に手を添えながら、ノラは目を細める。「さて、次は何をしようかな。うーん、悩みますね」修には、ノラをどう表現したらいいのか分からなかった。こいつは歪んでて残酷で、同情なんて一切持ち合わせてない。だけど時々、無垢な子どもみたいな顔を見せる。透き通った目をして、本当の心なんて誰にも見抜けない。とにかく、底知れない怖さがあった。「......ゴホッ、ゴホッ」急にノラが激しく咳き込み始めた。何かを察したのか、ノラはすぐに立ち上がって部屋を飛び出していく。直後、外から激しい咳の音が響いた。壁にもたれ、ノラは手のひらを見る。そこには血がにじんでいた。拳を握りしめ、唇を噛みしめる。「......だめだ、こんなの許せない」背中を壁に預け、ゆっくりとその場に崩れ落ちる。「絶対に、許さない」外でずっと続く咳き込みに、曜は不安げな表情を浮かべる。「桜井くん、大丈夫か?病気なんじゃないか?顔色も良くなかったし、お前はどう思う?」修は、「俺も、ちょっとそんな気がしてた」と答える。しばらくしてノラがまたドアを開けて入ってきた。「このご飯、全部食べてくださいね」「お前、俺たちを縛っててどうやって食べろって言うんだ?」修は手を差し出す。「ロープをほどけよ」「ダメですよ。逃げられたら困りますから。僕、そんなに馬鹿じゃないんです」「なら、食えないな。俺たちここで飢え死にするしかない。そしたらお前も死体相手に復讐するしかなくなるぞ。鞭打ったって俺たちには分からない」「うーん、確かに。僕の復讐心、ちゃんと見抜いてますね」ノラはドア枠にもたれて笑う。「でも、ちゃんと食べてもらいますから」ノラはそのまま部屋を出ていった。しばらくして、修の耳に女性の声が届いた。「ノラ、何するつもりなの?放してよ!」「お姉さん、おとなしくしてくれませんか。今はまだ手を出したくないけど、もし僕を怒
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第1315話

若子がそんなふうに言うのは、ノラが曜をちゃんと治療してくれることを願ってのことだった。まずは生きていなきゃ、ここから出るチャンスすらない。「お姉さん、見てなかったんですか?僕、ちゃんと手当てしてあげましたよ。彼はそう簡単に死にませんって。でも、どうしても不安なら」ノラはポケットから新しい注射器と小さな薬瓶を取り出し、床に投げる。「これを彼の体に打てば、すぐに目を覚ましますよ」若子は床の薬を見つめて、「これ、何の薬?」と尋ねた。「まさか僕が毒でも盛ってると疑ってるんですか?」ノラは苦笑する。「もし死んだら復讐できませんよ?彼こそが諸悪の根源なんですから、そう簡単に死なせたりしませんよ」若子は修に視線を送る。修はうなずいてみせた。「打ってやれ。心配すんな。万が一何かあっても、お前のせいじゃない」若子は床から注射器を拾い、包装を剥がし、針を瓶のゴムキャップに刺して薬液を吸い上げる。注射が終わると、すぐに薬は効き始め、曜がゆっくりと目を開け、顔を上げた。「若子......来てくれたのか。大丈夫か?」「私は大丈夫です」若子は答える。「あなた、体はどうですか?」曜のかすんだ視界も少しずつクリアになっていく。「大丈夫だよ、本当に......ごめん、君たちまで巻き込んで」「今はそんなこと言ってる場合じゃありません。とにかく、しっかり生きていてください」ノラが横から口を挟む。「そうですよ、生きててくれないと困ります。けど、みんなご飯を食べてくれなくて」「手を縛ったままじゃ食べられないでしょ。解いてあげて」ノラは鼻で笑った。「解いたら逃げられるかもしれないでしょ?そんなチャンスあげませんよ。だからお姉さんを呼んだんです。お姉さんがみんなにご飯を食べさせてあげてください」若子は並べられたご飯に目をやり、まず一杯のご飯を手に取って修に食べさせようとした。修は言う。「若子、俺はいいから、まず父さんに食べさせてやれ」若子は修の乾いた唇が心配になり、慌てて水を開ける。「じゃあ、まず水を飲んで」彼女は修に何口か水を飲ませた後、今度は曜にご飯を食べさせる。「お父さん、先にご飯を食べてください」「俺のことは気にしなくていい。修の方を頼む......」「父さん、俺の方が全然元気だ。だから父さんが先に食べろ」「そうです、修
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第1316話

「お姉さん、僕は最初から自分がいい人なんて言ってませんよ。僕を卑怯だろうが恥知らずだろうが、それが僕という人間です。分かってるなら、僕が彼を侮辱するのも当然でしょ?」「......」若子は悔しさで何も言えなくなった。「若子、もういい。こいつに何を言っても無駄だ。侮辱したければさせておけ。そうやって悦に浸ってるのが、こいつの目的だ」修は、若子に食事をさせてもらうことを、少しも恥だとは思わなかった。むしろ、こんな状況でも彼女と近くにいられることが、幸せだった。まさか、まだこんなふうに距離を縮められる日が来るなんて思ってもみなかった。「修......」若子は涙に声を詰まらせ、「......とにかく、ご飯食べましょう」若子は一口一口、修にご飯を食べさせた。修のまなざしはただひたすら優しく、そこには彼女しか映っていなかった。決して、屈辱なんて微塵もない。ノラはその様子を見て、口元を吊り上げて笑う。「藤沢総裁、女にご飯を食べさせてもらうのは美味しいですか?男として情けないですね」「お願い、もうやめて」若子は涙を流しながらノラを睨む。「若子、気にしなくていい。何を言われても構わない。お前がそばにいてくれるだけで十分だ。もっと食べさせてくれ、あの惣菜も頼む」修の穏やかな声に、若子は涙をぬぐいながら、さらに切なさを覚えた。修が本当に気にしていないのか、それとも必死に堪えているのか、彼女には分からなかった。修はご飯一杯といくつかの惣菜を食べ、若子は水も飲ませた。その間、ノラはずっと横で嫌味を言い続けた。こうして侮辱と嘲笑にまみれた食事は、ようやく終わった。ノラは若子を引っ張り出し、部屋から連れ出す。その時、修はとうとう焦燥に駆られた。「お前が俺をどう扱おうが構わない!でも若子だけは絶対に傷つけるな。頼む、俺の願いだ」「さすが藤沢総裁、泣き落としも板についてますね。でもね、頼んで何かが変わるなら、この世界はとっくに平和ですよ。僕は君たちを徹底的に壊したあと、お姉さんと結婚するつもりですから」「ノラ、夢見てんじゃないわよ!私は絶対にあなたと結婚なんてしない!」「そうですか?」ノラは急に腰から銃を抜き、修に向けた。「もう一度言ってみてください、僕と結婚しないって」若子は青ざめて叫ぶ。「ノラ、やめて!」「お
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第1317話

「お姉さん、さっきは僕と結婚してくれるって言ったのに、今は触るなって。嘘つきですね」ノラは悲しそうに若子を見つめる。「どうしてもなら、藤沢修さんを殺そうか?」「ち、違う、違うの」修の名前が出た途端、若子は慌てた。「私と結婚したいんでしょ?だったら、まず結婚しないと、私は結婚前にそんなことしたくないの」「へえ、そうなんですか?じゃあ結婚するには海外まで行かないとですね。こっちだと僕はまだ年齢が足りない。となると、君と同じベッドで寝るの、かなり待たなきゃいけませんよ?」「ノラ、君は本当に私のことが好きなんですか?」若子は静かに尋ねた。「もちろんですよ、お姉さん」「なら、私のことを好きなら、傷つけるべきじゃありません。私、今すごく怖いんです。お願い、今だけはやめてくれませんか?せめて、結婚してからにしてほしい」「じゃあつまり、お姉さんは僕と結婚したら、一緒に寝てもいいってことですよね?」若子は涙を流しながらうなずいた。彼女はノラが暴走して修を殺すのが何より怖かった。ノラはふっと笑みを浮かべる。「お姉さんは、僕がお姉さんを好きなのを利用してるんですね。でも、僕が本当にどうしようもない奴だって分かってるでしょ?僕が本気で何かしようと思ったら、お姉さんには止められないし、何より藤沢修さんの命は僕の手の中です。お姉さんだって、結局は僕の言いなりになるしかないじゃないですか。今さら正論や優しさでごまかして、時間稼ぎしても無駄ですよ。僕をバカにしてます?」若子は涙を拭きながら答えた。「あなたが私に何をしても、私はどうしようもない。それなら、もう好きにしたらいい」「ゴホッ、ゴホッ......!」ノラがまた咳き込む。「お姉さん、驚かせてごめんなさい。今日は何もしませんよ。ここ最近体調が悪くて......ちゃんと元気になったら、そのときこそお姉さんに満足させてあげます。ベッドの上では、藤沢修さんには絶対負けたくありませんからね」ノラはベッドから立ち上がり、机の上の銃を取る。「お姉さん、僕の最初はお姉さんにあげたいんです。だから今、僕にご褒美をくれませんか?」「何をすればいいの?」「こっちに来て、キスしてください」ノラは銃口を若子に向ける。若子は震えながらベッドの上を這って近づいた。ノラはベッドの端で待っている。「お姉さ
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第1318話

若子は二日間、ノラの姿を見ていなかった。ずっと部屋に閉じ込められ、どこにも行けない。目を覚ますたび、机の上に食事が並んでいて、ノラがいつ入ってきたのか分からない。毎回、一日分の食事が置かれ、夜になって若子が眠ると、翌朝には使った食器が片づけられて、新しいご飯が並んでいる。修や曜がどうなったのかも分からず、外の世界と完全に切り離され、ただ無力な日々が続いていた。夜明け前、まだ薄暗い中で、部屋の扉が突然開かれた。びくっとして飛び起きると、ノラが勢いよく入ってきた。「ノラ、修はどうなったの?」若子はすぐに問いかけた。ノラの顔色は、前よりもさらに青白く、不気味なくらいだった。「そんなに彼に会いたいんですね。じゃあ、連れて行きますよ」ノラは銃を抜いて若子に向ける。「ついてきてください」......空がほんのり白み始めたころ、若子は車に押し込まれた。三十分ほど走って、人影ひとつない荒れ地に着いた。少しずつ夜が明け、辺りがうっすらと明るくなってくると、景色がはっきり見えた。ノラに連れられ、ひとつの墓の前に立たされる。墓石には「桜井里枝」と刻まれていた。「これって......」「お姉さん、これが僕の母のお墓ですよ。僕が自分で埋めて、自分で彫ったんです。字が下手くそですけど、まあ、いいでしょう」その時、一台のバンが近づき、ドアが開くと数人の男が降りてきた。彼らは意識を失った修と曜を車から引きずり出し、墓の前に連れてくる。ノラは用意していた現金の束を投げ渡し、男たちは確認してから受け取り、そのまま車に乗って去っていった。修と曜はぐったりとしたまま動かず、若子は必死に呼びかけた。「修!」「彼に近づかないでください。さもないと、彼を殺しますよ」ノラは若子の腕をつかみ、大きな木のそばまで引っ張っていき、手錠で幹につないだ。「お姉さん、ここでおとなしくしててください」「ノラ、何をするつもりなの?」ふと見ると、墓のそばには大きな穴が掘られていた。まさか、この中に修や曜を―ノラは答えず、ポケットから薬瓶を取り出して、それぞれ修と曜の鼻先に近づける。すぐに二人は目を覚ました。「起きましたね。よく眠れましたか?」すでに二人の脚の縄はほどかれていた。修はふらつきながら立ち上がり
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第1319話

「お母さん、見てますか。仇の人たち、みんなここに連れてきましたよ。藤沢家ももう滅茶苦茶です。罪を作った張本人も、今ここで跪いてますよ。これで......お母さんもゆっくり休めますよね」ノラは墓碑をそっと撫でた。「お母さん、こいつらを一緒に連れて行ってもいいですよね?」すぐに、冷たい視線が修と曜に向けられる。「あの穴、見えてますよね?中に入りなさい」「だめ!」若子が叫ぶ。「修、だめ......行かないで!」ノラは手の中のスイッチを高く掲げる。「入りますか?」「若子に手を出すな」修は睨みつける。「俺が入る」すぐに立ち上がり、ためらうことなく墓の脇の大きな穴へと飛び込んだ。「やめて!」若子の絶叫が響く。「ノラ、私を殺して!私を殺してよ!」ノラは若子の叫びを無視し、今度は曜を見据えた。「あなたはどうします?息子の方がずっと勇気ありますよ」曜はもう反論する力もなかった。ただノラを一瞥し、自分から穴の中へと入っていく。「桜井くん、分かってると思うが、俺たちを全員殺しても、君のお母さんは戻ってこない。君も幸せにはなれないぞ」たとえノラが彼の息子であっても、もう一人の息子を手にかけようとする、その姿を曜は許せなかった。死を覚悟したのか、曜はもう何も隠さない。「俺があの世で君のお母さんに会ったら、きっとがっかりしたって言われるぞ。彼女は本当に優しい人だった。そんな人が、自分の息子がこんなにも狂ってしまったなんて知ったら、絶対に安らかに眠れない」バンッ―ノラは容赦なく曜の腕を撃ち抜いた。「うっ......!」曜が激痛にうめく。「桜井!このイカレ野郎!」修が叫ぶ。「どうせ今から君たちを生き埋めにするんですよ。撃ったって構いませんよね。早く殺したほうが、窒息して死ぬより楽でしょう?」曜は激痛で気を失ってしまった。ノラは穴の縁で冷ややかに笑い、「二人とも、母さんのところに行ってください」と言うと、そばのスコップを手に取り、無情にも土を投げ込み始めた。「やめて、やめて、ノラ、お願いだから!」若子は手錠で木に繋がれたまま、必死に暴れて手首を切りつけながら泣き叫ぶ。「お願い、私にできることはなんでもする、頼むから、二人を助けて、何でも言うことを聞くから!」「お姉さん、分かってますよ、辛いのは。でも、大丈夫、いずれ全
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第1320話

修はその事実を、とても静かに受け止めていた。「俺、もう知ってた。暁が俺の子どもだってこと。お前のこと、責めたりしない。俺が悪かった。だからお前が本当のことを言わなかったのも分かる」生きるか死ぬかという状況の前では、今までの複雑な感情なんて、どうでもよくなる。「修......」若子はもう、涙で声も出なくなっていた。「お姉さん、思いっきり泣いたほうがいいですよ。泣けば気持ちも楽になりますから。無理して我慢するのは、体に毒です」ノラはまるで悪魔のように微笑んだ。その時、突然空にヘリコプターの轟音が響いた。ノラは顔を上げ、冷静に呟く。「どうやら、とうとう僕を見つけましたね」何台もの防弾車が勢いよく駆けつけ、あっという間に現場を包囲する。空も地上も、すべての武器がノラに向けられている。「動くな、武器を捨てろ!」若子はヘリや車、そして救助に来た人々を見上げて、ついに助けが来たと悟り、涙ながらに喜びを噛みしめた。大勢の人の中に、西也や成之の顔も見える。人混みの中、千景が銃を構えて最前線に立ち、ノラに照準を合わせていた。「桜井、もう逃げ道はない。武器を捨てろ」千景が静かに警告する。「ふふっ」ノラはスコップをそっと置く。「ここまで来るの、大変でしたよね。随分と手間をかけてくれました」「桜井、腰の銃を地面に置け。全員に見えるところに、早く!」千景が圧をかける。ノラはぐるりと周囲を見回す。武装した大勢の人間に包囲され、一瞬で蜂の巣にされそうな状況でも、まるで動じず、むしろ楽しげに言った。「いやあ、こんなに大勢で迎えてくれるなんて、僕一人じゃ寂しくないですね。黄泉の国もにぎやかでいいかも」西也が苛立ちをあらわにする。「桜井、お前もう終わりだ、まだ強がるのか!」そして彼はすぐに若子に視線を移す。「若子、俺が助けに来たぞ!」「西也、来ないで!」修がいきなり怒鳴る。西也は鼻で笑う。「藤沢、お前に助ける力がないから、俺が行くんだろ」「彼の言う通り、近づかないほうがいいですよ」ノラは静かに警告する。「お姉さんの足元には爆弾が埋まっています。下手に動けば、巻き添えで吹き飛びますよ」西也は足を止め、振り返った。「今、なんて言った?」「ここにはたくさん爆弾が埋まってるんですよ。それも全部タイ
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