「はあ」ノラはうなだれて、少しがっかりした様子で言った。「お姉さん、僕の心を傷つけないでくれませんか。動画がどこにあるか知ってるのは僕だけなのに、僕が怒ったら渡さないですよ。そうしたら、どうやって遠藤さんを始末するつもりです?」「......」若子は怒りで声を震わせる。「じゃあ、どうしたいの?」「ただ、お姉さんとおしゃべりしたいだけです。今はもう遠藤さんは除外されたし、次は冴島さんと藤沢さん、どっちを選びます?」「じゃあ、あなた選べばいい?この変態!」若子は電話をぎゅっと握りしめ、歯を食いしばって言った。ノラは目を丸くして。「お姉さん、そんなふうに言われると嬉しいですね」内心では嘘だと分かっていても。「ノラ、お願いだから動画を渡して」若子が懇願する。「お姉さんは冴島さんのことがすごく好きなんですよね?あの人が死んだ時、絶望して、魂が抜けたみたいになってたんじゃないですか?」若子の手は小刻みに震えていた。ノラは続けた。「ねぇ、そうでしょ?正直に教えて」「そうだったらどうなの?私は冴島さんが好き。それで満足?」ノラの顔に満足そうな色はなく、むしろ少し落ち込んで見えた。「結局、あの人が後から現れて、僕を追い越したんだ。本当にむかつく。死んでくれたらいいのに」若子はすぐに言い返す。「彼は死なない。絶対に元気で生きてる!」「そうですか?」ノラは皮肉げに微笑んだ。「お姉さん、これから何が起こるかわかりませんよ。もしかしたら、次こそ本当に死ぬかも。一人の人生で、何回も死線をくぐれるわけじゃない」「ノラ、あなたみたいな人間、本当に哀れだわ。もし動画を渡す気がないなら、もういい。これが最後、あとはずっと牢屋にいれば?」若子が電話を切ろうとした時、ノラは慌てて口を開く。「住所を教えますよ。そこに行けばスマホがあります。中に動画が入ってます」若子は電話を切る手を一瞬止め、すぐに尋ねた。「どこ?」......若子はノラから住所を手に入れた。修は車の中で若子を待っていた。「若子、どうだった?」「大丈夫」若子は一枚のメモを差し出す。「これ、ノラが教えてくれた住所。スマホがそこにあって、中に動画があるらしい。探しに行こう」若子がどこか上の空なのに
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