Semua Bab 夫の元カノが帰国!妊娠隠して離婚を決意した私: Bab 1371 - Bab 1380

1467 Bab

第1371話

若子はうつむいたまま、とても悲しそうな顔をしていた。その不安な気持ちに気づいた千景は、そっと彼女の肩を抱き寄せる。「暁に会いたいか?本当に我慢できなかったら、俺が連れて行ってあげるよ」若子は首を振る。「ううん。会いたいけど、今はもう寝てるし、今行ったら起こしちゃうでしょ。修の家にいるなら、ちゃんと世話してもらえるってわかってる。ただ、ただね―」「どうしたの?」若子は涙をためた目で彼を見上げる。「なんだか、私がいなくても、暁は平気なんじゃないかって思っちゃって......ちゃんとご飯も食べて、よく眠って、私がいなくても大丈夫そうで。そんな風に考える私、ひどい母親かな。できれば、私がいなくなっても子どもが泣かない方がいいって思ってたのに、本当に泣かないと、今度はなんだか寂しいの」千景は彼女の背中を優しく撫でて慰める。「若子、それは普通のことだよ。母親が子どもを愛するのは当たり前なんだから。こういうのは、みんなが通る道だよ。すぐ慣れるから、大丈夫」「本当に......?私、子どもがそばにいなくても平気になれるのかな?」「子どもはちゃんとそこにいるし、またすぐ会えるよ。三ヶ月したらまた一緒に暮らせるし、今だけ我慢すればいい。完全に失ったわけじゃないから」「若子、これが君の選んだ道だろ?最初は辛いけど、俺がちゃんとそばにいる。だから乗り越えよう」若子は小さくうなずいて、「ありがとう、本当にありがとう」と何度もお礼を言った。千景は彼女の涙をそっと拭い、「もう、泣かないでくれる?若子」その言葉に、若子はちょっと恥ずかしそうに「うん」と小さな声で答える。「もう泣かない。寝よう?」二人は布団に入って、お互いに向かい合った。千景はもう一度、若子の涙を指で拭ってやる。二人は静かに見つめ合ったまま、しばらく沈黙が続く。千景は、若子がまだ子どものことを気にしているのがわかるから、無理に先を急ごうとはしなかった。ただ、こうして寄り添い続ける。「冴島さん......」若子は彼の顔にそっと手を伸ばし、「ねえ、続き......したいなら、私は大丈夫だから。拒まないよ」千景は彼女の手をそっと握り、手のひらにキスをした。「俺は、君が本当にリラックスして、幸せなときに......そのときにもらいたい。今はまだ悲
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第1372話

また数日が過ぎた。その間、若子の気持ちもだいぶ落ち着いてきて、少しずつ子どもと離れて暮らすことに慣れ始めていた。夜になると、やっぱりビデオ通話で暁の顔を見たくなるけど、最近は毎日じゃなくて、少しずつ二日に一度、三日に一度―そんなふうに自分を慣らしていこうと決めていた。週末の土曜日、若子は朝早く目を覚ました。千景はまだ熟睡中。彼を起こさないようにそっと起き出して、身支度を済ませる。若子が静かに動いているおかげで、千景も心から安心できるらしく、彼女がベッドを離れても気づかずに寝ていた。でも、服を着るときにちょっとした物音を立ててしまい、千景が目を覚ます。「若子、今日は仕事休みだろ?そんなに早く起きてどうしたの?こっちに戻ってもうちょっと寝なよ」「今日は暁に会いに行こうと思って」千景は寝ぼけまなこで起き上がる。「今から行くの?」「うん、もうそんなに早くないし、会いに行きたいから」暁に会うとなると、若子は本当に嬉しそうだ。そんな彼女を見て、千景も理解しているけど、ほんの少しだけ寂しさも感じる。「一人で行く?」どうして一緒に来てって言ってくれないんだろう、そんな気持ちもちらりと胸をよぎる。若子はベッドのそばに座り、「あなたがまだ寝てたから、もうちょっと休ませてあげたくて。一緒に行く?」と優しく声をかける。千景は彼女の手を握り、「いや、俺は行かない方がいいと思う。今日は君がゆっくり子どもと過ごしたほうがいい。もし藤沢も家にいたら、いろいろ話す時間もできるし」自分が一緒に行っても、今の三人だとなんとなく居心地が悪い。若子と二人きりなら問題ない。でも、子どもと修が加わると、どうしても空気が変わってしまうからだ。若子は彼の顔をそっと撫でて、ほっぺにキスを落とす。「ありがとう。じゃあ、私一人で行ってくるね。できるだけ早く帰るから」千景は静かにうなずき、「大丈夫。ちゃんと家で待ってるよ」若子は準備を整えて家を出る。千景はそのままベッドに寝転び、ぼんやりと天井を見つめた。本当に自分たちは、夫婦としてこの先ずっとやっていけるのだろうか―ふと、そんな考えがよぎる。......若子が家に着いたのは朝早い時間だった。修は朝ごはんを食べながら、子どもを腕に抱いてミルクをあげていた。「暁」
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第1373話

若子と修は、二人きりでリビングのソファに座っていた。暁は執事が連れていってくれたので、二人だけで静かに話す時間ができた。けれど、向かい合ってもすぐには言葉が出てこない。しばらくの間、重たい沈黙が流れる。最初に口を開いたのは若子だった。「修、暁のこと、本当に良くしてくれてありがとう」修はソファにもたれ、淡々とした声で返す。「お礼なんていらないよ。俺はただ、父親として当然の責任を果たしてるだけだから」「修、このところ忙しくしてたの?」「特に何も。ただ、仕事のことくらい」「無理しすぎないでね。体も大事にして」「うん......」と修は短く返事をした後、少し間を置いて、「で、お前と冴島は―」「私たち、うまくやってるから心配しないで」「彼、お前に何かしたりしてない?」「してないよ。もし何かあったら、絶対に修に言うから」若子が笑ってそう言うと、修も少し安心した顔を見せた。「本当に、もし何かあったら、すぐ教えて。俺がすぐにでも飛んでいくから」「うん、大丈夫」若子は静かにうなずき、「ねえ、修。たとえ私たちがもう一緒にいなくても、こうして二人で子どもを育てて、責任を分け合える。それに、こうして普通に会って話せるって、とても幸せなことだよね」世の中の多くの夫婦は、離婚したら敵みたいに一切関わらなくなる。でも自分たちは、きっとまだ恵まれている方なのだと思う。これまでのたくさんの思い出があるから、もう愛がなくても、家族としての情までは消えなかった。「若子、俺......」修は何かを言いかけたけれど、声がかすれて出てこない。結局、弱々しく笑って、「お前の言う通りだよ。お前に会えるだけで十分だって、分かってる。せめてお前が俺に子どもを残してくれただけでも、感謝しなきゃいけないんだな」「修、きっといつか、あなたにも素敵な女性が現れるよ」「その話はやめてくれ」修は感情を抑えきれず、声を荒げてしまった。「未来の恋人とか、そういう話、俺には絶対しないでほしい。頼むから......」本当に好きな人は、今目の前にいる。でもその人は、もう自分のものじゃない―他の男と一緒になった。夜眠れないとき、彼女が千景と何をしているのか考えると、胸が痛くてたまらなかった。この感情がいつまで続くのか分からない
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第1374話

千景は、一日中家で若子の帰りを待っていた。外にも出ず、ただじっとソファに座りながら、もし若子が戻ってきて自分がいなかったら―そんなことを考えて、不安でたまらなかった。何度も彼女に電話をかけようと思ったけれど、結局我慢した。今はきっと子どもと過ごしているはず、そんな時間を邪魔したくなかった。もし自分が電話をかけたら、若子は無理に帰ろうとするかもしれない。それは彼女にも自分にも良くないと分かっていた。でも、我慢すればするほど、寂しさも募る。千景は、ぼんやりとテレビを見つめていた。画面はコメディのシーンで賑やかなのに、まったく笑う気になれなかった。夕食の時間を過ぎても、若子は帰ってこなかった。今日は一緒にご飯を食べないんだ―そう思いながら、ひとりで簡単に麺を作って食べる。食事が終わると、テレビを消してソファに横になり、ただ玄関の扉を見つめていた。まるで、夫を待ち続ける寂しがり屋の妻のような気分だった。―若子はどうして帰ってこないんだろう?子どもと一緒にいたいから?それとも藤沢とまた心が通じ合ってしまったのか......?考えれば考えるほど、想像はどんどん膨らんでしまう。ダメだ、信じなくちゃいけない―そう自分に言い聞かせた。どれだけ時間が経っただろう。玄関の鍵がカチャリと開く音がした。千景は飛び起きて、慌ててテレビをつけ、何事もないふりをした。若子が靴を脱いでスリッパに履き替え、リビングに入ってくる。もう八時を過ぎていた。「若子、帰ってきたんだね」千景はリモコンを置いて、ちょっとぎこちない笑顔を浮かべた。若子は彼の隣に座る。「ご飯、食べた?」千景はうなずく。「食べたよ」「何を食べたの?」「適当に麺をゆでただけ」「ちゃんとしたもの食べないと。出前でも取ろうか?」「もう大丈夫、十分食べたから」千景は若子をそっと抱きしめる。「今日は一日中、藤沢の家にいた?」彼の落ち着いた様子に、若子は千景が本当に平気なのか、それとも無理に気持ちを抑えているのか分からなかった。「ごめんね、今日は子どもと過ごしていたら、つい時間を忘れちゃって......連絡もせずに本当にごめん」「大丈夫だ」千景は微笑み、「連絡なくても、子どもが一番なのはわかってる。俺より大切なのも、当然だ
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第1375話

千景は目を閉じていた。そのとき、不意に頬にくすぐったいような、ピリピリとした感覚が走った。目を開けると―若子が彼にキスをしていた。次の瞬間、二人の上にかかっていた布団がはね飛ばされ、若子は勢いよく千景の上に覆いかぶさった。千景の息はだんだん荒くなる。若子は体を起こして自分のパジャマを脱ぎ捨てた。「冴島さん、もう大丈夫。私、準備できたから」そう言って、彼の唇、頬、首筋にキスを落とし、小さな手で彼のパジャマをはだけていく。千景の呼吸が熱を帯び、ついには彼女の腰を抱き寄せて、今度は自分が上に。両手で優しく彼女の顔を包む。「本当に?もう俺のものになってくれる?」若子は小さくうなずいて、「うん、あなたが欲しい」と答える。千景は嬉しさを隠しきれず、彼女の唇を深く奪う。二人の間には、もう止められない熱い想いが溢れ出していた。愛し合う気持ちは抑えきれず、二人は何度も互いを求め合った。熱が高まる中で、千景はそっと彼女の耳元で囁いた。「若子、愛してる」その言葉に、若子の目から自然と涙がこぼれる。彼女は彼を強く抱きしめ、耳元で「冴島さん、私も愛してる」と答えた。夜は、まだ始まったばかり―......翌朝。暖かな朝日が窓から差し込み、ベッドの上で眠る若子の顔を優しく照らしていた。若子は幸せそうな寝顔で、小さく寝言をつぶやきながら、まだ夢の中。千景はベッドの端にもたれて、腕の中の彼女をじっと見つめている。その瞳は限りなく優しく、そっと彼女の額にキスを落とす。目を覚まさせてしまわないように、できるだけそっと、優しく。やっと本当にお互いのものになれた―昨夜の彼女の恥じらいや甘さを思い出すと、胸が熱くなって、また抱きしめたくなる。でも、この幸せを壊したくなくて、ただそっと見つめていた。千景の熱い吐息で、若子は少しずつ目を覚ます。ゆっくりとまぶたを開け、彼の視線とぶつかった。昨夜のことを思い出し、若子は顔が一気に赤くなる。「いつから起きてたの?」「そんなに長くないよ。もう少し寝ててもいいんだよ?」若子はコクリとうなずき、そのまま彼の胸にすっぽりと身を預ける。千景の胸を枕にして、満ち足りた気持ちで微笑む。昨夜の甘い余韻が、二人の間にとろけていた。今、世界一
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第1376話

好きな人と一緒にいる時間は、いつだって甘くて幸せだ。若子と千景は、ここ最近ずっとラブラブな日々を過ごしていた。仕事の時間以外は、ほとんど一緒にいて、ご飯も寝るのもお出かけも、手をつないで公園を歩くのも、全部二人一緒。千景はその面でもかなり積極的で、正直若子はたまに体力が持たないなと思う時もあったけれど、彼が子犬みたいな顔で「ねえ、もう一回だけ」と甘えてくると、つい断れなくなる。でも、彼はいつも若子の気持ちを優先してくれて、毎回本当に大事にしてくれるから、疲れることがあっても、幸せの方がずっと大きかった。愛されてる実感、こんなに毎日感じられることなんて、今までなかった。若子にとって、これまでで一番幸せな日々だった。この幸せが一生続けばいいのに、と本気で思う。深夜。千景は、満足したように若子を腕の中に抱きしめていた。若子は息を切らし、頬が真っ赤になって、汗で髪が額に張り付いている。「大丈夫?きつくない?」千景が額の汗をそっと拭う。「ほんと、あなたって狼みたい」冗談めかして言うと、彼はすぐに笑って、「君の前では何度だって狼になるよ」と答えた。若子は彼の肩に顔を埋めて、「ねえ冴島さん、もうすぐだね。結婚のいい日が、もう目の前だよ」「うん」千景の書類もすべて整い、あとはいよいよ結婚を待つだけ。「冴島さん......結婚した後、もし何年も経っても、私のこと嫌いにならない?」彼は眉をひそめて、「どうしてそんなこと聞くの?」「だってさ、世の中には結婚して不幸になったって人が多いでしょ。みんな『結婚なんて人を変えるだけ』『そのうち奥さんのこと嫌になる』とか......冴島さんはそうならない?」「俺がそういう男に見える?」「違う、冴島さんは絶対に違うってわかってる。でも、やっぱり不安なの。結婚でつらい思いをした人の話を聞くと、どうしても......結婚したい気持ちはあるけど、やっぱり少し怖い」「若子、バカだな。結婚で苦しむのは、『結婚』が悪いんじゃない。人がダメなだけさ。結婚は形だけど、中身は人間同士の関係だろ?二人で不満ばかり言い合っていれば、どんな関係も不幸になる。幸せを壊すのは結婚そのものじゃなくて、結局は『人』なんだよ。だから、結婚を悪く言う人は、みんな自分を
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第1377話

さらに数日が経ち、いよいよ若子と千景は結婚式の準備を始めていた。この頃の若子は、毎日が信じられないほど幸せで、千景と一緒に過ごす一日一日が特別に感じられた。過去の辛い出来事もすっかり忘れ、今はただ彼と一緒にいる今だけを大切にしていた。この日、二人はウエディングドレスショップへやってきた。若子は千景の腕にしっかりと手を絡め、並んだ婚纱を見ては目を輝かせている。「冴島さん、このドレスたち、本当に全部素敵......私が着たらどんな感じになるんだろう?」千景は彼女の肩をそっと抱いて、「気になるなら、全部試してみればいいよ。どれが一番似合うか一緒に選ぼう」と優しく微笑んだ。「じゃあ、あなたが選んでくれる?」「もちろん」千景は店内を見て回り、真っ白なビスチェドレスを一着選んで若子に差し出した。「これなんてどう?きっと君に似合うと思う」「お客様、素晴らしいセンスです!このドレスは特にこのお嬢さんにピッタリですよ」と店員もニコニコと褒めてくれた。若子は嬉しそうにドレスを抱え、「じゃあ、ちょっと試してくるね」と試着室へ。店員が手伝いながら、丁寧にドレスを着せてくれる。しばらくして、カーテンが開いた。「わあ、本当に美しい......!お客様、すぐ見てください!あなたのフィアンセ、とっても素敵です!」店員の声は少し大げさに聞こえるけど、その目は本当に感動していた。若子はちょっぴり緊張しながら裾を持ってそろそろと歩き出した。千景は、目の前の若子を見た瞬間、まるで時が止まったようにじっと彼女だけを見つめていた。若子はもともと綺麗だったけど、純白のドレスに包まれた今は、まるでおとぎ話のお姫様みたい。光沢のある布地が水のように流れ、全身をふわりと包み込む。ドレスには繊細なビジューがきらめき、まるで夜空の星みたいに美しい。雪のように白い肌とドレスの純白、肩に流れる長い髪は夜のリボンのよう。その瞳には幸せと期待の輝きが宿っている。千景は、彼女の美しさに完全に心を奪われてしまった。鼓動が早くなり、世界中に若子しか見えない気分だった。男としての本能が、今すぐ彼女を抱きしめたくて仕方なかったけれど、ぐっと堪えて前に歩み寄る。そっと彼女の顎をすくい上げ、優しく唇にキスを落とした。突然の大胆な愛情表現
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第1378話

でも、こんな口喧嘩は本気の喧嘩じゃなくて、愛情たっぷりのじゃれ合い。若子はちょっと目を吊り上げて、「じゃあね、もし本当に浮気したら、私だって若いイケメンとデートしてやるから!そのまま目の前でイチャイチャして、冴島さんをイライラさせてやる!」と笑いながら言った。その言葉を聞くだけで千景はもう耐えられなくて、すぐに彼女の肩をぎゅっと抱きしめる。「そんなの絶対許さない。もしそんな男が現れたら、俺がぶっ飛ばすからな」「じゃあ、あなたも浮気はなしよ?なんであなたはよくて、私はダメなの?ずるい!」「ごめんごめん、俺が悪かった。俺も浮気しないし、君も絶対しちゃダメだよ」千景はそう言って、若子を思いきり自分の腕の中に引き寄せた。二人とも冗談だとわかってるけど、やっぱり千景は本気で不安になる。若子もそれに気づいて、そっと彼を押し返した。「大丈夫だよ、冗談だってば。お互いに絶対そんなことしないよね」「うん、しない」そう言いながら、千景はちょっと真剣な顔になって、「じゃあ、指切りしよう。君は浮気禁止、俺も浮気禁止」大の大人なのに、まるで子どものように小指を差し出してくる姿に、若子はくすくすと笑いながらも、小指を重ねた。「指切りげんまん、嘘ついたら一生許さないからね!」そばで見ていた店員まで、思わずニコニコ顔になってしまうほどの仲の良さ。こんなにラブラブなカップルは、なかなかいない―でも当の二人は、それにまったく気づかず、心から楽しい気持ちでいっぱいだった。恋に落ちると、みんな子どもみたいになる。「そろそろ真面目に選ばなきゃ。こんなにイチャイチャしてる場合じゃないし......なんかちょっと恥ずかしくなってきた」若子は顔を真っ赤にして小さく呟く。「うん、真面目に選ぶよ。でも、悪いことは帰ってからね?」千景はふざけながらそう囁く。二人はようやくお互いを離し、婚纱選びに集中することに。「お客様、このドレスでご満足いただけましたか?」店員が優しく声をかけてくれる。若子はうなずきながらも、「うん、すごく気に入ったけど、もう少しだけ他のも試してみたいです」「もちろん、いくらでもご試着ください!」それから若子はさらにいくつかのドレスを試してみた。どれもこれも本当に素敵で、選ぶのに苦労する。
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第1379話

「よし、俺が決めるよ」千景は三着並んだドレスの前に立つと、最後に若子が選んだ三着目を手に取った。最初に千景が若子に選んだドレスではなく、若子が自分で選んだ一着。順番で言えば最後に試着したものだった。そのドレスを彼女の前に差し出し、「これが一番いいと思うよ」と微笑んだ。若子は少し不思議そうな顔をして、もう一度一着目を見つめる。「どうして最初に選んでくれたドレスじゃないの?」千景は優しく笑って答える。「もし本当に最初のが気に入ってたら、他のドレスで迷わないはずだよ。二着目が一番だったら三着目まで着なかっただろうし。結局、最後まで悩むってことは、この三着目が本当は一番好きなんだよ」「冴島さん......」言葉にならない幸せがこみ上げてきた。この人がいてくれて、本当に良かった。若子はドレスを抱きしめて、「じゃあ、このドレスにしよう。次は、あなたのスーツを選びに行こうね」とにっこり微笑む。このドレスは、彼女が心から好きだと思えるもの。新婦になる日を想像すると、胸が高鳴って仕方なかった。千景は、うっとりしている若子を見つめながら店員に声をかけた。「このドレスでお願いします」そう言って、さらりとブラックカードを差し出す。......ドレス選びが終わると、二人は手をつないだまま、高級なメンズスーツ店へ移動した。千景は、どんなスーツも見事に着こなしてしまう。店員も「本当に素敵です、モデルさんみたいです」と感心するばかり。若子はソファに座り、スーツ姿の千景をうっとり見つめていた。―こんなにカッコよかったら、他の女の人が放っておかないかも......ちょっとだけそんなことを思いながらも、やっぱり自慢の人だった。いくつかの色やデザインのスーツを試着し終えたあと、「若子、このスーツどうかな?」と千景が声をかけてくる。若子はうっとりと頷いた。「すごく似合ってる。どれを着てもカッコいいよ」正直、千景はスーツを着ていなくてもカッコいいけど、そのスタイルは本当にずるい。「じゃあ、これにしようか」と千景が言うと、店員が今まで試着したスーツをいくつか持ってきた。「若子、選んでほしい。君のセンスを信じてるから」若子は立ち上がって、千景の手をぎゅっと握る。「この黒いスーツが一番好き。クラシックで飽きな
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第1380話

家に戻ると、二人はそのままソファに並んで腰を下ろした。若子は千景の胸元にもたれかかる。「あと少しで、私たち結婚するんだよ」顔を上げて、千景の顎から見上げる。「少しは緊張してる?」千景はこくりと頷いた。「ちょっとだけ。君は?」「私もちょっと緊張してる。いや、ちょっとどころじゃなくて、かなり」腕を伸ばして千景の首に絡める。「ねぇ、私たち結婚したら絶対ケンカするよね?」夫婦として一緒に生きていくのに、ケンカしないなんて無理だ。ロボットじゃあるまいし。若子がまだ気にしているのを見て、千景は優しく頭を撫でた。「若子、一つ聞きたいことがある」「なに?」「前の結婚のとき、藤沢とケンカしたことはあった?」若子は眉をひそめる。「どうしてそんなこと聞くの?」「だって、君がすごく心配してるみたいだから、ちゃんと話しておきたいと思って」せっかく不安があるなら、結婚前にきちんと話し合っておいた方がいい。問題を持ち越すのはよくない。千景は若子の手をしっかり握る。「教えてくれない?藤沢との結婚生活で、ケンカや言い争いはあった?不幸だと思ったことは?」「私と修の関係は少し特別だったの」若子は静かに話し始める。「私は子どもの頃から藤沢家で暮らしていて、おばあさんが私を育ててくれた。修とは幼なじみで、ずっと好きだったし、ずっと片想いしていた。結婚したときも、自分だけが一方的に好きなんだと思ってた」「じゃあ、結婚してからは幸せだったんだね?」若子はうなずいた。「うん、彼に離婚を切り出されるまでは、ずっと幸せだった。彼は優しかったし、責任感もあったし、私たちケンカもしたことなかった。たぶん、結婚期間が短かったからかな。全部で一年ちょっとくらい」「一度もケンカしなかった?」千景が聞く。「離婚の話が出てからは、関係が変わった。そこからはいろいろ揉めたよ。全部、ほかの女性のこととか、いろんなゴタゴタが原因だったけど、もとをたどれば彼が離婚を切り出したからだと思う」「ほら、問題の根っこはそこにある」千景は言う。「彼とケンカしたのも、何かが起きたからでしょ。彼が他の人のために離婚を切り出したから、君は辛かった。けど、それまでは何もなかった。もし離婚がなければ、今も仲良しだったはずだよ」「じゃあ、何が言いたいの?」若子は聞き返す。千景
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