西也は笑っているはずなのに、その瞳は異様なほど冷たく、恐ろしい光を帯びていた。「今、藤沢が何してるか知ってる?」そう言いながら、彼は若子の身体を覆っていたシーツをめくり、膝で両脇をがっちりと押さえ込んだ。「修......?」名前を聞いた瞬間、若子の目は大きく見開かれた。「何をするつもり?」「何をするかって?怖くなったのか?」「西也......私はもう修のことは諦めてる。私が愛してるのは千景なのに、それをあなたが奪った。まさか今さら修にまで手を出すつもり?この世の男を全部殺さないと気が済まないの?」西也が狂って修まで殺してしまうんじゃないか―若子はそれを本気で怖れていた。修には警戒心があっても、こんな狂気に狙われたら、いつどうなるか分からない。一方が表、一方が裏―いつどこで襲われるか、全く予想できないのだ。「じゃあ、お前の息子は?お前はあの子のこと、もう愛してないのか?」「西也!」若子はほとんど叫ぶように言った。「絶対に暁には手を出さないで!」「それだ、それが聞きたかったんだよ、ははは......」西也は笑いながら言う。「てっきり、千景が死んだらお前の心も一緒に死んだのかと思った。でも、お前にはまだ息子がいるってこと、忘れてなかったんだな」「西也、あんたなんて悪魔だ!人間の心がない!必ず報いを受けるわ!」「報い、ねえ......」西也は力なく笑い、「若子、そんなに世の中甘くないぞ?本当に因果応報があるなら、悪人なんて最初からいなくなる。もし罰が下るなら、その時は俺も道連れを増やしてやる。どうせ死ぬなら、一緒に何人か連れていった方がマシだろ?お前もそう思うだろ?」涙が枕を濡らす中、若子は嗚咽しながら言った。「暁の名前、つけてくれたのはあんただったよね?どうしてその子を傷つけられるの?」思い出が胸をよぎり、西也の目が一瞬だけ揺れる。幼い頃の暁の笑顔、腕の中で無垢に笑うあの子―あの純粋な瞳を思い出していた。彼は本当に、心を込めて暁を世話してきた。守りたかったし、大切にもした。でも、結局は修の息子―最終的に奪われてしまい、自分は他人のために全てを費やしただけだった。「若子、もうやめろ!俺は暁を実の息子だと思ってた。お前たちのためにどれだけのことをしてきたと思ってる?お前が出産の
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