隼人の突然のキスに、瑠璃は一瞬ぼんやりとしてしまった。彼は愛していると言った。かつて憎んでいた元妻と瓜二つの女を、愛していると――。なんて滑稽な話だろう。あなたを宝物のように思い、唯一無二の存在として見ていたとき、あなたは一度たりとも私を正面から見ようとしなかった。心が石のように冷え、あなたに対して憎しみしか抱けなくなった今になって、あなたは「愛している」と言うの?隼人、すべてが遅すぎたのよ。たとえ今の私に本気で心を寄せていたとしても、あなたに無残に傷つけられたこの心を癒すことなんて、もうできない。瑠璃は体調が悪いふりをして、隼人のキスを避けた。けれども、彼のこの瞬間のプロポーズには、当然「喜んで」応じた。青く広がる海を前にして、瑠璃の心は潮のように揺れ動き、幾重にも重なる憎しみのさざ波が広がっていた。隼人、あなたが私に負わせたもの――ついに返してもらう時が来たのよ。瑠璃の顔に咲いた明るく美しい笑顔を見つめながら、隼人はじっと彼女を見つめていた。胸の奥にはじんわりとした痛みが広がり、彼の瞳は次第に陰りを帯びていった。もしあの頃、ほんの少しでも冷静でいられたなら、大切な女を時の流砂の中に失うこともなかったのに。瑠璃。もう一度やり直せるなら、お前はもう二度と俺を愛そうとは思わなかっただろうね、そうだろう?……翌日、予定通りに結婚式が執り行われた。目黒グループ所有の最高級ホテルで、瑠璃は八桁の価格がつくウェディングドレスに身を包み、ダイヤモンドがあしらわれたティアラをかぶり、ブーケを手にして、祝福と羨望の視線を一身に浴びながら、スーツ姿の優雅で華やかな男に向かって歩いていった。シャンデリアの光が交差し、幻想的な光を放ちながら、塵ひとつない女王のような彼女を取り囲み、まるで勝利のステージへと一歩一歩導いているかのようだった。隼人は彼女が目の前に歩み寄ってくる姿を見つめ、その優雅で気高い仕草に、自然と六年前の結婚式を思い出していた。彼の心臓は一瞬で早鐘のように高鳴り、瞳も春風のように柔らかくなっていった。昼食の時間、ちょうど刑務所の食堂でも食事の時間となっていた。蛍がトレーを手に座ろうとしたそのとき、前方のテレビ画面で瑠璃と隼人の結婚式が生中継されているのが目に入った。その瞬間、蛍の目
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