その言葉を聞いた瞬間、瑠璃の眉がきゅっと寄った。彼女は扉を開けようとしたが、そっと差し出された手に手首を優しく握られた。振り返ると、瞬が温かな笑みを浮かべていた。「手続き、もう終わったよ。行こうか」そう言って、彼は彼女の手を引いて歩き出そうとした。しかし瑠璃は立ち止まり、彼の手を引き止めた。「瞬、中で女の人があのお年寄りを虐めてたの」「……他人の家庭の問題に、首を突っ込むのはやめよう」瞬は少し困ったように眉をひそめ、穏やかに語りかけた。「事情も分からないし……俺たちはもう行こう」瑠璃はもう一度病室の中を見やった。あの女の醜い顔つきと、車椅子に座る年老いた背中。その光景が、なぜか胸の奥にざわりと引っかかった。一方、青葉は瑠璃を追いかけ、ついにエレベーターまでたどり着いたが、扉はちょうど閉まるところだった。「ちっ……」不満げに舌打ちをしたその時、隣のエレベーターが開いた。そこから現れたのは、警察署から戻ったばかりの隼人だった。冷ややかな表情と張り詰めた空気を纏い、彼の一歩ごとに鋭い緊張感が走った。青葉は慌てて駆け寄った。「隼人、朝からどこに行ってたのよ?さっき瞬が瑠璃を連れて出て行ったのよ、私、やっぱり言ったとおり——」だが、言い終える前に、隼人の目に宿る怒りが彼女を射抜いた。隼人は一瞥すると、そのまま踵を返そうとした。「待ってよ、隼人!あの女のこともうほっといて、じいさんがもうすぐ退院するのに、あなたがいなきゃどうするのよ?」青葉は声を上げ、情に訴える口調で続けた。「隼人、じいさんは今や言葉も話せず、歩くこともできない……可哀想だと思わないの?昔からあなたのことを一番大切にしてたのに、女のために見捨てるつもり?あなたはこの件に瑠璃は関係ないって言い張ってるけど、人証も物証も彼女を指してるのよ!毒を盛ったのは、どう考えても彼女よ!」隼人の瞳が鋭く光り、冷ややかに言い放った。「昔、蛍が千璃ちゃんを陥れた時だって、証拠は揃っていた。結果はどうだった?全部、蛍が仕組んだ罠だったじゃないか」「そ、それは……」青葉は口ごもり、不服そうに唇を尖らせた。「でも自業自得でしょ?そんなことされる方も悪いのよ。他の人が狙われないのはなぜ?」被害者を責めるその言い草に、隼人の視
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