その言葉を聞いた瑠璃と隼人は、バーテンダーの指差した方向へと一斉に視線を向けた。そこには、酒を飲みながらゲームに興じる男たちの輪の中に、どこか見覚えのある女の背中があった。だが、バーの中は複雑に交差する照明が目を眩ませ、顔までははっきり見えなかった。そのとき、その女はスマートフォンに視線を落とし、何かを確認したように立ち上がり、そのまま酒場の外へと歩き去った。瑠璃と隼人はすぐさまその背中を追って、バーの入口まで駆けつけた。だがそのとき——ひとりの酔っ払った男が、瑠璃の前に立ち塞がった。「ヘイ。しばらく見なかったけど、ますます綺麗になったな。今夜は暇なんだ、一緒にホテルでハッピータイムでもどう?」瑠璃は、この男が自分を明日香と勘違いしているのだとすぐに察した。何か言おうとした瞬間、隼人が彼女の手を取り、不機嫌そうにその男に冷たい視線を向けた。「人違いだ」「人違いだって?ベイビー、忘れたのか?あの夜はすごく楽しかっただろ……」「——ガッ!」「うわっ!」隼人は、それ以上瑠璃に下品な言葉を浴びせる男を許さなかった。拳を振り上げ、その顔面に一発叩き込む。男は悲鳴を上げて顔を押さえ、しゃがみ込んだ。「千璃ちゃん、行こう」隼人は彼女の手を引き、すぐさまその場を離れた。だが数歩進んだところで、背後から罵声が響いてきた。瑠璃と隼人は無視してそのまま街角へと進み、明日香を追おうとしたが、背後から急に複数の足音が近づいてくるのを感じ、振り返った。さきほど隼人に殴られた男が、仲間を数人引き連れ、武器らしきものを手にして追いかけてきていた。「千璃ちゃん、先にホテルへ戻れ。俺がこいつらを引きつける」隼人は彼女の手を離したが——次の瞬間、瑠璃が自ら彼の手を取り、しっかりと握り締めた。「ここには何でもありなの。殺されてもおかしくないわ。危険すぎる……今は逃げましょう」後ろの男たちの声が近づいてくる。隼人はその言葉にうなずき、彼女の手を強く握り返して、街角に向かって走り出した。「逃がすな!」「そいつを捕まえてボコボコにしてやれ!」「女は俺がいただく!」背後から怒鳴り声が響き渡る。ふたりはしばらく全速力で走ったが、前方にも新たにこちらを狙う男たちの姿が見えた。瑠璃は左右を見渡し、咄嗟に隼人を引っ
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