「隼人」瑠璃は嬉しそうに顔をほころばせた。「赤ちゃんを見に来てくれたの?」隼人はその穏やかな笑みを浮かべる瑠璃を一瞥すると、無表情のままガラス窓の前まで歩み寄り、保育器の中で眠る新生児たちに目を向けた。そして薄く唇を開いた。「どれが、お前の子だ?」その声には、感情のかけらもなかった。それでも瑠璃は微笑んで答えた。「一番奥の列の、二番目。いちばん小さな子よ」彼女の瞳には喜びが溢れ、細い指で眠る小さな赤ちゃんを指差した。「男の子なの。きっと将来は、あなたに似ると思う」「お前の子が、俺に似るわけないだろ」突然の言葉が、冷たい水のように瑠璃の胸を直撃した。彼女は驚いたように、氷のように冷たい隼人を見つめた。「隼人?」「まだ夢を見ているのか?お前の夫はとっくに死んだ」無慈悲な言葉は鋭利な刃のように、瑠璃の心を容赦なく突き刺した。その言葉を受けて、彼女はゆっくりと拳を握り、気持ちを必死に落ち着けると、かすかに笑った。「で、佐々木さんが今ここにいるのは何のため?まさか、私の息子を見に来たってわけじゃないでしょ?」隼人は小さく笑った。「お前の子供なんか、どうでもいい。ただ、目標を確認しに来ただけだ」「……何んだって?」ようやく落ち着きを取り戻しつつあった瑠璃の顔色が再び曇る。「どういうこと?」隼人は何も答えず、意味深な笑みを浮かべたまま赤ちゃん室の扉へと歩いていった。万能キーを使って鍵を開けると、彼は迷いなく瑠璃が先ほど指差した赤ちゃんのもとへ向かった。「隼人!?何をするつもりなの!?」瑠璃は慌てて中へ駆け込み、彼が保育器を開けて赤ちゃんを抱き上げようとするのを見て、全力で引き離した。そして眠る赤ん坊をしっかりと抱きしめ、体で守った。彼女の強い拒絶に、隼人は手を差し出した。「渡せ」瑠璃の目は、鋭く強い意志に満ちていた。「隼人、あなたは私のことを忘れてもいい。でも、今自分が何をしているか、少しは胸に手を当てて考えてみて」「俺の行動を、お前にどうこう言われる筋合いはない。子供を渡せ」隼人は冷酷なまでに強硬だった。瑠璃は、彼の暗い瞳を見つめながら、痛切な表情を浮かべた。「隼人……どうしちゃったの?この子はあなたの血を引いた子よ。……まさか、また恋華があな
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