All Chapters of 元カレのことを絶対に許さない雨宮さん: Chapter 1031 - Chapter 1040

1042 Chapters

第1031話

「したいな」陽一の口調は確信に満ちていた。しかし次の瞬間には、こう言う。「とても公開したいけど、君の意思は尊重する」「凛が公開したいなら公開する。したくないなら、しばらくは内緒にしておこう」凛は笑って言う。「さっきドアを入った時、ちょっと驚いたでしょ?」「驚いたというほどじゃないけど、ただ予想外だった」「私も両親が急に来るなんて知らなくて。料理も全部できていて、あなたが帰ってくるのを待って、食事するだけだったのに、まさか……」陽一が急に尋ねる。「花、気に入った?」「紫色、きれいだわ」やっぱり……陽一は満足げに口元を緩める。凛は言う。「もともと寝室に潜り込んで、まずあなたに電話をかけるか、メッセージで状況を説明しようと思ってたの。少しでも心の準備ができるようにね。なのに……あなたがドアを開けて入ってきちゃった」陽一は言う。「どう説明し、どう対応すべきか考えていたところに、おじさんが僕の代わりにすべての理由を用意してくれた……」陽一は口を挟む隙さえなかった。凛は口元をひきつらせる。「お父さん、脳内で何を補完したかわからないけど、彼は心からあなたを兄弟として見ているの。もし私たちが付き合ってるって知ったら、多分……顎が外れるほど驚くわ」「僕はずっと『おじさん』って呼んでるのに、なぜか彼は……コホン!どうしても僕を兄弟扱いするんだ」男の口調は鬱々としていた。凛は思わず笑い出したが、急に何かを思い出したように言う。「初めて会った時、あなたはもうお父さんのことを『おじさん』って呼んでたの。あなた……もしかして、あの時からもう私に……」「ああ」凛が言い終わらないうちに、陽一は自ら認めた。逆に凛は言葉に詰まってしまう。どれくらい経っただろうか、凛は急に口を開く。「私たちの関係、公開しようよ。いい?」陽一の息が一瞬止まり、その後は尽きることのない躍動と喜びが湧き上がってくる。陽一は言う。「いいよ。君の言う通りにする」凛の口調は軽やかで、かすかに笑みを帯びている。「私の先生は人に紹介できないような人じゃないんだから、何を隠す必要があるの?」別に凛は、親に隠れて初恋にふける小学生なんかじゃない。こそこそする必要などない。陽一は言う。「今夜はまだ言わないでおこう。明日、プレゼントを買って持ってき
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第1032話

凛は「ああ」と落ち着いた口調で答える。「スーパーで洗剤を買った時にもらったの。サイズを気にしなかったから、まあ何とか使えるわ」凛はありのままを言った。「さあ、庄司くん、2、3局やらないか?」慎吾はにこやかに笑い、すでに腕まくりを始めている。「構わない」陽一は素直に受け入れた。二人は8時半から11時まで、ずっと将棋を指し続けた。凛は傍らに座り、論文を何本も読んだが、二人にはまだやめる気配がない。敏子は十数分くらい見ただけで、パソコンを抱えて、寝室に原稿を書きに行った。六千文字を書き上げて出てくると、なんと、二人はまだそこに座ったままで、2、3時間前とほとんど変わらなかった。敏子は、この二人がトイレにも行っていないのではないかと疑う。しかし、本当に敏子を驚かせたのは凛だ――「凛、まだここにいるの?あなたは将棋をずっと見る辛抱強さなんてなかったわ」親は子の心を知るものだ。凛には確かに対局を見守るような辛抱強さはなく、以前守屋家で陽一とおじいさんが囲碁を打っていた時は、我慢できずに二階で昼寝をしていた。でも今は……あの時とは少し違うから。何しろ、あの時の陽一はまだ凛の彼氏ではなかった。今は彼氏なんだから、ちゃんと見ておかなくちゃね?凛は言う。「最近、将棋って面白いなと思うの」「そうなの?お父さんは何年も指していたのに、あなたは興味を示さなかったじゃない。どうして急にそう思ったの?」幸い、敏子はそれ以上追及せず、言い終えると、慎吾の方を向いて声をかける――「この局が終わったら片付けてね。あなたは明日ゆっくり寝られるかもしれないけど、庄司くんは早く起きて、仕事に行かなくちゃいけないんだから」「わかったよ。この局が終わったらな」30分後、ついに勝負がついた。慎吾は言う。「確かに二枚の駒を上げたのに、どうしてお前は横から襲撃できるんだ?」十数秒間じっと見つめ、そして足をバンと叩く――「油断したか!もう一回、もう一回、今回はうっかりしていた。次こそ絶対に……」敏子が軽く咳払いをする。慎吾はやっと気づく。「ああ、やばい!将棋に夢中で時間を忘れていたよ。それじゃあ庄司くん、早く帰って休め。また今度勝負しよう!」「わかった」「凛、送ってあげ――」「うん」凛が立ち上がり
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第1033話

「おやすみ、凛」「おやすみなさい、先生」慎吾が玄関まで歩いて行くと、目に入ったのは二人が互いに別れを告げる睦まじい光景だ。陽一の背後にある家のドアはすでに開いていたが、明かりはついていない。次の瞬間、彼は慎吾の方を見て言う。「おじさん、ゆっくり休んでください」「ああ!お前もな!」慎吾は慌てて応えた。陽一は身を翻してドアを閉める。すべてが極めて普通だ。慎吾は視線をそらし、凛の方に向き直って言う。「庄司くんは本当にいい奴だな。礼儀正しく、教養があって、人を気遣うこともできる」「そうなの?」凛の口元はもう弧を描いていたが、口調は平然と落ち着いていて、少しの隙も見せなかった。「そうだよ!?」慎吾はそれを聞くと、むしろ焦ったように言う。「俺が兄弟として認めてあげるには、ハードルがあるんだぞ。でなきゃ、どんな雑魚でも俺の目に留まると思ってるのか?」「お父さん、陽一さんは私よりほんの少し年上なだけだし、私の目上の人扱いするほどじゃないでしょ?」親子二人は話しながら家に入る。慎吾は言う。「陽一ってお前が呼ぶのか?失礼だよ……目上かどうかなんて、年齢で決まるものじゃない。それに、彼はお前の先生だぞ。目上じゃなかったら何だ?」凛は心の中で言う――彼氏だよ。敏子は親子二人がやっと帰ってきたのを見て言う。「どうしてそんなに時間がかかったの?」慎吾はえへへっと笑ってから言う。「庄司くんと少し話してたんだ」「あなたたち、本当に気が合うのね」慎吾は言う。「さっき凛にも言ったけど、庄司くんは付き合える奴だ。どこも欠点がない」敏子は慎吾を一瞥する。何という眼差しなのか?複雑で、意味深く、よく見ると同情の色さえ少し混じっている。「そうだ、将棋盤は片付けないでくれ、あのままにしておいて。明日も庄司くんと使うから」敏子は呆れたように黙り込む。翌日。炎天が地を照らし、蒸し暑さが立ち込める。敏子は早朝からヨガを始め、わずか30分で全身が汗だくになる。敏子がシャワーを浴びている間に、慎吾は朝食を作り、テーブルに並べ終える。凛が部屋から出てきたところで、声をかけられる――「凛、ちょうどいいところに来たね。ワンタンスープを作ったから、庄司くんにも届けにいって。この時間なら、まだ出かけてないはずだ」「いいよ
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第1034話

男のたくましい胸板は熱く、凛の薄い生地一枚を隔てるだけで、呼吸さえも熱気を帯びている。湿っていて、べたついてる。陽一は言う。「それで、こうする」凛は軽く舌打ちをする。「あなたって、本当に遠慮がないのね?」「自分の彼女を抱きしめるのに、遠慮する必要はある?」「あなたって、陰でこんなことをするくせに、私の両親の前でやってみなさいよ?」陽一は軽く咳払いする。「……それはやはり無理だ」凛は彼に強く抱きしめられ、天気も暑くて薄く汗をかいたが、陽一は少しも手を緩める気配がない。「あの……ちょっと手を離して」「ん?」「骨が当たっていて痛いの」「……」陽一は電気にでも触れたかのように手を引き、くるりと向きを変えて、寝間着を引っ張って着る。紐を結ぶのも、無意識に背を向けてやった。何度か深呼吸をした後、やっと振り返り、再び凛に向き合う。「ごめん、僕は……」「お父さんがワンタンを煮たから、持って行くようにって」凛は陽一の言葉を遮り、言いながらリビングへ歩いていく。「ワンタンスープ?」陽一は凛の後をついて出てくる。「ほら」凛は食卓のそばで立ち止まり、顎をしゃくる。「餃子に似てるけど、同じものじゃないの。お父さんが今朝早起きして手作りしたの。食べてみる?」「うん」陽一は台所で箸を取り、座って食べ始める。凛は向かい側に座り、顎を支えて陽一を見つめる。「味はどう?」「とても風味があって、唐辛子は入ってるけど辛くない。美味しい」陽一は凛の顔を立てて、全部きれいに平らげた。スープもほとんど残っていないくらい、ほぼ飲み干した。「じゃあ、先に帰るね」「凛――」「ん?」凛は振り返る。次の瞬間、男に抱きしめられてしまう。陽一はあごをそっと凛の肩に預け、低い声でこぼす。「キスしたいけど、ワンタンを食べたばかりで、ニンニクが入ってたから……君に臭いが移るのが心配で……」「ふふ!」凛は思わず笑い声を漏らした。陽一はまた続けて言う。「キスはできないけど、少し抱きしめるくらいはいいだろう?」凛は気前よく言う。「どうぞ、ごゆっくり」「凛、鍵を預けるよ。いつでも遊びに来て」凛は柔らかく優しい声で「うん」と軽く答えた。「ご両親はどのくらい滞在するの?」「たぶん……一ヶ月くらいかな」
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第1035話

陽一はそれを聞いて、一瞬呆然とした。そしてすぐにうなずく。「僕もちょっとそう思う」朝日は心の中で突っ込む。『こいつ、まさか笑ってる!?』「言っとくけどな、陽一。俺だって忙しいんだから!お前がこんなふうに仕事を放り出すと、俺が困るんだよ――」陽一は言う。「今月の手当、倍にする」朝日は言う。「承知いたしました。お忙しいところ申し訳ないです。すべてをこの俺にお任せください」陽一は朝日の肩をポンポンと叩き、去っていった。途中まで行って、いきなり引き返してくる。「君の叔父さん、大手の不動産管理会社で働いてるよね?」「ああ。どうかしたか?」「彼に、地方の土地の利用と開発状況を調べてもらえるか?」朝日は言う。「道理で言えばできるはずだ。チェーン店の書類もすべて同じシステムに登録されるから」「じゃあ、手伝ってほしい……」30秒後――朝日は驚いた顔をする。「何がしたいんだ?」陽一は言葉より先に笑みを浮かべる。「ご家族に挨拶に行くんだ」「??」「後で調べられたら僕に送ってくれ、今度ご飯おごるよ」そう言うと、完全に面食らった朝日を置き去りにし、大股で立ち去っていく。「いや……俺は……」ご家族に挨拶って?どのご家族?そんなに急いで進展しなくても……?……昼食は慎吾が適当に作った。凛が尋ねる。「朝、エビと牛肉を買ったじゃない?見当たらないけど」敏子がゆったりと口を開く。「それ、夜に作るって。庄司くんと一緒に食べるのを待つんだって」凛は少し戸惑う。慎吾は言う。「人を食事に招待するんだから、ごちそうを作らなきゃな。なぜだと思う?おもてなしってやつだ!わかる?」敏子は呆れたように黙り込む。凛も同じだ。午後、敏子は書斎に入って原稿を進める。凛はぐっすり昼寝をし、起きると慎吾がベランダでしゃがんでいるのに気づく。また盆栽か何かをいじっているのかと思ったが、近づいてみると、慎吾は老眼鏡をかけ、目の前には豚足が置いてあり、ピンセットでその豚足の毛を抜いている?「お父さん、何をしてるの?」「うわっ!びっくりした。どうして歩く音も立てないんだ!?」「これは?」「えへへ……今夜、豚足のスープを作ろうと思ってさ。買う時に店主に処理してもらったんだけど、毛がきれいに剃れてな
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第1036話

「今年は無理かもね……」凛は時間を計算してみた。夏休みが終われば新学期になり、次の4月には修士2年目に入るのだから、これからは今よりさらに忙しくなっていく。陽一は授業をしながら、実験室の管理もしている。学術上の課題も少なくないし、おそらく彼も厳しいだろう。早苗は言う。「先生は今後授業しなくなるんだから、GWみたいな連休には、完全に気ままに旅行できるじゃない。G省だって遠くないし……」「待って……授業しなくなるって?どういう意味なの?」早苗は驚いたように言う。「凛さん、知らなかったの?」何を?凛は一瞬呆然とした。電話の向こうも2秒沈黙し、ようやく口を開く。「凛さん、一旦切るね。LINEで送るから」「……わかった」早苗が送ってきたのは二つのリンクだ――一つはB大学HPのお知らせ。もう一つは学内フォーラムのヒットになっているスレッド。凛は一つずつクリックして開き、読み進めるにつれ、表情が次第に険しくなる。……夕暮れ時、太陽は真っ赤に染まり、夕焼けが鮮やかだ。陽一は二つのギフト袋を手に路地に入り、満面の笑みを浮かべている。「庄司くん、もうお帰り?今日は随分早いじゃないか?」「今井先生、こんにちは」陽一は軽く会釈した。「おめでとう、この前の研究課題、また賞を取ったそうだね」「ありがとうございます。実験室のみんなの努力の成果です」「あはは……相変わらず謙虚だね!若者ながら本当に立派だ!」今井教授は笑いながら言う。「そうだ、学長から聞いたけど、君は自ら授業を止めたんだって?プレッシャーが大きすぎて、時間が足りない?」陽一は流れに乗ってうなずき、曖昧な返事をいくつか口にした。「わかってるよ。教育をするより、君はきっと学問をやる方が好きだし、得意なんだろう。でも陽一、先輩として一言だけ言わせてくれ。教育と研究は切り離せないんだ。俺たち個人と学校は、何で結ばれていると思う?教育じゃないか?」今井教授は思いを込めて言う。「君には実力がある、それは間違いない。でも、学校からのお墨付きも同じくらい重要だ。どうしてもという時以外は、学校側とあまり関係を悪化させない方がいい。君のこれからの発展のためにもね」ここまで話をはっきり言われて、陽一も分からないふりはできない。笑って礼を言ったが、授業を
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第1037話

陽一は確信に満ちた口調で言う。「価値はある」凛はまだ黙っている。陽一が与えるものは多すぎて、愛が重すぎる。すべての捧げものは、凛の目に映り、また凛の肩に重くのしかかってくる。「両立できないわけではない。実際、あなたは……」陽一は言う。「わかっている。校則上、僕たちは直属の師弟関係ではない。道徳的観点から見ても、公序良俗に背いてはいない。恋愛が発覚しても、状況はそこまで悪くならないかもしれない……こういうこともすべて考えた」「それなのに、なんで……」陽一は一言一言を区切って言う。「賭けはしたくない。賭けられないんだ」賭けに勝っても、大したことではない。しかし負ければ、凛を失う可能性がある。「凛、この選択は僕にとって、難しくはない」どちらが重くどちらが軽いか、心の中の天秤はとっくに傾いていた。凛は唇を結ぶ。「でも、あなたの実験プロジェクトはまだ学校の名義だし、毎年の研究経費も学校を通じて申請しているでしょ。それに、色んな表彰や職位の審査だって、学校を越えることはできない」陽一が諦めたのは、ただの授業や、ただの給料だけではない。一番重要なのは配分できるリソースだ――陽一に配分される、自由に利用できる膨大な学術リソースだ!陽一は笑い出す。その笑顔には絶対的な自信と、すべてを掌握した余裕がある。陽一は言う。「たとえ僕が教職から離れても、学校側の名義で僕にプロジェクトを続けさせ、研究経費も毎年確実に支給するだろう。表彰や職位審査についても、学校側には推薦する権利はあっても、決定権はない」「凛」陽一はため息をつき、丁寧に教える教師のように凛を導く。「この世の名利、栄華はすべて、同じ言葉に集約できる――利益の交換だ。君は僕が何を失うかばかり見ているが、僕がこれらを失うと、学校側も避けられず影響を受けることを見落としている。そして、その影響は、生徒を教えられる教師一人を失うことに比べて、はるかに重い」「もし君だったら、どう選ぶのか?」凛は考え込むような目をする。陽一は遮らず、静かで包み込むような眼差しで凛を見つめる。しばらくして、凛はようやく軽くうなずく。「少しわかったような気がする。私を慰めるために、わざと事態を軽く言っているのかどうかはわからないけど、陽一さん――」凛は陽一の真剣な視線を受け止
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第1038話

二人は慌てて離れ、息遣いもまだ荒いままだ。これはまた新たな挑発と同じようなものだ。「お父さん……どうして急に出てきたの……」凛の声はとても小さかった。慎吾は凛を指さす手が震えている。「お前、お前……俺が出てこなければいいと思ってたんだろ?それで!?それで二人は何をしようってんだ!?」凛は黙って、心の中で『真昼間に、何ができるっていうの?この質問ときたら……』と突っ込んだ。陽一は素早く気持ちを立て直し、口を開く。「おじさん……」「やめろ!そんな風に呼ぶな!通りで、俺はお前を兄弟だと思ってたのに、どうしてお前はずっと『おじさん』『おじさん』って呼ぶんだと思ってたぜ?なるほど、こんな目的があったってわけか?」陽一は理解を求めようとする。「説明させて、僕は――」「何を説明するんだ?俺がお前を兄弟だと思ってるのに、なんでお前は俺の娘を抱きしめて、キスしてたかって説明するつもりか!?それとも、俺と親しくしてたのは、下心があったからだって説明するのか!?」陽一は言葉を詰まらせてしまう。「……申し訳ない、おじさん。僕はずっとあなたを目上の方として見てきた。おじさんと……兄弟のような間柄になりたいとは思ってなかった」慎吾はそれを聞いて、さらに腹を立ててしまう。「つまり、お前が言いたいのは、俺が一方的に熱を上げてただけってことか?無理にでもお前と兄弟になろうとしてたってのか!?お前は本当に、俺を眼中に入れてなかったってことか!?」陽一は状況がよくわからない。そういう意味じゃないんだけど?慎吾の解釈に、陽一は思わず自分自身を疑い始める。ちょうどその時、慎吾が前に進み出て、凛の腕をぐいっと掴む。「ぼーっとしてる場合か?早く家に帰るぞ!」言い終わると、そのまま人を家の中に引きずり込み、そしてバタンという音がする――ドアが閉められた。陽一は震えるドアを見つめ、鼻をこすり、苦笑いを浮かべる。……「ちゃんと立っていなさい!」凛はリビングの真ん中に引っ張り出された。この大騒ぎで、敏子はとっくに目を覚ましていて、ソファに座っていた。激怒していて、今にも人を斬りつけんばかりの夫と、そわそわ落ち着かず、うつむいて後ろめたさを隠そうとする娘を、交互に見つめている。そして冷静に言う。「さあ、どういう状況なの、話しな
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第1039話

凛は素直にうなずく。「ええ、私と先生は、今夜二人に教えるつもりだったの。まさかこんな……」凛はこっそり慎吾を盗み見る。こんなにタイミングが悪く、バレてしまった!敏子は姿勢を正し、また尋ねる。「昨日会ったばかりの時は、どうして言わなかったの?」凛は正直に答える。「お父さんたちが急に来たから、まだ話し合いがまとまってなくて……その後はなんとかまとまったけど、お父さんにサプライズをと思って……」慎吾は言う。「これがサプライズか!?これはショックだ!」「……」敏子は最初から最後までとても冷静だった。「いつから付き合ってたの?」「えっと……もうすぐ3ヶ月くらいかな」「どっちから告白したのかしら?」凛は言う。「もちろん彼からだわ」敏子は満足そうにうなずく。慎吾はぽかんとした顔で瞬きをする。「おい、敏子、なんでうなずくんだ?この子と庄司くんが――二人が付き合ってるんだぞ!」敏子は慎吾を見て、淡々とした口調で言う。「だからなに?二人がお互いを好きなら、何がいけないの?」慎吾は考えもせず、口をついて出る。「もちろんいけないんだよ。俺はあいつを兄弟と思ってたのに……」敏子がその言葉を遮る。「あなた、庄司くんの意見を聞いたことある?庄司くんはあなたと兄弟になりたいと思ってた?私の記憶が正しければ、庄司くんはずっとあなたのことを『おじさん』って呼んでたわよね?」慎吾は絶句する。敏子は凛を自分のそばに引き寄せて座らせ、優しい口調で言う。「さあ、凛、私たち母娘で少し話そう」それから慎吾の方を見て言う。「キッチンで豚足のスープを煮込んでいるでしょう?見に行かなくていいの?」「しまった――忘れるところだった!」そう言うと、慎吾はくるりと向きを変えて台所へ走っていく。しかし、走りながら、慎吾はこの豚足のスープは、誰のために特別に煮込んだものだったかを急に思い出し、また悔しさと憤りが込み上げてくる。あんなに時間を使って、豚足の毛を取ったのが無駄になった!意味のないことだ――リビングで、敏子は優しい口調で言う。「お父さんの反応が大きかったからって、責めないであげてね。彼も予想外だったし、真実を知った形があまりにも……えっと……残酷だったから、一時的にちょっとカッとなっただけなのよ」凛は言う。「私が悪いの。
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第1040話

敏子は言う。「私が言ったの、ダメ?」「敏子……」慎吾は困り顔で言った。「凛はもう子供じゃない。この子には自分の判断がある。自分で決められる。庄司くんと付き合いたいなら、親としてできることは、尊重することと、見極めることよ」「……見極める?」「そうよ」敏子はゆったりとした口調で言う。「娘の彼氏なんだから、親としてしっかり見極めるべきじゃない?いい人か悪い人か、どんな性格なのか、頼りになるかどうか?」慎吾は少し納得しかけていたが、そう簡単に呼んでくるのは……なんだか格好悪いような?それを見て、敏子は軽く咳払いをする。「凛、庄司くんに言ってちょうだい。お父さんに心から謝りに来なさいって。今回のことはあなたたちが悪いんだから」慎吾の表情が少し和らぐ。『そうだ!』と言わんばかりに。凛はうなずく。「私がしっかり叱っておくよ。私も反省しているの。じゃあ、お父さん、先生を呼んできてもいい?」「それなら……呼んでこい。庄司くんにどれだけ誠意があるのか、ちゃんと見極めてやるぞ……」凛は返事をすると、嬉しそうに走り去る。慎吾はまた目障りに思ってしまう。「見ろよ、あの子を!みっともないぞ!」女の子としての慎みはないのか!?……凛が陽一を見つけたとき、彼はリビングのソファに座っている。灯りはついておらず、暗闇に溶け込んでいる。「……先生?」凛は探るように声をかける。闇に飲み込まれそうだったその影が、ようやく微かに動いた。まるで、急に暗闇から剥がれ落ちたかのように。凛が明かりをつける。「真っ暗じゃない、どうして電気つけなかったの?」陽一はゆっくりと顔を上げ、目には血走った光が宿っている。「凛……俺、しくじったのか?」その瞬間、凛の心は急に言いようのないほど柔らかくなる。凛は近づき、そっと陽一の髪を撫でる。傷ついた大きな犬をなだめるように。「そんなことないよ、ただいきなりのことで、お父さんが受け入れられなかっただけ。でも、もうだいぶ落ち着いたから。信じられないなら、一緒に来てみて?」「……行くって?」「そうよ。お父さんがわざわざごちそうをいっぱい作って、あなたが仕事から帰るのを待ってるんだから、行かないわけにはいかないでしょ?」「……わかった」陽一は立ち上がり、こわばった肩を動かす。出かけると
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