All Chapters of 元カレのことを絶対に許さない雨宮さん: Chapter 511 - Chapter 512

512 Chapters

第511話

早苗は言った。「その時、私たちは全員そこにいたのよ。誰もいなかったわけじゃない。機器はただ一時的に使っていなかっただけで、自動的にスタンバイ状態になったの。すぐまた使う予定だったのに、誰がわざわざ電源を切るというの?」凛は内心、薄々見当がついていたが、まだ確認が必要だった。「向かいの実験室を見に行こう」早苗は首をかしげた。「あの人たちを見てどうするの?あれは別の専攻の実験室みたいだし、私たちとは関係ないじゃない……」学而も鋭く不穏な気配を察し、慌ててついてきた。「行けって言われたら行くんだよ。なんでそんなに質問ばかりするんだ?」「……」早苗は思わず心の中でつぶやいた。いい度胸してるわね……三人が向かいの実験室に着くと、やはり壁の隅には消防設備一式が整っていた。「これは……」早苗は目を丸くした。「先月までなかったのに!」さらに三人は他の実験室も見て回ったが、例外なく、以前不足していた器材は全て補充され、もともとなかった物まできちんと揃っていた。早苗は背筋に冷たいものを感じた。「こ、これは私たちを狙ってるの?」学院中の実験室には消防設備がすべて補充されているのに、彼らの実験室だけが除外されていた。これまで早苗は、そんなのはただの偶然だと思っていた。偶然、自分たちが抽選に当たり、偶然、欠点を指摘された……背後で誰かが意図的に狙っているとは、夢にも思わなかった。凛は冷ややかに笑い、二人を連れて副研究科長室へ向かった。亮は、一目でこの三人が大谷の今年新しく採用した修士課程の学生だとわかった。特に凛は、今年の新入生で初めて『Science』誌に論文を掲載した天才で、あの日の会議で場内が沸き立った光景は今でも鮮明に覚えている。「雨宮さん、何かご用?」つい先日、時也と陽一から相次いで受けたけん制を思い出し、亮はすぐに笑顔を作った。「浪川先生、私たちの実験室が改善命令を受けた件、ご存知ですか?」亮はうなずいた。「聞いている。何か問題でもあった?」「では問題が多すぎます。まず、なぜ他の実験室は消防設備が完備されているのに、私たちの実験室だけが不足しているのか。次に、今回の消防検査は抽選だったと聞いていますが、どうしてちょうど私たちが当たったのか」亮は眉をひそめた。「その話には裏の意味があるようだ。一体何
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第512話

上条は腕を組み、見下ろすように言った。「どんな通報のこと?」「とぼけるな!消防検査で他の研究室は何の問題もなかったのに、雨宮のところだけ是正命令を出されたんだ。あなたが関係ないなんて言えるのか?」上条は唇をゆがめた。「私は忙しいの。毎日報告書や論文を書くのに追われていて、子供と張り合ってる暇なんてないわ。でも……他の誰かがどうかまでは知らないわね」上条には学生が大勢いるのだから、その中に凛たちを気に入らないと思う者が一人や二人いたとしても、別に不思議ではない。「最近はずいぶん図々しくなったな。一言も相談せずに勝手な真似をして、私を軽んじているのか?!」上条は眉をひそめた。「私を呼んだのはこの件のため?何よ、大谷先生のあの学生たちの肩を持つつもり?ふん、あなたらしくないわね、浪川先生」亮は冷ややかに笑った。「あなた、自分のやってる小細工が巧妙だと思ってるのか?愚かにもほどがある!今回の消防検査は、学校と消防隊の合同で実施されたんだ。普段、あなたがどうやって彼らを排斥しようと、それが内輪のことなら外に漏れることもない。だが今回は消防が関わっている。あなたの通報電話で、学校全体を巻き込む事態になったんだ!」一つの研究室が改善命令を受ければ、学院も監督不行き届きの責任を負わされる。特に消防設備は、通常は研究室が自前で用意するもので、学生に貸し出す前に学院側には検査義務があり、問題がないことを確認して初めて貸与を許可する。今回検査で問題が見つかったということは、学校側の怠慢、仕事の不備を示すにほかならない。「今でも自分が賢いと思っているのか?」亮は冷ややかに鼻で笑った。「これがもし他の幹部に知られたら……」上条の表情がわずかに変わった。「今回は私が尻拭いしてやる。これからは余計なことをするな」さっきまでの高飛車な態度は消え、上条はためらいがちに言った。「……じゃあ、これからどうするの?消防署に一言挨拶して、大目に見てもらう?」「消防署があんたのものだとでも思ってるのか?通報したい時に通報し、撤回したい時に撤回できるとでも?!」「じゃあ……放っておく?」「消防署から改善命令が出たんだから、指示通りに改修すればいいじゃないか」もう事が起こってしまった以上、間違いも最後まで突き通すしかない。時也と陽一の件に
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