「昼間は運動する時間がないから、夜に長めに走るんだ」凛はその場で立ち止まり、陽一が自分と同じ段に上がってくるのを待ってから、二人並んで階段を上っていく。「……今日は先生が助けてくれなかったら、私たちはそのまま追い出されるところでしたわ」だが陽一は片手を軽く振り、「僕たちの間で、そんなに堅苦しくする必要はないよ。五日間で本当に足りる?もし足りなければ、もう一度学校側に掛け合ってみる」と柔らかく返した。「もう十分です」消防の件は区の消防署が絡んでいて、すでに改善命令も下されている。規定通りに進めるしかなく、校長が出てきても覆すことはできない。いずれにせよ遅かれ早かれ移転は避けられないのだから、陽一にこれ以上負担をかける必要はなかった。彼はすでに、何度も彼女を助けてくれているのだから。二人で歩みを揃えると、不思議と時間は早く過ぎていく。言葉を交わしたのはほんのわずかなのに、気がつけばもう七階にたどり着いていた。「先生、おやすみなさい。また明日」凛はドアを開けて部屋に入った。陽一は微笑んで言った。「また明日」彼女がドアを閉めてから、彼もようやく自分のドアを閉めた。書斎に入り、パソコンの前に座る。画面が点いた途端、朝日からのメッセージが次々と飛び出してきた——【おい、どこ行った?話してる途中でまた返信がこなくなったけど?】【まさか、また下に降りて走りに行ったんじゃないだろうな?】【いや……お前今夜だけで何度も行ったり来たりしてるけど、何が目的なんだ?】【陽一?何かに取り憑かれたのか?】【ったく!本当に走りに行ったのか?知らない人が見たら、道に金でも落ちてると思うぞ】【お前、今夜は明らかに様子がおかしい。夜に走る奴は見たことあるが、一晩で何度も出かける奴は初めてだ】【自分で確認してみろ、7時から今の10時までに何回出歩いたと思ってるんだ?】【もういい……データは自分で処理する。お前に期待した俺が馬鹿だった!】苛立ちから、やがて諦めへ。最後に朝日は静かにオフラインになった。陽一はさっきの光景を思い出した。凛がひとり薄暗い廊下に立ち、頭上の白熱灯が淡い黄の光を落とし、その細く儚い姿を際立たせていた。ひとりぼっちで……だが幸い、五度目に下へ降りたとき、ようやく彼女と出会えた。少なく
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