海斗が返事をする前に、亜希子が笑顔で口を開いた。「ここは私が選んだの。学校から近くて歩いてすぐだし、わざわざ車を出したり予約したりしなくてもいいから、簡単で便利でしょう?それに、この店は味も悪くないし」時也は「ふうん」と曖昧に応じ、信じたのかどうか分からないまま「入江社長は幸せ者だね」と言った。毎回のように、気の利く人を見つけられるものだ。亜希子は笑顔を崩さず、周囲を見回した。「あら、庄司先生もいらっしゃるの?みんな知り合いみたいですし、ご一緒しませんか?」そう熱心に提案してから、彼女は海斗を振り返った。「いいでしょ?」「俺は構わない。お前がいいならそれでいい」海斗はあっさり答えた。「えっと……」浩二が突然口を挟んだ。「すみません、俺たちもう食べ終わってしまったので」「?」亜希子はきょとんとした。「このテーブルを使いたいよね?ちょうどいいタイミングだ、どうぞどうぞ」そう言うと浩二は立ち上がり、上着を手に取った。陽一、海斗、そして凛もそれに合わせて立ち上がり、二人に席を譲った。浩二は言った。「さあ、どうぞ」亜希子は言葉を失い、海斗も黙って視線を落とした。時也が口を開いた。「会計してくる」「俺も一緒に行くよ」浩二が続いた。凛も言った。「みんなで一緒に行きましょう」そうして四人は揃ってレジへ向かい、そのまま店を出て行った。残された海斗と亜希子はテーブルの脇に立ち尽くし、座ることもできず、立ち続けるしかなかった。亜希子は目を伏せた。「ごめんなさい……あまり役に立てなかったみたい」海斗は無表情のまま席に着き、メニューを差し出した。「選んで」亜希子はおそるおそる三品を頼み、彼に尋ねた。「何を食べたい?」「いらない」海斗は頭を横に振った。料理が運ばれてくるまでの間、海斗は立て続けに三本のタバコを吸った。白い煙の中、彼の目は陰鬱に沈み、一瞬だけ荒々しい気配がのぞいた。……また月曜日が来た。朝の授業が終わると、凛、早苗、学而の三人はそのまま隣の経済大学へ向かった。実験室に着くと、白衣に着替え、それぞれ作業に取りかかった。昼になると、三人で連れ立って食堂へ向かった。店内は人であふれ、どの窓口にも長い列ができていた。とりわけラーメンの列は入口近くまで伸びていた。凛と学而は思
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