しかし、時也が言い終える前に、陽一が口を開いた。「……徹さん、酔いすぎですよ。彼らはまだ学生なんです。学業が第一で、余計なことは考えない方がいい。そんな噂が広まれば、互いにとっても良くないです」徹は言葉を詰まらせ、ようやくはっと我に返った。「まったく、酒を飲みすぎると余計なことまで……その通りだ、学生は勉強が第一だな。他のことは……自然に任せよう!」そう言い残し、別の客の方へ向かった。陽一はその場に立ち尽くしたまま、前を見据えて言った。「さっきはあんな言い方をするべきじゃなかった」時也は口の端を上げた。「へえ?庄司先生、何か不満でも?」「自分の子供を悪く言われて喜ぶ親はいない。瀬戸社長は気にしないかもしれないが、口を開く前に周りへの影響を考えてみて」時也は眉をひそめた。「つまり、私は凛のことを考えていないと?」「そうではないのか?」陽一は振り向き、相手をまっすぐに見据えた。「瀬戸社長は聡明なお方だ。これ以上言わなくてもおわかりだろう」「すべてを見通しているような顔はやめてくれ。凛を気にかけているのはお前だけじゃない。俺はお前以上に彼女を大事にしている」「それなら結構だ。大事に思うなら、彼女を危険にさらさないでほしい」「危険?たかが一言だろう。庄司先生、そんなに神経質になることはない」「今日は一言でも、明日はどうなる?好き放題に慣れた人間は、いずれ無分別に行動する。小林家は寛大だからよかったが、もし他の家や他の相手だったら、彼女にどんな影響を与えると思う?」時也の表情が一瞬固まり、目がわずかに細められた。陽一は言った。「本当に彼女のためを思うなら、あらゆる面に気を配るべきだ」そう言い捨て、大股でその場を去った。……ケーキを食べ終えた凛の手にはクリームがついていた。ティッシュで拭いたものの、まだべたついていた。彼女は早苗に声かけて、洗面所へ向かった。出てきたとき、ちょうど時也と鉢合わせた。時也はミネラルウォーターを差し出した。「ケーキが甘すぎただろう。水を飲むといい」先ほどの席で、時也は凛が飲み物を一口だけ口にして置き、その後まったく手をつけていないことに気づいていた。どう見ても気に入らなかったのだ。ちょうど水が欲しかった凛は手を伸ばして受け取り、「ありがとう」と言った。
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