学而はその可能性を考えただけで、心臓が勝手に締め付けられる。理由がないなら、早苗が帝都に残る理由を自分にすればいい。ただ……今のところ、学而のその考えは十分とは言えないようだ。だが、いつかきっと十分になると信じている!実験室に着くと、予想通りに、凛はすでに実験台で作業している。「おはよう、凛さん」「おはよう、学而。早苗は?」この二人は普段一緒に来るんじゃないの?学而は口元を引き締める。「今日は……急に僕を乗せてくれなくなった」なんて情けない口調だ。凛は一瞬呆然とする。「どうして?早苗はそんな意地悪な子じゃないわ。何か彼女を怒らせるようなことでもした?それも、かなりひどいことを?」学而はため息をつく。「……そうかも」「?」学而が到着したのは8時くらい。来てからというもの、視線の端を入り口に釘付けにしている。昨日逃げ出したあのまん丸いウサギを、真っ先に捕まえるために。しかし、午前10時になっても、早苗は始終現れない。学而は慌てるようになる。何かあったのではないかと心配して、9時半からずっと電話をかけ、メッセージを送り続ける。だがすべてが早苗に拒否される。メッセージも返信してくれない。「凛さん、早苗はまだ来てないんだけど、僕――」「あれ?知らないの?早苗、あなたに話してない?」学而は呆然とする。「何を?」凛は言う。「早苗から、9時にメッセージをくれたの。1週間休みを取るって」「休み!?」「ええ、家に用事があって、Y省に帰るんだって」「具体的に何の用事かは聞いた?」「お父さんの体調が悪くて、結構急ぎの用事らしいから、詳しく聞く暇もなかったの」学而は胸がざわつき始める。学而は知っている。早苗が逃げるための口実に、こんな理由を使うはずがない。つまり、早苗の父の状態は本当に良くないのだ。「凛さん、僕も2日ほど休みを貰いたい」「……え?」「取ってもいい?」凛は頷く。「いいわよ」「ありがとう」学而はすぐに実験室を後にし、アパートに戻る途中、今日の午後G市行きの航空券を予約する。……凛は一人実験室に残され、午後6時まで仕事をして、ようやくこった首を揉みながら実験台から降りる。今日は車で来ていたから、陽一に迎えに来てもらわなかった
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