海外のビーチ。真奈はデッキチェアに身を横たえ、目の前には青い空と白い雲、果てしなく広がる海があり、砂浜には金色の砂がきらめいていた。サングラスをかけた真奈はスマホのカメラに向かってピースサインをして、そのままSNSに投稿した。写真には、顔の半分をピースで隠す真奈の横で、Mグループの芸能人たちが夢中で砂遊びをしている姿が写っていた。真奈のキャプションは――「青い空と白い雲と海、いたずら好きな社員たち、そして理想の社長」コメント欄はすぐに大盛り上がりになった。コメント1【社員旅行ってよくあるけど、海外まで連れて行くなんて!私もそんな社長の下で働きたい!】コメント2【あの!私の推しを全部さらっていくなんて!推しを返して!】コメント3【Mグループの芸能人たちが一斉に休暇……私の楽しみが消えた!】……一方その頃、英明は花柄の短パン姿でスコップを手に、場違いなほど必死に砂を掘り返していた。ぶつぶつと小声で文句を漏らす。「結婚式もまだなのに先に新婚旅行か?別に新婚旅行でいいけどさ!なんで俺が手配しなきゃいけないんだ?何十人も連れてきて何日も滞在させるなんて、ただじゃないんだぞ!」「兄さん、何ブツブツ言ってるの?」「別に!」英明は不機嫌だった。この出費は必ず冬城に取り返してやると心に誓っていた。その時、真奈がサングラスを外し、少し離れたところにいる英明を見やって、にこりと笑いながら言った。「福本社長のおかげで、うちの社員旅行費がだいぶ浮いた。さすが福本社長、太っ腹」その言葉に、英明は引きつった笑みを浮かべた。「いやいや!これくらいの金額、福本家なら問題ない。地元の人だから、当然のことさ!」だが内心では痛くてたまらなかった。胸がえぐられるほどの痛みだった。もし本当に家督を継いでいればまだしも、実際はその権限すらない。そんなふうに悩んでいると、そばにいた陽子が突然声を上げた。「わあ、パパから生活費が振り込まれた!あとでアクセサリー買いに行こうっと!」それを聞いた英明は思わず声を上げた。「父さんがお前に生活費を振り込んだ?じゃあ俺のは?」「知らないわ。パパ、兄さんには送ってないの?」陽子は首をかしげ、疑わしそうな顔をした。英明は慌ててスマホを取り出し、何度も画面を更新したが、口座の残高は一向に増えない。
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