真奈は甘くほほえみ、両手を黒澤に差し出した。黒澤は真奈をお姫さまのように抱き上げる。「ウェディングドレス!ウェディングドレス!」伊藤が慌てて後ろから追いかけた。黒澤おじいさんが用意したトレーン付きのウェディングドレスはあまりにも扱いが厄介で、ずっと誰かが裾を持ち上げていなければならない。「待ってよ!」幸江もスカートをつまみ上げ、福本陽子の手を引いて階段を下りていく。福本英明も慌ててあとを追い、白石は呆れたように首を振った。なんとも賑やかな結婚式だ。黒澤の車は見事なもので、注目の的となる中、黒澤は真奈を抱いてかぼちゃの馬車に乗り込んだ。真奈は馬車の前に立つ二頭の白馬を見て、思わず言った。「遼介、本気なの?」「おじいさんの用意だ」「……ちょっと恥ずかしい」かぼちゃの馬車に白馬、おとぎ話のお城……アンデルセンの物語?まさか黒澤おじいさん、あの歳でこんなに童心を忘れていないなんて!真奈はもう苦笑するしかなかった。ここまで来た以上、腹をくくって最後までやり切るしかない。「いやあ、おじいさん、ほんとすごいよ。童話の本をそのまま再現してるじゃない」幸江が乗ったのは人力車だったが、特大の豪華仕様だ。伊藤は幸江の隣に腰を下ろし、にやりと笑って言った。「どう?気に入った?」「悪くないわ、斬新で、とっても気に入った!」伊藤は幸江がうれしそうに笑う様子を見つめながら言った。「じゃあ……俺たちの結婚式でも、これを使おうか?」その言葉を聞いた瞬間、幸江の頬が一気に赤く染まった。彼女は伊藤の目を見られず、口ごもりながら言った。「風が強くて聞こえないわ!もうしゃべらないで!」伊藤はその一言に、持てる勇気をすべて使い切っていた。幸江がとぼけているのを見て、それ以上は何も言えず、下手なことを口にして彼女を怒らせまいと黙り込んだ。城の外では、招待客たちがすでに揃っていた。歓声と笑い声の中、真奈は黒澤に支えられてかぼちゃの馬車から降り立つ。人ごみの中に立つ黒澤おじいさんは、その光景を見て思わず目頭を熱くした。まさか自分がこんなに長生きして、孫の結婚式まで見届けられるとは……もう思い残すことはない。「見て!あれ、佐藤さんじゃない?」「佐藤さんが歩いてる?こ、これは奇跡だ!」周囲がどよめき、真奈もつ
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