All Chapters of 離婚協議の後、妻は電撃再婚した: Chapter 1091 - Chapter 1100

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第1091話

真奈は甘くほほえみ、両手を黒澤に差し出した。黒澤は真奈をお姫さまのように抱き上げる。「ウェディングドレス!ウェディングドレス!」伊藤が慌てて後ろから追いかけた。黒澤おじいさんが用意したトレーン付きのウェディングドレスはあまりにも扱いが厄介で、ずっと誰かが裾を持ち上げていなければならない。「待ってよ!」幸江もスカートをつまみ上げ、福本陽子の手を引いて階段を下りていく。福本英明も慌ててあとを追い、白石は呆れたように首を振った。なんとも賑やかな結婚式だ。黒澤の車は見事なもので、注目の的となる中、黒澤は真奈を抱いてかぼちゃの馬車に乗り込んだ。真奈は馬車の前に立つ二頭の白馬を見て、思わず言った。「遼介、本気なの?」「おじいさんの用意だ」「……ちょっと恥ずかしい」かぼちゃの馬車に白馬、おとぎ話のお城……アンデルセンの物語?まさか黒澤おじいさん、あの歳でこんなに童心を忘れていないなんて!真奈はもう苦笑するしかなかった。ここまで来た以上、腹をくくって最後までやり切るしかない。「いやあ、おじいさん、ほんとすごいよ。童話の本をそのまま再現してるじゃない」幸江が乗ったのは人力車だったが、特大の豪華仕様だ。伊藤は幸江の隣に腰を下ろし、にやりと笑って言った。「どう?気に入った?」「悪くないわ、斬新で、とっても気に入った!」伊藤は幸江がうれしそうに笑う様子を見つめながら言った。「じゃあ……俺たちの結婚式でも、これを使おうか?」その言葉を聞いた瞬間、幸江の頬が一気に赤く染まった。彼女は伊藤の目を見られず、口ごもりながら言った。「風が強くて聞こえないわ!もうしゃべらないで!」伊藤はその一言に、持てる勇気をすべて使い切っていた。幸江がとぼけているのを見て、それ以上は何も言えず、下手なことを口にして彼女を怒らせまいと黙り込んだ。城の外では、招待客たちがすでに揃っていた。歓声と笑い声の中、真奈は黒澤に支えられてかぼちゃの馬車から降り立つ。人ごみの中に立つ黒澤おじいさんは、その光景を見て思わず目頭を熱くした。まさか自分がこんなに長生きして、孫の結婚式まで見届けられるとは……もう思い残すことはない。「見て!あれ、佐藤さんじゃない?」「佐藤さんが歩いてる?こ、これは奇跡だ!」周囲がどよめき、真奈もつ
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第1092話

伊藤が言った。「佐藤さんが贈ったプレゼントがどんなものか、本当に気になるな。今夜のプレゼント開封、俺も混ぜてくれ!」「俺も!俺も気になる!」福本英明も興味津々で身を乗り出す。福本陽子も手を挙げて叫んだ。「私も入れて!」幸江は三人の頭をぺしぺし叩きながら言った。「何を見ようとしてるの?新婚初夜よ!まさか冷やかしに行くつもり?」三人は頭をさすりながら肩をすくめ、それ以上は何も言えなくなった。「早く裏に行きなさい!もうすぐ招待客が席に着くわ。きちんと整えて、いよいよ式のメインイベントが始まるんだから!」幸江は福本陽子を連れて真奈を舞台裏へ送り、新郎新婦の到着を確認すると、招待客たちも次々と席へ戻っていった。黒澤家はもともと親族が少なく、瀬川家にも親戚はもういない。そのため主賓席には黒澤おじいさんのほか、佐藤茂、伊藤、幸江、白石、そして人数合わせで福本英明と福本陽子が座ることになった。福本陽子はまるで宴会のような豪勢なテーブルを見つめ、小声で尋ねた。「お城の中の結婚式って、普通は教会で神父さまに誓うものじゃないの?これって和式でも西洋式でもないし、中途半端じゃない?」「俺に聞くなよ、知るわけないだろ」福本英明も首をかしげた。いったい誰の趣味なんだ、これは。こんなに大きなステージ、このあとコンサートでも開くつもりなのか?そう思った瞬間、舞台の照明がぱっと点き、当代きっての歌姫が登場。情感たっぷりのラブソングを熱唱しはじめた。福本英明と福本陽子は思わず息をのんだ。なんて衝撃的なオープニング!そのころ、城の外に立つ立花は少し遅れて到着し、中から響く華やかな歌声を耳にして、思わず眉をひそめた。まるで場所を間違えたかのようだ。立花はそばの馬場を見て尋ねた。「ここ……結婚式をしてるんだよな?」「……住所は合ってます。さっきまで中はすごく賑やかでしたけど」確かに車で来る途中、大勢の人を見かけたはずなのに。どうしてほんの少しの間に、中がコンサート会場みたいになってるんだ?立花は深く息を吐き、眉間に皺を寄せた。真奈の結婚式、いったいどんな趣味をしてるんだ?「中に入ってからだ」「はい、ボス」立花と馬場が城の扉を押し開けて中へ入ると、四方八方から客たちの視線が一斉に入口へ向けられた。立花が姿を現し
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第1093話

黒澤おじいさんは深く息をつき、気持ちを落ち着けた。どうせまた、遼介が招待状を渡したに違いない。せっかくのめでたい日に、あの立花を呼ぶなんて、どういう了見だ?以前から立花の顔を見るたびに、あの若造は何か悪いことをしそうな面構えだと思っていた。「旦那様、今日はお祝いの日です。せっかく祝福に来てくださった方を追い返すのは、さすがに縁起が悪うございますよ」「そうですとも、旦那様。ここは立花社長にも一杯お酒を差し上げてはいかがでしょう」周囲の言葉に押され、黒澤おじいさんも、せっかくの晴れやかな日に立花に水を差されてはかなわんと思い、結局それ以上は何も言わなかった。黒澤おじいさんの許しが出ると、立花を囲んでいた警備員たちはすぐに下がった。「立花社長、お席はこちらでございます」執事が前に出て案内すると、立花は軽く周囲を見渡した。その視線を受け、周りの商人たちはまるで猫に見つかった鼠のように、慌てて目をそらし距離を取った。やがて立花は周囲を見回し、黒澤おじいさんの席を指さして言った。「俺はあそこに座る」「立花社長、あちらは主賓席で、ご親族以外はご着席いただけません」「白石は親族か?伊藤は該当するのか?幸江はただの遠縁の親戚だが?それに福本英明と福本陽子が、いつから黒澤家の親戚になったんだ?」立花はまくし立て、最後には無頼な口調で恫喝した。「この席が気に入った。主賓席に座らせろ。さもなくば手下を呼んでこの宴をぶち壊すぞ。どっちにする?」執事は立花の手口に参り、やむなく立花を主賓席へ案内した。「なぜ立花がここに座っているの?我慢できないわ!」福本陽子は立花をまともに見ようともしなかった。立花は冷ややかに福本陽子を一瞥して言った。「お嬢様、口を閉じた方がいい。さもないと針で縫い付けてやる」「な、何……」福本陽子が怒りを爆発させようとしたところを、福本英明が押さえつけた。「その短気、少しは抑えられないのか。ここは洛城だ、海外じゃない。立花の縄張りだぞ、生き埋めにされても文句は言えないぞ?」「でも……」「ご飯、ご飯!」福本英明は気まずい空気を和らげようと、慌てて口を開いた。「昼食はいつ出るんだ?もう腹ペコだ!」その不自然な様子が、立花の注意を引いた。かつて福本英明が手下を率いて立花グループの会場を潰し
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第1094話

実は、さっき少しでも確認していれば、この招待状が彼ら宛てではないことはすぐにわかったはずだった。だが幸い、黒澤家は騒ぎを大きくする気はなく、そのまま彼らを中へ通したのだった。同じころ――招待状を奪われたある社長が、冷たい風の中で涙をぬぐいながら去っていった。到着がほんの少し遅れただけで、立花グループの社長に招待状を横取りされてしまったのだ。社長なのに、他人のものを奪うなんて……人でなしにもほどがある!一方その頃。真奈は舞台裏で椅子に腰を下ろし、メイクアップアーティストが化粧の手直しをしていた。仕上がりに問題がないのを確認すると、そばにいた幸江が声をかけた。「司会が教えた流れ、ちゃんと覚えた?原稿、もう一度見ておく?」鏡越しに幸江のそわそわした様子が見えて、真奈は思わず笑った。「美琴さん、今日は私の結婚式なのに、なんであなたの方が緊張してるの?」「わ、私だって緊張するのよ!」幸江は言った。「だって私、今まで一度もブライズメイドなんてやったことないのよ。もしステージで何か間違えたらどうしよう?」「大丈夫よ、ブライズメイドは喋る必要なんてないんだから!」その時、福本英明がいつの間にか入ってきていた。真奈が振り返ると、福本兄妹の姿が見えた。幸江は言った。「どうしたの?主賓席でご飯をいただくって言ってなかった?」福本陽子が言った。「本当は食事するつもりだったんだけど、兄さんが食欲ないって言うのよ」「どうして?」幸江はますます首をかしげた。福本英明の食欲は牛並みで、食べられないなんてありえない。各テーブル二十四品の料理でも、彼の胃の隙間を埋めるには足りないんじゃないかと心配していたほどだ。福本英明は口ごもりながら言った。「食欲がないって言ってるだろ!いちいち理由なんて聞くなよ」「立花のせいでしょ?きっと兄さんも私と同じで、あの嫌な立花の顔を見ると食欲がなくなるのよ!」それを聞いて、真奈は目を瞬かせた。「立花が……来てるの?」「そうよ、招待状を持ってたらしくて、それで入ってきたの」福本陽子は不満そうに言った。「瀬川、あなたと黒澤もどうしてわざわざ立花なんかに招待状を送ったの?あの嫌な奴が来たせいで、コンサートも楽しめなかったんだから!」「コンサート……?」真奈の笑顔がぴたりと凍りついた。
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第1095話

幸江が興奮して声を上げた。「入場よ、入場!ついに入場だわ!」そう言いながら、真奈の腕を支えて立ち上がらせる。福本陽子も突然そわそわと緊張しはじめた。「結婚式が始まるの?じゃあ私は何をすればいいの?」「私たちは花嫁の両側を歩けばいいの。ドレスの裾はフラワーガールが持ってくれるから心配いらないわ」幸江がそう言っていると、ちょうどその時、入り口から可愛らしいフラワーガールとフラワーボーイが扉を押して入ってきた。ふわふわした小さな姿に、幸江は思わず顔をほころばせ、胸がときめいた。「まあ、どこの可愛い子たちなの?おじいさん、なんて気が利くの!」フラワーガールとフラワーボーイは、まるで人形のように愛らしい。幸江がつい手を伸ばそうとした瞬間、フラワーガールがその手をぱしっと払いのけ、きりっとした表情で言った。「おばさん、私のファンデーションが落ちちゃうでしょ!」「ファンデーション?」幸江はぽかんとした。こんなに小さな子がファンデーションなんて言葉を知ってるの?……いや、ちょっと待って?!今、自分のことおばさんって言わなかった!?幸江が口を開く前に、フラワーボーイがきっぱりと言った。「おばさん、僕たちのお仕事の邪魔をしないでください」そう言うと、二人は真奈の後ろに回り、丁寧にドレスの裾を持ち上げた。おばさん!?「このガキども……あんたたち――!」幸江が怒鳴ろうとしたその瞬間、福本陽子が彼女の腕をつかんで言った。「もう入場の時間よ。この子たちを泣かせたら、誰が瀬川のドレスを持つの?」幸江はそれもそうだと思い、最後に二人の子供に向かって舌を出した。「式が終わったら、ちゃんとお説教してやるんだからね!」「ゴホッ、ゴホッ!」そばにいた執事が軽く咳払いをしてから、そっと幸江の耳元で言った。「幸江様、このお二人はプロのフラワーガールとフラワーボーイでございます。旦那様が高額でお招きになった方々ですので、どうかお静まりくださいませ」「プロのフラワーガールとフラワーボーイ……?」幸江は思わず目を丸くした。自分はもう世の中のことを大抵知っていると思っていた。けれど今日の結婚式を見て、ようやく思い知らされた。この世界は広く、まだ知らないことが山ほどあるのだと。たとえば、目の前のフラワーガールとフラワーボーイのように
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第1096話

メインテーブルに座っていた立花は酒を一口飲み、眉をひそめて尋ねた。「白石と瀬川はどんな関係だ?どうして白石が新婦の身内として立っているんだ?」「おそらく上司と部下の関係だけだと思います」それを聞いて、立花はようやく手にしていたグラスを置き、「まあ、そうだろうな。瀬川家にはもう誰もいないし、刑務所にいる瀬川賢治を連れ出すわけにもいかないからな」と言った。「ボスのおっしゃる通りです」会場内の伴奏の音が大きく、立花は鼓膜が破れそうだと感じていた。「この結婚式をプロデュースしたのはいったい誰だ?どのウェディングプランナーだ?」「それは……分かりません」立花は深く息をついた。もしこの結婚式の新郎新婦の顔がなければ、きっと踵を返していたに違いない。「黒澤さん、あなたはここにいる瀬川さんを、健やかなる時も、さらに健やかなる時も、富める時も、さらに富める時も妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」「誓います」「瀬川さん、あなたはここにいる黒澤さんを、健やかなる時も、さらに健やかなる時も、富める時も、さらに富める時も夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」「誓います」真奈と黒澤の返答を聞いた瞬間、会場は雷のような拍手に包まれた。その時、少し離れた場所から、可愛いスタイをつけたゴールデンレトリバーが真奈の方へ駆けてきた。リードはつけていなかったが、暁はとてもお利口で、くわえていたリングケースを黒澤の手にそっと置くと、ピンクの舌を出してうれしそうに笑った。数日見ないうちに、暁はずいぶん大きくなり、もう成犬のようだった。真奈は身をかがめ、こらえていた涙がとうとうあふれた。彼女は暁の頭を撫でながら言った。「暁、いい子ね……本当にいい子だよ」暁はうれしそうに真奈の手のひらに顔をすり寄せると、そのまま黒澤の手にあるリングケースをじっと見つめた。黒澤は期待を裏切らず、そのケースを静かに開いた。中には、きらめくダイヤの指輪が収められていた。スクエアカットのダイヤは美しく、淡いピンク色に輝いていた。黒澤はその指輪をゆっくりと真奈の薬指にはめた。今、真奈の手には、あの深い青の婚約指輪だけでなく、ふたりの結婚を象徴するこの淡いピンクの指輪も輝いている。多くの人は、ダイヤの指輪が女性にとってどんな意味を持つのかを
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第1097話

「早く早く!披露宴用のドレス!披露宴用のドレスはどこ?」幸江は真奈のために着替え用のドレスを探して慌てていたが、更衣室に着いたところでスタッフが白いドレスを差し出した。幸江はよく確認もせずにそれを真奈に渡そうとしたが、スタッフが慌てて声を上げた。「幸江さん!それは奥様のものではなく、幸江さんのです!」「私の?ブライズメイドも着替えるの?」その時、福本陽子が慌てて駆けつけ、ブライズメイドにも衣装替えがあると聞くとすぐに言った。「ブライズメイドも着替えるの?じゃあ私のは?」「申し訳ありません、福本さん。こちらは幸江さんの分です」福本陽子は不満そうに言った。「同じブライズメイドなのに、どうして幸江は着替えられて私はダメなの?納得いかないわ!私も着替える!」福本陽子までドレスを着替えると言い出し、スタッフは明らかに困惑していた。どうしよう……!もし伊藤さんから頼まれた任務を果たせなかったら、自分のキャリアはここで終わってしまう!「いいわ、着替えて。あなたの分は私のところにあるから」真奈のその一言で、スタッフはまるで天から光が差し込んだかのように顔を輝かせた。うう……黒澤夫人、なんて優しいの……!真奈は白いシフォンのドレスを福本陽子に手渡し、「一緒に着替えよう。これ、着るのがちょっと大変だから」と言った。「まあ、本来この私が誰かと一緒に着替えるなんてあり得ないけど……今日はあなたが花嫁だから、特別に付き合ってあげるわ!」福本陽子はそう言いながら真奈と一緒に更衣室へ入った。それを見た幸江は明らかに不満そうにしており、自分もついて行こうとしたが、スタッフに再び止められた。「幸江さん、更衣室はあまり広くありませんので、こちらでお着替えください」その言葉を聞き、幸江は不機嫌ながらも、自分のブライズメイドドレスを持って隣の更衣室へ向かった。「変ね……どうして私のブライズメイドドレスは彼女のと違うの?」さっきまで全く同じものを着ていたのに!真奈は福本陽子の一本気な様子を見て、そっと耳元で何かを囁いた。それを聞いた福本陽子は、はっとしてようやく事情を悟った。なるほど!宴の席で、伊藤は立て続けに酒をあおっていた。傍らの福本英明が不思議そうに言った。「おい、今日結婚するのはお前じゃないだろ?そんなに元気あるなら
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第1098話

彼は怖くないのか?ウイスキーが運ばれてくると、伊藤はそれを一気に飲み干した。その狼狽ぶりを見て、向かいの立花が鼻で笑った。「腰抜けが」「な、なんだと?誰が腰抜けだって!?」伊藤は突然、酒の勢いで気が大きくなり、立花を指さして言った。「遼介と古い付き合いだからって、俺がお前を殴れないと思うなよ!言っとくが、遼介の一番の親友はこの俺だ!」「誰が黒澤のことでお前と張り合うか。殴りたきゃ殴ってみろよ」「このっ……!」伊藤が手を出そうとしたところで、福本英明が慌てて止めに入った。「今日は黒澤と瀬川の大事な日なんだから、騒ぎを起こすなよ!」「……それもそうだな」伊藤は急にしゅんとなり、悔しそうに言った。「黒澤みたいな石頭男でさえ花咲かせたのに、俺はまだ実らねぇなんて……どういうことだよ!」伊藤がしょんぼりしているのを見て、福本英明はどう慰めればいいのか分からず、とりあえず背中を軽く叩いた。ところが、それがいけなかった。叩いた瞬間――伊藤は盛大に吐いた。「おえっ!」という声とともに、強烈な酒の臭いが一気にあたりに充満した。「おえええっ!」もともと臭いに弱い福本英明は、全身がねっとりと濡れた感覚に襲われ、胃の奥がぐるりとひっくり返るような気持ち悪さに耐えきれず、思わず吐きそうになった。「伊藤!なにしてんだよ!」福本英明は嫌そうに伊藤を押しのけた。黒澤と真奈のまわりには、どうしてこうも変な連中ばかり集まるんだ。まったく、奇人変人の寄せ集めだ!「す、すまん……すまん!」伊藤はふらつきながら謝り続け、立花はそんな伊藤と福本英明の様子を見て、黙ってため息をつきながら白い目を向けた。あの年寄りを除けば、ほんと馬鹿ばっかりのテーブルだ。「来た来た!新郎新婦が乾杯に回ってきたぞ!」誰かが声を上げ、みんなが一斉にそちらを見た。黒澤と真奈が披露宴の衣装に着替え、招待客たちに順々にグラスを掲げていた。最初に来たのは当然、主賓席だ。真奈は福本英明の服についた嘔吐物と、顔を真っ赤にした伊藤を一目で見て、何が起きたかを悟った。しかし真奈はそれを指摘せず、何事もなかったかのように振る舞い、黒澤とともに黒澤おじいさんに茶を差し出した。「おじいさん、お茶をどうぞ」真奈は手にしていた茶碗を黒澤おじいさんに差し出し
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第1099話

「洛城は立花社長の縄張りだから、私たちはやっぱり立花社長に一杯ご挨拶すべきだよね。そうでなければ、こんな素敵な場所で結婚式なんて挙げられなかったもの」真奈は横目で黒澤をちらりと見た。黒澤は何のためらいもなく、素直にテーブルのグラスを取り上げ、立花の手にある杯と軽く合わせた。黒澤がぐいっと酒を飲み干すのを見て、立花も同じように一息で飲み干した。その様子に、真奈はただ微笑んだだけだった。彼女は主賓席の面々をぐるりと見渡したが、佐藤茂の姿だけが見えなかった。「美琴さん、佐藤さんはどこ?」真奈が声をひそめて尋ねると、幸江もきょろきょろと周囲を見回し、「会場に入ったきり姿が見えないのよ。どこかに行ったのかしら?もしかして、用事で先に帰ったのかも」と言った。すると、隣にいた福本英明が口を挟んだ。「こんな高い祝いの品を贈っておきながら、乾杯の一杯も飲まずに帰るなんて……あの佐藤さん、ちょっと変わってるんじゃないか?」幸江は福本英明を蹴飛ばしながら言った。「ふざけんな!佐藤家の人にそんなことが聞こえたら、あなたぶん殴られて死ぬわよ?」「彼らにぶん殴られて死ぬ前に、先にお前に殴られたよ!」と福本英明はぶつぶつ呟いた。だってそうだろう!めでたい日に、佐藤茂が顔を出してすぐ帰っちゃうんだから。どういう理屈だよ。真奈は言った。「大丈夫よ、佐藤さんはもともとお忙しい方だし。長年海城を離れたことがなかったのに、今回わざわざ来てくれただけで私は十分感謝しているわ」真奈が佐藤茂のために特別に用意していた主賓席。空いたままのその席を見つめながら、真奈の胸の奥には、やはり少しばかりの寂しさが残った。長い時間を共に過ごしてきた佐藤茂に対して、彼女の中ではもう単なる仕事の相手という感覚ではなくなっていたのだ。身分の違いを知りながら、それでも心の中ではすでに佐藤茂を信頼できる仲間だと思っていた。「はいはい、さあ乾杯しよう!俺にも一杯注いでくれよ!」伊藤は我先にと酒を飲もうとし、福本英明はただ汚れた服を早く着替えたくて仕方がなかった。会場の片隅で。佐藤茂は壁に片手をつき、隣にいた青山がもう一方の腕を支えていた。リハビリを始めてからというもの、佐藤茂は毎日欠かさず歩行を続けていた。今ではほとんど普通の人と変わらない歩き方ができるよう
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第1100話

伊藤の声があまりにも大きく、周囲が一瞬しんと静まり返った。幸江は思わず固まった。「け、結婚……?」伊藤も同じように呆然とした。もともと言うつもりだったのは「付き合ってほしい」という言葉だったのに、酔いが回って本音がそのまま口からこぼれてしまったのだ。慌てて言い直そうとしたその時、周囲からどっと歓声が上がった。「結婚!結婚!結婚!」「わ、私……」二人は一瞬にして気まずい空気に包まれた。幸江は伊藤が差し出した指輪と、周囲の大騒ぎとを見比べ、顔を真っ赤にしながら慌てて言った。「今日は真奈と遼介の結婚式なのよ、何やってるの!早く立ちなさいってば!」「いやだ!承諾してくれないなら、俺は立たない!」酔いの勢いで駄々をこねる伊藤に、幸江はついに根負けした。仕方なく手を差し出し、「わかったわかった!承諾するから、もういいでしょ!早く立ちなさいよ!」と言った。幸江が承諾すると、伊藤は飛び上がらんばかりに喜び、すぐさま指輪を幸江の薬指にはめた。その様子を見ていた真奈は思わず吹き出しそうになり、「伊藤、それ違うって!プロポーズを受けただけで、今すぐ結婚式するって意味じゃないわよ!」と笑いながら言った。顔を真っ赤にした伊藤は慌てて指輪を外そうとしたが、幸江は急いでその場を離れようとしており、外す暇もなく伊藤の腕を引いて壇上から駆け下りた。周囲の歓声がまだ鳴りやまない中、幸江は伊藤を会場の隅に連れて行き、呆れたように言った。「一体誰にこんなプロポーズの仕方教わったのよ!私はまだあなたの彼女でもないのに!それなのにいきなり結婚なんて言うなんて、あなた……」幸江が言葉を詰まらせたその瞬間、伊藤は突然彼女の後頭部を押さえ、唇を重ねた。そのキスに、幸江の頭の中が一瞬で真っ白になった。言おうとしていた言葉も、喉の奥でそのまま消えた。しばらくして、伊藤はようやく幸江を離し、真剣な表情で言った。「もう承諾したんだから、後から取り消すなんてなしだからな」「わ、私は……」幸江はつばを飲み込み、伊藤を押しのけると、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに言った。「今は見逃してあげるけど……帰ったら覚悟してなさいよ!」一方、真奈は二人の様子を見て、心の底から嬉しくなった。その時、視線の端に会場の隅の人影が映る。隣で黒澤がまだ乾杯の挨拶をしていたが、真奈
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