桜井が言った。「ボスは昨日、改めて考え直されまして――あの服はやはり不適切とのことで、急きょ馬場さんに別の衣装を用意させました。瀬川さん、よろしければご試着を」「わかったわ」真奈は無言で立ち上がり、羽織っていた上着を脱ぐと、そのまま差し出された新しいドレスに袖を通した。それは真っ白な、装飾の少ないごく質素なデザインだった。やや深めにスリットが入っている以外、とりたてて肌の露出もなく、控えめな印象さえあった。こんな質素なドレスを着ていては、間違いなく一番売れないディーラーだろう。馬場、本当に陰険だ。新しいドレスを身にまとい、真奈は不機嫌さを隠そうともせず、足早に部屋を出ていった。その姿を目にした立花は、思わず足を止めた。白いドレスは特別仕立てのもので、彼女のくびれた腰をぴたりと包み込み、そのしなやかなラインを際立たせていた。細い腰つきは、手のひらにすっぽりと収まりそうで、デザイン自体は露骨なほど官能的だったはずなのに、彼女が着ると、それが一転して気品と優雅さをまとって見えるのだった。「……よく似合ってるじゃないか。ただ、お前の顔がいまひとつ浮かないようだな」立花がわざと皮肉を込めて言ってきたのを察して、真奈はむっとした表情で口を開いた。「こんな格好でディーラーする人なんて、見たことある?馬場さんって、私に喧嘩売ってるの?こんな服着せられて、お客が寄ってくると思う?」彼女の不満を受けて、立花は感情を込めることなく、淡々と返した。「その服は、俺が選んだ」「……」その言葉を聞いた瞬間、真奈はわずかに目を見開き、思わず隣の桜井に視線を向けた。桜井の顔にも、ほんの一瞬だが動揺の色が浮かんだ。桜井もこの服が立花自らの手で選ばれたものだとは知らなかった。今さらどうこう言っても仕方がない。真奈は取り繕うのも面倒くさくなり、適当に頷いて言った。「……さすがは立花社長。お目が高いね。とても気に入ったよ」真奈の顔には、どう見ても「気に入らない」と書いてあった。だが、それでも口ではきちんとご機嫌取りの言葉を並べていた。立花は、そんな彼女と口論する気もないのか、ひと言だけ投げて階段を下りていった。「行くぞ」真奈はハイヒールを鳴らしながら、急ぎ足でその背中を追いかける。だが、彼は待とうともしない。むしろ歩調をわざと早めているよう
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