翔太はそのまま電話を切り、同時に身をひねって彼女が飛び込んでくる体を避けた。部屋はカーテンを引いてあったので、光は全く差し込まなかった。暗闇の中で美羽は空を切り、足元でカーペットの端につまずきよろめいた。まだ体勢を整える前に、翔太が背後から覆いかぶさり、彼女をそのまま壁へ押し付け、顔を壁に向けたまま抑え込んだ。まるで猫を弄ぶように、彼女を自在に翻弄している!美羽の両手は背後で制され、呼吸が荒くなるほど怒りに震え、思わず罵声を浴びせた。「翔太!今すぐ私の部屋から出ていって!じゃないと――」「じゃないと?」酒に麻痺したような冷たい声が返った。「じゃないとどうする?もし本当に俺が何かしたら、君は騒ぎ立てる勇気があるのか?」美羽の全身が凍りついた。「当ててみようか。悠真は君に何を約束した?慶太がプロジェクトに加わって相川グループの発言力を拡大、その見返りにプロジェクト終了後、君を相川グループに入れる。違うか?じゃあ逆に、俺が相川グループをこのプロジェクトから叩き出す可能性、君は考えたことがあるか?君のせいでプロジェクトを失った相川グループが、本当に君を受け入れると思うか?その唯一の仕事すら、なくなるかもしれないぞ?」――脅迫。これは隠そうともしない、権力を振りかざした脅迫!「で、何がしたいわけ?」美羽は逆に笑い出した。「枕営業?私があんたを拒んだら相川グループを排除して、私から仕事を奪うつもり?」翔太は彼女の手をさらに強く握った。「俺をそんなに下劣だと言うのか?」「下劣じゃなきゃ、今あんたは何をしてるの!」「下劣といえばな……俺なんか、君の相川教授にはまだまだ及ばないな」「自分が腐ってるからって、他人まで巻き込むな!」「随分と庇うな――彼は婚約者がいるくせに、君と関係を持とうとしてる。要するに、君を情婦に仕立て上げようとしてるんだ。あいつが腐ってないとでも?最初から色仕掛けで近づいてきただけだろ」「私と相川教授のことを、あんたが口出しする資格はない!翔太、あんたは碧雲の社長で、夜月家の一人息子なんでしょ。女を無理やりどうにかするなんて、それこそ身分を落とす行為じゃない!」彼より、自分はずっと弱い。美羽はとりあえず言葉で矛を収めたが、胸の奥では怒りが風船のように膨らみ続けていた。―
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