朋美の手術前夜、美羽はきっと眠れないと思っていた。だがまさかまぶたを閉じた後、次に目を開けた時にはすでに翌朝7時だった。朋美の手術は8時から。彼女は折りたたみベッドを片づけ、病院の洗面所で身支度を整えると、ICUへ戻った。ほどなくして、雪乃と樹もやって来た。8時きっかりに、医療スタッフが朋美を手術室へ運び込み、「手術中」の赤いランプが点灯した。その瞬間から、美羽の心臓は張り詰めたままだった。手術が失敗したらどうしよう。予期せぬ事態が起きたらどうしよう。自分が署名して朋美を手術台に送ったことが、逆に母を害する結果になったら……今の朋美の状態では、手術をしなければ命はすぐ尽きてしまうことを、たとえ頭では理解していても、考えずにはいられなかった。雪乃もまた緊張し、ついには泣き出してしまった。樹が彼女を抱き寄せて言った。「大丈夫だよ、きっと問題ないさ。だって来ているのは海外から呼ばれた医師たちだ。間違いなく成功する。そうだろう、美羽?」美羽も信じたい。翔太が莫大な資金を投じて呼び寄せた医療チームならきっと大丈夫だと。だが同時に知っている。感染の確率が一割はあるということを。彼女はただ、その一割に当たりたくなかった。途中、美羽の携帯に翔太からのメッセージが届いた。【手術は始まった?】【うん】と返したあと、少し素っ気なかったかと気になり、朋美が完全に危険を脱して目を覚ますまでは、彼を安心させるべきだと思い直し、【ちょっと緊張してる。終わったらまた連絡するね。】と付け加えた。翔太からの返信はなかった。彼女も気にせず、画面をロックした。開始前に医師から手術の所要時間は4、5時間だと聞いたのに、6時間経っても手術室の扉は開かれなかった。雪乃がつぶやいた。「なんでこんなに長いの……?」「他の患者がいるんじゃないかな。俺が盲腸の手術をした時も、何人か一緒に待機室に入ったよ」と樹がなだめた。雪乃は涙声で反論した。「でも、この海外の先生たちはお母さんの手術だけをするんじゃなかったの?」「じゃあ、麻酔が切れるまで待ってるのかも……」中の様子は誰にも分からなかった。美羽の不安はますます募っていった。7時間を過ぎ、もう我慢できずナースステーションへ行き、尋ねた。「すみません、ICUの真田患者の手術、どうしてまだ終わ
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