翔太は説明しなかった。彼は人に説明するような男ではない。二階の手すりの側に立ち、下の大きく開いた門へと視線を延ばした。外は漆黒に包まれていた。夜はもう深い。彼は横を向いて言った。「休みに行って。緒方家の部屋を用意してある」「あなたは?」と結意が咄嗟に問うた。翔太のまぶたが一瞬きゅっと沈んだ。感情を表には出さないが、彼が干渉されるのを好まないことは彼女にも分かっている。結意は唇を噛み、「つまり明日の朝、緒方夫人があなたの不在を疑えば、私はどう答えればいいの?」と続けた。「任せる」翔太は二、三歩歩いて振り返り、「奥さんは感情が不安定だ。明日は緒方夫人に、美羽が見つけた真犯人のことを伝えてくれ」と言った。結意の瞳がわずかに動いた――「美羽が見つけた真犯人」だと。確かに、美羽は自力で真犯人に辿り着いた面はある。だが先ほど玲奈の前で事件を分析したのは明らかに翔太の方だった。それなのに、彼はわざわざ「美羽が見つけた」と千代に伝えるよう促したのだ。結意は平静を装って答えた。「言い方は分かっている」翔太は階下へ降り、戸口に出ると、緒方家の庭にその女の姿はなかった。門番に尋ねた。「真田はタクシーで行ったのか?」使用人は丁寧に答えた。「真田さんは歩いて行かれました。こちらはタクシーが拾いにくくて」歩いて?こんな時間に、山を降りて歩くというのか。翔太は唇を結び、車に飛び乗った。そして、緒方家の屋敷から百メートルほど山の中腹で、ふらつきながら歩く彼女の姿を見つけた。彼はアクセルを踏み、車を彼女の脇に寄せてさっと停めた。美羽は緒方家から出てきたところで、冷たい風に頭が朦朧としており、車の接近に驚いて跳ね上がった。窓が開き、翔太の冷ややかで白い横顔が現れた。「乗れ」美羽は拒んだ。「ご面倒をおかけできません、夜月社長。私、タクシーで帰れます」「ここでタクシーが拾えるとでも?」と彼は返した。事実、拾えない。そもそも位置情報も取れない。美羽が来たときは金を上乗せして運転手に山上まで送らせたのだ。近くで位置登録できる場所は山麓だけ。美羽は息を吸い込み、冷たい空気と熱い胸の間で言った。「自分で山を下ります」どうしても乗らない――彼女は意地を張っていた。翔太はその、頑固でどうしようもない女を冷ややかに見
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