清美がようやく息をついたところで、内線電話が鳴り響いた。彼女の神経はまた一気に張り詰めた。「はい、社長!」「チケットを取れ。翠光市に行く」「……承知しました」清美は戸惑った。つい先ほど翠光市から戻ったばかりでは?考える暇もなく、翔太は電話を切るとそのまま社長室を出て行った。清美は慌てて後を追った。「手配しろ。翠光市支社を視察する」「承知しました」清美は頭を素早く働かせ、社長はしばらく翠光市に滞在するつもりだと結論づけた。「すぐに準備いたします」エレベーター前まで来ると、扉が開き、中にいた結意が一瞬驚いたように目を見張ったが、すぐに礼儀正しい笑みを浮かべた。「社長、これからお出かけですか?ほんの10分だけ、お時間をいただけませんか。ご報告したいことがあります」……その頃、美羽はもう雑念をすべて振り払い、仕事に集中していた。気づけば退勤時間までずっと仕事に追われていた。彼女はアシスタントと仕事の話をしながら階段を降りていった。アシスタントが「夜、ご一緒にご飯でもどうですか?」と誘ってきた。美羽は応じようとしたが、ふと視線の端に、ロビーの応接スペースに座る蒼生の姿を捉え、思わず足を止めた。アシスタントも気づいた。「あれ?霧島社長?来てるのに上がって行かないんですね?」美羽はわずかに眉を寄せ、さりげなく言った。「食事はまた今度にしましょう」アシスタントはすぐに何かを察し、にやりと笑った。「霧島社長、真田秘書が退勤するのを待ってるんですよね?」最近、美羽が花を毎日のように受け取っている。誰からか彼女は言わないが、同じオフィスの中でのこと、隠せるはずもなかった。蒼生が美羽を追っているのは、公然の秘密だった。アシスタントは羨望と好奇心を入り混ぜた口調でそそのかした。「霧島社長って、イケメンでお金持ちですし、それにすごく熱心ですよ。本気に決まってますって。真田秘書、こんな好機を逃したらもったいないですよ」美羽は淡々と答えた。「私と霧島社長の間には何の関係もありません。気をつけて帰ってね」「はあ……」アシスタントは素っ気なく返事すると、背を向けた瞬間、目をひそめて舌打ちした。わざとらしく言い方!霧島社長みたいな人に追われて、心の中で嬉しくないはずがない。絶対に、ちやほやされる感覚を楽しんでるに決まって
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