「凌央があなたのところにいないことくらい知ってるわ。だってさっき私のところに来て、今シャワーを浴びてるもの!」美咲の声には誇らしげな響きがあり、電話越しでもその喜びが伝わってきた。乃亜は眉を上げ、冷ややかに笑った。「凌央はたった今帰宅したところよ。どうしてあなたのところにいるのかしら?美咲、認めなさい。彼が愛しているのは私であって、あなたじゃないわ!」ちょっとした嫌味なお世辞くらい、誰だってできるものだ。凌央が今どこにいるかなんて、乃亜にはどうでもいいことだった。美咲は怒りから顔から血の気が引き、爪が手のひらに食い込んだ。あの二人は明日離婚するはずじゃなかったのか? なぜ今夜も一緒にいるんだ!まさか裕之は彼女を騙していた?実際は二人の間に離婚の話なんてなかったのかもしれない!「もし彼が私を愛していないなら、どうして桜華市の全ての道に同じ種類の花を飾らせたの? もし愛していないなら、庭に私の好きな花を植えたり、私が好きだからって同じお茶を飲み始めたりしないわよね!」「それに、あなたたちの新婚初夜のこと覚えてる? 私が足を挫いたと電話したら、彼は新居にあなたを置き去りにして、一晩中私の世話をしてくれたのよ!」「そしてきっとあなたはまだ知らないでしょうね。彼が最近、美容院とリバービューマンション、それに車も贈ってくれたのよ。桜華法律事務所を譲るとまで言ってくれたわ!」彼女は自慢していた。だが心の奥では、これら全てが凌央の乃亜への罪滅ぼしに過ぎないと痛いほどわかっていた。彼女はそんなもの要らなかった。彼女はただ凌央が欲しかったのだ。「私は全て録音したわ。離婚する時は、きちんと返品するのよ。だってそれらは私と凌央の夫婦共有財産なんだから!」以前なら、こんな美咲の言葉を聞いたら、乃亜は気を失いそうになっただろう。しかし今の彼女には、かつてない冷静さがあった。彼女の凌央への愛も、少しずつ冷めていった。今ではもう、心に波風すら立たない。本当に吹っ切れたのだ。美咲が何を言おうと、彼女を傷つけることはできなかった。「乃亜、あなたが3年前に凌央のベッドに潜り込み、おじい様に結婚を強要した時から、彼はあなたを心底嫌悪してたのよ!この3年間、さぞかし辛かったでしょうね?」美咲はゆっくりと言い放っ
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