Lahat ng Kabanata ng 男聖女は痛みを受け付けたくない: Kabanata 41 - Kabanata 50

62 Kabanata

第四十二話 夜の静寂の中で

◆◆◆◆◆ 屋敷の一室に、温かな灯火が揺れていた。 部屋は三室用意されていたが、万が一追手が来た際、即座に動けるように三人は一室に集まっている。 ソファーを寝具代わりにして、それぞれが体を休めていた。 部屋の隅には、食事を終えた食器が片付けられている。遥はその光景を見つめながら、ルイスの話を思い返していた。  --- ◇◇◇ 「隣国に向かう?」 ルイスの言葉に、遥は驚いたように目を見開いた。コナリーも静かに彼を見つめている。 「そうだ」 ルイスはテーブルの上に広げた地図を指さしながら、穏やかに続けた。 「魔王領へ直接向かうのは危険すぎる。追手をかわしながら魔王領の深部へ進むのは、現実的じゃない。あそこには魔物もいるし、戦いながら進むとなれば、俺たちの体力が持たない可能性もある」 遥は小さく息を呑んだ。 「だから、まずはエルデン王国へ向かう。姉のいる領地で体勢を整える」 「お姉さん……?」 遥が戸惑いながら尋ねると、ルイスは淡々と頷いた。 「ああ。俺の姉はエルデン王国の貴族に嫁いでいる。もともと、俺の立場が危うくなったときのために、そこへ逃げる計画はあった」 遥は驚きながらも、さらに問いかける。 「エルデン王国って……ルミエール王国と領土問題で揉めてる国だよね? そんな国に行って大丈夫なの?」 
last updateHuling Na-update : 2025-03-27
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第四十三話 再び繋がる朝

◆◆◆◆◆  窓の外は、まだ夜の気配を残していたが、東の空がわずかに白み始めていた。ロレンツォ伯の屋敷にある小さな客間では、三人が仮眠を取っていた。 毛布をかけた椅子とクッションを並べた簡素な寝床。火の落ちた暖炉が、ひんやりとした空気を室内に呼び込んでいる。 その一角で、コナリーは静かに目を覚ました。 彼の胸元には、遥が寄り添うようにくっついて眠っていた。無防備な寝顔で、ぎゅっとコナリーの服を握るその姿に、自然と表情がほころぶ。 (……愛おしい) 胸の奥に芽生えたその感情を静かに抱きながらも、コナリーは遥の髪をそっとなでた。 「……遥、そろそろ起きてください」 優しい声に、遥が目をぱちぱちと開けた。 「……ん……コナリー……?」 状況を思い出したのか、遥は飛び起きる。 「うわっ、ご、ごめん!」 「お気になさらず。ぐっすり眠っていたようでしたから」 遥は耳まで赤くしながらも、ふとコナリーの右手に目を留める。 「……ねえ、昨日の戦い。手、大丈夫だった?」 コナリーは少しだけ間を置き、静かに頷いた。 「問題はありません。けれど……かつてほど自在には動かせません。魔王討伐の終盤、王太子殿下の命で石化した魔王の体を拳で砕き続けた代償です。関節を痛め、今も強く握るのは難しい」 遥はその言葉に、胸が痛むのを感じた。 あのとき、自分が癒そうとしても――聖女の力が失われて、最後まで癒すことができ
last updateHuling Na-update : 2025-03-28
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第四十四話 祈りの朝、越境の刻

◆◆◆◆◆  朝霧に包まれた道を、二頭の馬が走っていた。 吐く息は白く、蹄が土を蹴る音だけが静かな大地に響いている。東の空は薄紅に染まり、山の稜線からようやく陽光が差し始めていた。 ルイスの前に座る遥は、目を細めて空を見上げていた。 「……綺麗……」 小さくこぼれた言葉に、ルイスはふっと口元を緩める。 「空を見る余裕があるなら安心だ」 「うん。久しぶりにこんな朝焼け見た気がする」 馬を走らせながら、遥は後ろからしっかり抱くルイスの腕のぬくもりを感じていた。ほんの少し、照れくさい。 ◇◇◇ 出発前、馬を整えながらルイスが言った。 「今日は俺が遥を乗せていく。昨夜、ずっと走ったコナリーの馬は休ませる」 「……なるほど。では、任せます」 コナリーは納得しながらも、ルイスと遥の背を見つめる目に、わずかに陰が差していた。 馬の背に遥を抱き上げたルイスは、少し強引に自分の前に座らせた。 「落ちるなよ」 「わっ、ちょ……もう少し優しく!」 「無理だな。揺れたら支えるから、遠慮なくもたれかかれ」 そんなやり取りのあと、二頭の馬はロレンツォ伯の屋敷を後にし、北西の隠された山道を進んでいた。 目指すは――エルデン王国との国境。  --- ◇◇◇&n
last updateHuling Na-update : 2025-03-30
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第四十五話 王の沈黙

◆◆◆◆◆ 濃い霧が、魔王領の山々を静かに覆っていた。 木々の間を縫うように、騎士団の列が進む。霧に濡れた岩肌は滑りやすく、馬たちの蹄がたびたび泥に沈む。 その先頭、黒馬に跨る男――王太子アドリアンは、険しい表情を浮かべたまま進み続けていた。 「……まだ見つからんのか」 鋭く低い問いに、背後の騎士が控えめに答える。 「はい、殿下。聖女の痕跡も、馬の足跡も見当たりません。このままでは兵の消耗が――」 「構わないーー進め!」 吐き捨てるような命令。だが、その声の奥に焦りが滲んでいた。 (どこへ消えた、ルイス……) 確かに、魔王領へ向かったはずだった。なのに、霧の奥には何の手がかりもない。 (国外……まさか、姉のもとへ?) その考えが脳裏をよぎるたび、アドリアンの胸は熱を帯びる怒りで満たされていく。 「必ず見つけ出す。聖女も、ルイスも……俺の手で終わらせる」 静かな誓いは、霧の中へと消えていった。 ◇◇◇ 同じ頃、王都の北塔―― 誰も近づかぬ古い塔の一室に、国王アレクシス・ド・ルミエールの姿があった。 かつて長女イリスが暮らしていた部屋。今は使われておらず、微かな陽光と、静けさだけが満ちている。 窓際に立ち、王は遠く霞む空を見つめ、誰に語るでもなく、ぽつりと呟いた。
last updateHuling Na-update : 2025-04-01
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第四十六話 姉の館にて

◆◆◆◆◆ 霧深い山道を抜けた先――朝の陽光が樹々の隙間から差し込み始めた頃、二頭の馬がゆるやかな丘を越えて現れたのは、森の奥にひっそりと建つ白亜の館だった。 白い石壁に蔦が這い、窓辺には季節の花が咲き、塔の屋根が空を仰いでいる。よく手入れされた庭には小道が通り、風に揺れる花々の香りがあたりを包む。騒がしい王都とはまるで異なる、静謐な気配と威厳を湛えた邸である。 「……すごい、立派な屋敷だな」 馬上の遥がぽつりと呟く。 「エルデン西領伯爵家の離れ館です。姉上はこちらで静かに暮らしておられる」 ルイスの声は穏やかで、どこか誇らしげでもあった。 「……ルミエール王国と言葉は同じなんだよな? 文字とか、話し方とかも……」 遥は聖女として多くの言語を理解できるとはいえ、異国の地で会話が通じるかはやはり不安だった。 「教会では、昔は一つの国だったって教わったけど……本当に?」 「本当さ。ルミエールとエルデンは、かつては一つの王国だった。分裂しても、言葉も文化もほとんど変わっていない。安心しろ、通じる」 ルイスの声に、遥はふっと安堵の息を漏らした。 館の前で馬を止めたそのとき、白い庭の奥からゆっくりと女性が歩み出てきた。 ドレスの裾が風に揺れ、陽光を受けて金茶の髪が淡くきらめく。整った面立ちと優雅な所作に、王族としての気品がにじみ出ていた。 「ルイス……!」 声は温かく、再会の喜びが滲んでいた。&nb
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第四十七話 古文書の部屋と忘れられた遺構

◆◆◆◆◆ 午後の陽射しが廊下を照らし、窓から差し込む光が壁に細く伸びていた。 「皆、こっち」 軽やかな足取りで先を行くノエルが、遥たち三人をそれぞれの部屋へと案内していく。 「空いてる部屋を整えておいたよ。日当たりもいいし、ちゃんと掃除も済んでる。……まあ、あんまり使ってなかった部屋だけどね」 言葉は簡素だが、丁寧に気を配っているのが伝わってくる。 「ありがとう、ノエル。助かるよ」 遥が微笑みながら礼を言うと、ノエルは少し照れたように笑い返した。 「うん。じゃあ、落ち着いたらまた広間に来て。僕もちょっと準備しておくね」 軽く手を振って、ノエルは静かにその場を離れた。 ◇◇◇ 昼前。四人は再び広間へと集まっていた。 窓から差し込む光はやや傾き、紅茶の香りが静かに漂う。 「さて……ここからどう動くかだな」 テーブル越しに、ルイスが真剣な声で口を開いた。 「アーシェと、その兄が封印された場所――“封印の地”がわからなければ、どうにも動けない」 遥が考え込むように続ける。 「魔王の記憶の中に出てきたあの場所……石の柱に囲まれた封印の地にアーシェの」 「王都の文献にも、それに近い地名や記録は見つかりませんでした。異能を封じるほどの場所ならば、もっと歴史に刻まれていてもおかしくないはずなのに」 
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第四十八話 古文書の部屋と忘れられた遺構

◆◆◆◆◆ 午後の陽射しが、やわらかに廊下を照らしていた。窓から差し込む光が、床に淡く影を落とし、風が揺らすカーテンが静かな空気を撫でている。 「こっちだよ」 ノエルが軽やかな足取りで先を行き、遥たち三人をそれぞれの部屋へと案内していく。 「陽当たりがよくて静かな部屋を選んだんだ。寝具も新しいし、今朝ちゃんと掃除もしたから、安心して使ってね」 さらりとした口調の中に、きちんと気配りが感じられる。 「ありがとう、ノエル。助かるよ」 遥が微笑むと、ノエルも少し頬を緩め、どこか照れたように目を伏せた。 「君にそう言ってもらえるなら、頑張った甲斐があるよ」 そんな言葉に、遥がふっと笑みを深くする。 「落ち着いたらまた広間に来て。僕もその間に、少し準備しておくから」 手を軽く振って、ノエルはすっと背を向け、静かに歩き去った。 その背中を、ルイスとコナリーは無言で見送っていた。 ◇◇◇ 昼前。再び広間に四人が集まる。 陽射しが傾きはじめた窓辺には、あたたかい紅茶の香りが満ちていた。 「さて……ここからどう動くかだな」 ルイスの言葉に、場の空気が引き締まる。 「アーシェとその兄が封印された場所――“封印の地”がどこなのか、手がかりがなければ動きようがない」 遥は椅子にもたれかかりながら、静かに頷いた。 
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第四十九話 崩れる記録と、少年の腕

◆◆◆◆◆ 書物庫の扉が閉まると、重たい静寂が辺りを包み込んだ。 天井まで届く書棚。革表紙の本、巻物、黄ばんだ羊皮紙。時の層のように積み上げられた記録の山が、誰の手にも触れられず、深い眠りについている。 「このあたりは教会関係の記録が多かったと思う。封印とか、祭壇とか……君が言ってた単語に近いものがあるなら、この辺りかも」 ノエルがランプを掲げ、慎重に棚の奥を覗き込んだ。 「ありがとう。助かる」 遥が蝋燭を手に、本の背表紙を指先でなぞる。どれも古びており、ひとつ動かすだけで崩れてしまいそうなほど脆い。 ルイスは年代ごとに整えられた棚を端から順に確認しており、コナリーは床に広げた巻物を無言で見つめていた。 それぞれが集中していた、その時―― 「……あれ、ちょっと待って、これ……」 ノエルがふいに声を上げた。 天井近くの棚に手を伸ばし、奥の書物を引き出そうとしたその瞬間。 ギシッ 軋む音とともに、積み上げられた棚の一角が不自然に傾いた。 「遥、下がって!」 「っ……!」 ルイスとコナリーの叫びが重なるのと、ほぼ同時だった。 崩れ落ちてくる束ねられた書物と木片。そのすべてが、遥の頭上へ降り注ごうとしていた―― 「危ない!」 最も近くにいたノエルが、瞬時に遥の肩を強く引き寄せ
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第五十話 手帳に記された道

◆◆◆◆◆ 散らばった書物を元の場所に戻しながら、遥たちは静かに片付けを進めていた。 書棚の破片や埃を払いながら、遥はふと、棚の裏側に落ちていた一冊の手帳に目を留める。 「……これ……?」 革の表紙はひどく乾き、ところどころひび割れていた。留め具は壊れていたが、内部の紙は意外にも整っていた。遥が拾い上げると、傍にいたノエルが顔を上げた。 「その手帳……見覚えがある……!」 ノエルは急いで歩み寄り、手帳をそっと受け取った。 「たしか……昔、亡くなった祖父に見せてもらったことがある。いたずらしようとして取り上げられて、それっきりだったけど……間違いない、これだよ」 ページを開くと、中には現代語と古代語が入り混じった文字が並んでいた。筆跡は年代によって異なり、記録者が代々引き継いで書き残していたことがうかがえる。 「これは……地図?」 ノエルがページをめくると、中央の見開きにざらついた線画で描かれた地図が現れた。 そこには、現在の地図と一致する部分も多かったが、詳細に描かれているのは王国の外縁――魔王領と呼ばれる地域だった。 「ここ……✗印がついてる」 遥が指を差した先には、森と山に囲まれた地点に赤黒いインクで大きなバツ印が描かれていた。その横には古代語で何かが書かれている。 「“封印”……それと、&l
last updateHuling Na-update : 2025-04-10
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