二川家。緒莉は、美月が紗雪と会ったことを知っていた。一体どんな話をしたのか、気になって仕方がない。リビングでソファに座る美月は、どこか機嫌がよさそうだった。その様子を見て、緒莉の疑念はさらに強まる。――まさか、あの二人、何か自分に隠れて取り決めでもしたんじゃないか。本当のところ、美月はずっと紗雪のことを気に入っている。それはわかっている。それに比べて自分は、会社でこれといった成果を出せていない。契約一つまともに取れず、株主たちからも不満の声が上がっている。そんな現実を知っているからこそ、悔しさが募る。とはいえ、どうしようもない。自分なりに努力して、仕事の能力を高めようとはしている。それでも契約はまとまらない。なぜか取引先は、紗雪ばかりを指名する。それ以外の人間とは、まるで組みたがらないかのようだ。その事実に、緒莉の苛立ちはさらに膨れ上がった。彼女は歩み寄り、美月の後ろに立つと、そっと肩に手を置いた。そして、優しく揉みほぐし始める。緊張していた美月の体が、みるみるうちにほぐれていく。その心地よさに顔を緩めながらも、美月は問いかけた。「緒莉、急にどうしたの?」「何言ってるの、お母さん」緒莉は少し拗ねたように言いながらも、手は止めない。「娘が母親の体を気遣うのは普通でしょ?最近、すごく疲れてるみたいだったから」「緒莉は本当にいい子ね」美月は満足そうに微笑んだ。――紗雪と比べて、どちらが好ましいかなんて、言うまでもない。紗雪は、こんなふうに自分に寄り添ったことなど一度もなかった。「お母さんの負担を減らすのは、私の役目だもの。それに最近、本当に大変そうで......見ていて心配だったの」緒莉はそう言いながら、自然な流れで話題を変える。「私、会社では紗雪みたいにうまく立ち回れないけれど......でも、ちゃんと努力するよ」その声には、わずかな震えと、押し殺したような悔しさが滲んでいた。美月は思わず表情を固める。知らないところで、娘はこんなにも思い悩んでいたのか。確かにこのところ、緒莉には不満もあった。紗雪と比べれば、能力の差は歴然としている。社内でも信頼を得られておらず、会社の状況も日に日に悪化している。株主たちからの圧力も強く
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