最後の一言は、美月が紗雪を見つめながら言ったものだった。その様子を、緒莉はすぐ隣でしっかり見ていた。美月がどうやって態度を切り替えたのか――全部。だが彼女は何も言わない。ただ、人知れず拳を強く握り締める。――まあ、今さらだ。美月がどんな人間かなんて、とっくにわかっている。今さら期待するほうが間違っている。「紗雪、ごめんなさい。お母さんの言う通りね。私の配慮が足りなかった」緒莉はあっさりと謝罪した。それを聞いた紗雪は小さく鼻を鳴らし、そのまま京弥と一緒に中へ入っていく。最後まで、緒莉のほうを振り返ることはなかった。後ろに立つ緒莉は、並んで歩く二人の背中を見つめる。あまりにもお似合いなその姿に、胸の奥の怒りが今にも噴き出しそうだった。だが今は、美月が見ている。ここで感情を爆発させるわけにはいかない。――でも、この屈辱は全部覚えておく。まだ時間はある。美月の前での「良い娘」という立場さえ崩れなければ、いくらでもやり直せる。ここまで何年も耐えてきたのだ。今さら、あと少しくらいどうということはない。それに今の緒莉は、状況をかなり冷静に見ていた。美月が京弥を取り込みたいなら、むしろ好きにさせればいい。会社にとってもプラスになる。会社の状況が良くなれば、自分が副社長として抱える負担も減る。その頃には株主たちも、自分を見る目を変えるかもしれない。会社の評判が上がれば、商談だって今より楽になるはずだ。そんな計算を、緒莉は頭の中で素早く巡らせていた。もちろん、紗雪と京弥はそんなことなど知らない。二人はただ食事をしに来ただけだ。紗雪に至っては、食べ終わったらすぐ帰るつもりでいる。食卓では、美月がしきりに二人へ料理を取り分けていた。だが、その箸が向かう先は、ほとんど京弥ばかり。紗雪は眉を上げる。――やっぱり。問題がどこにあるのか、はっきり見えた。彼女は遠慮なく口を開く。「この食事って、京弥のためのものかしら?私はもう娘としてどうでもいい存在っていうこと?」今の紗雪は、何もかも曖昧にするつもりがなかった。以前のように、我慢して飲み込むこともしない。美月は一瞬気まずそうな顔をしたが、すぐに笑顔を作る。「もう、この子ったら。そんなことで張
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