All Chapters of クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚!: Chapter 1431 - Chapter 1440

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第1431話

美月はその言葉を聞いた瞬間、冷ややかな表情を浮かべた。「紗雪、私はあなたの母親なのよ。その態度は何?もう私と縁を切るつもり?」「ええ」紗雪は一切ためらわずに答えた。「どれだけ母親の愛情に飢えていたとしても、私を利用してばかりの母親なんていらないわ。それと、私が京弥の家でどう過ごしてるかなんて、あなたたちには関係ないわ。彼のご両親は本当に優しくしてくれる。あなたより、ずっとよ。私は彼と出会って初めて、『母親』ってこういうものなんだって知った。実の母親とは、まるで別物だった」その言葉に、美月は胸を押さえ、傷ついたように顔を歪めた。「......本気で言ってるの?」信じられないという目で紗雪を見る。その視線を受けながら、紗雪は最後にはっきりとうなずいた。「もちろん本気よ。京弥と帰ってきた時、ずっと幸せそうに笑ってたの、気づかなかった?あなたたちを前にした時だけ、私はこんな態度を取る。できるなら、もう私の生活に干渉しないで。私と京弥は今幸せなの。二人でいる時は、余計なことなんて何も考えなくていいから」緒莉が間に入って場を収めようとしたが、口を開いた瞬間、紗雪に遮られた。「あなたは黙って。そのくだらない話はもう聞きたくない」そう言って紗雪は京弥を見た。「京弥、こんなくだらない話を聞かせちゃってごめんね」京弥はくすりと笑った。「どうして?君のことなら、俺は何でも喜んで付き合うよ」「行きましょう。もう遅いし。明日の朝、ここを出ましょう」「ああ。わかった」二人は腕を組んで去っていった。後ろ姿だけでも、あまりにお似合いだった。緒莉は拳をぎゅっと握り締める。気づかないはずがない。最後のあれは、絶対に紗雪のわざとだ。京弥とあんなふうに親密そうにしていたのも、きっと自分に見せつけるためだった。緒莉は呼吸を整えようとし、少しでも表情を取り繕おうとした。だが何度試しても無駄で、最後にはただ悔しそうに美月を見つめるしかなかった。「お母さん......もう私、どうしたらいいかわからない......」その言葉に、美月も深く息を吐いた。「私もよ。まさか、椎名くんがあそこまで執着しているなんて......何でも紗雪の言う通り。そんな相手に、私たちが何をできるっていうのよ」「じゃ
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第1432話

「......緒莉?大丈夫?」美月は堪えきれず、緒莉を気遣った。この子は小さい頃から聞き分けがよく、いつだって自分に優しかった。そのうえ体も弱い。だからこそ美月は、心のどこかでずっと緒莉を贔屓してしまっていた。美月の気遣う言葉を聞き、緒莉はまた健気に首を横へ振る。「ううん。大丈夫だよ、お母さん。私のことは気にしないで。時々、自分にはお母さんの優しさを受ける資格なんてないんじゃないかって思うの」その言葉に、美月の胸まで苦しくなった。「そんなこと言わないで。あなたは、誰よりも幸せになるべき子よ」だが緒莉は首を振る。「私がお母さんの足を引っ張ってるのはわかってる。妹より劣ってることも。でも......信じて。私、本当に頑張ってるの」「前にも言ったでしょう。緒莉は私の足を引っ張ってなんかいないって。そんなふうに考えないで」美月はため息をついた。「さっきは言い方がきつくてごめんなさいね。私、怒るとつい考えなしに言葉をぶつけちゃうの」美月自身も苦しかった。それでも説明せずにはいられなかった。「さっきは紗雪に腹が立ってたの。あなたと比べたら、あの子は子供すぎるわ」「お母さん、紗雪のことを責めないであげて。まだ若いから、わからないだけなんだよ」緒莉は真剣な顔で母を慰めた。「でも私は信じてるよ。紗雪がもう少し大人になったら、きっとお母さんの苦労を理解してくれるって。そしたら、きっとお母さんの味方になって、助けてくれるはずだから」美月は眉間を押さえ、深く息を吐いた。「いつになったらわかってくれるのかしらね。あなたみたいに聞き分けがよければ、どれだけ安心できるか......」「私、機会があったらちゃんと紗雪を説得してみるよ」「ありがとう。緒莉は本当にいい子ね」美月は手を伸ばし、緒莉をそっと抱き締めた。緒莉のことは、彼女なりにちゃんと大切に思っている。ただ現実に追われる中で、どう接してやればいいのかわからなくなる時があった。それに実際、緒莉の仕事ぶりは紗雪には及ばない。今は取締役会からも圧力をかけられており、美月自身、一人では耐え切れなくなりそうだった。一度や二度ならまだいい。だが回数が重なれば、さすがに苛立ちも募ってくる。もし緒莉がこのまま成長できなければ、取締役会
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第1433話

弱肉強食――その道理は、どんな環境にも当てはまる。緒莉は美月の視線を受けながら、小さくうなずいた。「うん。ちゃんとわかってるよ。だから時々、自分がすごく嫌になるの。どうして私は、お母さんの期待に応えられないんだろうって。私だって、ちゃんと成長したいのに......安心して。私、これからもっと勉強するから」美月は軽く肩を叩いた。「わかるなら、それで十分よ。先輩たちからたくさん学びなさい。よく聞いて、よく質問すること。恥ずかしいなんて思わなくていいの。誰だって最初は初心者なんだから。本当に怖いのは、いつまでもその場に留まり続けて、成長しないことよ」緒莉は真剣な表情でうなずいた。「わかった。頑張るから、お母さんも早く休んでね。もうかなり遅い時間だし」「ええ、そうね」美月は手を軽く振った。「そろそろ休みなさい。私は仕事があるから」緒莉の目には、心配そうな色が浮かんだ。「お母さん、何かあったら一人で抱え込まないで。私に話していいんだから。私はずっとお母さんのそばにいるよ。妹みたいに、お母さんを傷つけたりしない」その言葉に、美月の胸はさらに熱くなった。まさか緒莉のほうが、紗雪よりずっと自分を思ってくれているなんて。紗雪といえば、自分を怒らせることしかしないように思えた。「ありがとう」美月はしみじみと言った。「あなたみたいな娘がいて、本当に幸せね」「じゃあ、お母さん。何かあったら呼んでね」緒莉は柔らかく微笑んだ。「私はいつでも、お母さんからの電話を待ってるから」美月はただ手を振り、早く休むよう促しただけで、それ以上は何も言わなかった。時間も遅かったし、何より京弥のほうも、結局は二川グループのために案件を取ってくるとは約束してくれなかった。そのことを思うだけで、美月は頭が痛くなる。これから先、どう進めばいいのかもわからない。今の状況では、もうその場その場で対応していくしかなかった。せめて緒莉が、本当に成長してくれればいい。今みたいに、何でも自分に頼りきりではなく。もしこのまま変われないなら、いっそ会社を他人に任せたほうがいいのかもしれない。あるいは、紗雪にもう一度頭を下げて、会社に戻って管理してもらえないか頼むべきか――そう考えた瞬間、美月の心には再び迷い
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第1434話

たった一言頼むだけのことなのに、どうして紗雪は助けようとしないのだろう。会社はこれまで彼女にも多くの利益をもたらしてきた。なのに会社を離れた途端、自分をここまで追い詰めるつもりなのか。最近、会社の株主たちが自分を責め立てていることを、あの女は知らないのだろうか。それとも、最初から全部わかっていて、わざとやっているのか。京弥の会社の支援がなければ、二川グループがどうなるかも考えていないのか。あるいは、わかっていても、もうどうでもいいと思っているのかもしれない。今の会社は、すでに紗雪とは何の関係もないのだから。そう考えるほど、緒莉の胸の中の憎しみは濃くなっていった。拳をゆっくり握り締める。脳裏に浮かぶのは、紗雪の笑顔ばかり。できることなら、あの顔をずたずたに引き裂いてやりたかった。同じ美月の娘なのに、どうして紗雪だけあんなにも綺麗に生まれたのか。家に客が来れば、誰もが最初に目を向けるのは紗雪だった。褒められるのも、注目されるのも、いつだって彼女。自分はただ、その横で引き立て役になるしかなかった。緒莉は悔しかった。長年ずっと、紗雪の影に押さえつけられてきたのだから。けれど今、一番いい方法は、紗雪と京弥の関係を壊すことだ。ただ今日観察した限りでは、それは簡単なことではなさそうだった。だが緒莉は、ふと考えを変える。別の方向から攻めばいいじゃない。紗雪もスタジオを運営している以上、世論や話題性は何より重要なはずだ。しかも最近、バラエティ番組への出演まで考えているらしい。そこまで考えた瞬間、緒莉の瞳が暗く沈んだ。胸の中では、すでに計画が形になり始めている。自分はもう十分に道を用意してやった。それでも歩み寄ろうとしなかったのは紗雪のほうだ。姉妹の情すら顧みなかった。なら、自分が容赦しなくても文句は言えない。チャンスは与えたのだから。緒莉はそう思いながら、目の奥に溢れそうなほどの憎悪を滲ませた。紗雪が自分に情けをかけないのなら、どうして自分だけ彼女の気持ちを考えなければならないのか。バラエティ番組は絶好の機会だ。世間の批判を浴びせれ、彼女を潰すことができる。世論というものは形こそないが、人に与えるダメージは想像以上に大きい。緒莉は、その恐ろし
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第1435話

「私たちには血の繋がりがある、世界で一番近しい存在よ。私以上にあなたを愛してくれる人なんて、きっと他にいないわ」美月は真剣な表情で紗雪を見つめながらそう言った。よく見れば、その目にはうっすら涙まで浮かんでいる。視線は紗雪から決して逸らされなかった。その様子を見て、紗雪の心は一瞬揺らいだ。けれど次の瞬間、脳裏に浮かんだのは昨日、美月が京弥に向かって言っていた言葉だった。紗雪は慌てて首を振る。頭の中に浮かぶ迷いを振り払うように。――全部まやかしだ。美月は自分を利用しているだけ。もう二度と騙されてはいけない。今になって、紗雪は美月に京弥の正体を知られてしまったことを心底後悔していた。もし最初から知られていなければ、こんな面倒なことにはならなかったのかもしれない。「くだらない」紗雪は視線を逸らした。「誰が私に良くしてくれて、誰がそうじゃないのかくらい、ちゃんとわかるから。何を言われても無駄よ」彼女は冷たく鼻を鳴らした。「口で何を言うより、実際の行動を見せてくれたほうがよっぽどマシ」「あなたが京弥にしたことも、言った言葉も、これだけ証拠が揃ってるのに、これ以上どうやって信じろっていうの?」美月は乾いた唇を舐めた。「でも......私たちには血の繋がりがある。あなたをずっと育ててきたのも私よ......本当に、この関係を捨てるの?」その瞬間、紗雪は堪え切れず声を張り上げた。「もう一度言うけど――この関係を捨てたのはあなたよ!私じゃないから!」声はかすれ、半ば叫びのようになっていた。「娘として、私はもう十分すぎるほどあなたの言葉に従ってきた!それでもまだ、私にどうしろっていうの!?」そんな紗雪を見て、京弥は胸が締め付けられるほど心を痛めた。彼はそっと紗雪の肩を抱き寄せ、耳元で優しく囁く。「もう帰ろう。そんなに怒ったら、体に障るよ」京弥の体温を感じた瞬間、紗雪の胸の奥がじんわり温かくなった。彼に身を預けると、これまで感じたことのない安心感に包まれる。やはり京弥がそばにいてくれるだけで、自分は何も怖くない。どんなことにも立ち向かえる気がした。紗雪は静かに感情を落ち着けると、少し和らいだ目で美月を見つめた。「これからは『他人』として生きましょう。何か本当に
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第1436話

だったら、自分を責める資格なんてどこにあるのだろう?美月の中に残っていたわずかな罪悪感も、一瞬で吹き飛んだ。「そこまで情を断ち切るつもりなら、私も容赦しないわよ」その言葉を聞いて、紗雪は思わず笑ってしまった。――やっぱりだ。美月が少しでも冷静になりかけるたび、隣には必ず「かき回す人間」がいる。紗雪は美月の隣に立つ緒莉へ視線を向けた。「緒莉、さすがだね。今のあなたの顔、私は一生忘れないから」続けて、今度は美月を見た。「お母さんも、一生後悔しないでね。だってあなたは、緒莉を選んだんだから」「......どういう意味?」その言葉を聞いた瞬間、美月は妙に胸がざわついた。彼女にとって、二人とも自分の娘だ。どうしてどちらかを選ばなければならないのか、理解できない。二人仲良くやっていくことはできないのだろうか。「そのままの意味だけど?」そう言い終えると、紗雪は京弥の腕に自分の腕を絡めた。「これから用事があるから、これ以上付き合わないわ」言い終えた瞬間、二人は一切振り返ることなく立ち去った。その場には、美月と緒莉だけが取り残される。それでも美月は、紗雪の言葉の意味を理解できずにいた。「緒莉......今の、どういう意味だったのかしら?」戸惑ったように呟く。緒莉も不思議そうに首を傾げた。「紗雪って......まだ私のこと恨んでるのかな......」「それは考えすぎよ」美月自身もどこか引っかかるものを感じてはいたが、すでに紗雪は京弥と共に去っている。今、自分の前にいるのは緒莉だ。だからこそ、まずは彼女を安心させるしかなかった。「明日からは普通に会社へ行きなさい。でも、椎名くんの素性については、まだ外に広めちゃ駄目よ」緒莉は従順にうなずいた。「安心して、お母さん。ちゃんとわかってるから」その様子を見て、美月もそれ以上は何も言わなかった。ただ胸の奥には、どうしても消えない苦さが残っている。本当に自分は、紗雪とここまで決別してしまうのだろうか。実の母娘なのに、なぜここまで関係が壊れてしまったのか。一体、どこで何を間違えたのだろう。......一方、紗雪も京弥と共に家を出たあと、表情に笑みはなかった。その様子を見て、京弥は彼女の気持ちを察す
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第1437話

「京弥も、そう思うの?」紗雪はぱっと目を輝かせ、少し身を乗り出すようにして尋ねた。「ああ」京弥は迷いなく答える。「一つだけ覚えておいて。俺はいつだって紗雪の味方だ。だから君が何をしようと、俺は全部応援する。紗雪の後ろで、ずっと支えてるから」「......ありがとう、京弥。帰ろっか」紗雪の胸はじんわりと温かく満たされていた。京弥の言葉に、さらに救われた気がした。家へ戻ったあとも、紗雪は朝食を取らず、そのまま京弥にスタジオまで送ってもらうことにした。今日は柿本と仕事の細かい打ち合わせがある。だから、スタジオへ行くのは急務だった。「何か俺に手伝えることがあったら、ちゃんと言ってくれよ」正体を打ち明けてからというもの、京弥は紗雪を助ける時、以前のように隠れたりはしなくなった。もう身分を隠すつもりはない。こうして堂々と紗雪の隣に立てるのなら、なぜ今さら遠慮する必要があるのか。むしろ彼は、紗雪にもっと自分を頼ってほしかった。彼女の後ろで黙って支えるだけの存在にはなりたくない。彼が欲しいのは、紗雪が自分の存在を当たり前のものとして受け入れてくれることだ。「大丈夫。今のところは、自分で何とかできるから」紗雪は真面目な顔で彼を見た。「それに、京弥とのことを、まだ公表したくないの」「なんで?」京弥は不満そうに眉を寄せた。紗雪の決断が、どうしても気に入らない。せっかく苦労して結ばれたのに、どうしてまだ関係を隠さなければならないのか。堂々と全部明かせばいいじゃないか。彼はそんな肩身の狭い関係なんて望んでいなかった。「やっと一緒になれたのに、どうして?」京弥が、初めて真正面から紗雪の決定に反対した。すると紗雪は呆れたように言う。「私は、自分の力で成功を掴みたいの。それに、今の段階で公表したら、これからの仕事にも影響する。周りだって絶対に誤解するもの。私は誰かの影に隠れているだけの存在にはなりたくない。自分の仕事をちゃんと持って、堂々とあなたの隣に立ちたいの。みんなに、『本当にお似合いの二人ね』って言われたいから」そこまで話した時、紗雪の瞳には強い憧れが浮かんでいた。その一瞬だけで、京弥は彼女の想いを理解する。「......紗雪がそう言うなら、わかった
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第1438話

「当然だ」もし匠がこのことを知ったら、きっと今すぐ紗雪のところへ駆け込んで真実を訴えるに違いない。京弥は会社では、部下たちを極限まで追い詰めないだけまだマシ、というレベルの存在だ。そんな男が、他人の前でこんなふわふわした可愛い一面を見せるはずがない。「......それもそうだね」紗雪は真剣に考え込んだあと、小さく頷いた。これほど大きな企業の社長が、あまりにも甘くて可愛い姿を見せていたら、確かに少し問題かもしれない。きっと会社での威厳にも関わる。やはり社長というものは、多少厳しいくらいがちょうどいいのだろう。すると京弥は、今度は逆に紗雪の頬をつまみ返し、真面目な顔で言った。「こんな俺を見られるのは君だけなんだから。ちゃんと大事にしろよ」こんな台詞を口にしたのは、京弥にとって初めてだった。言った本人ですら、少し気恥ずかしい。けれど相手が紗雪だと思えば、不思議と気持ちは軽かった。彼女の前なら、思っていたほど恥ずかしくもない。だから何を言えないことがあるだろう。京弥は心の中で、すでに自分自身を納得させていた。「うん。じゃあ、私は仕事に行ってくるね。京弥も頑張って」そう言って、紗雪はそのまま車を降りた。京弥は、彼女の背中がスタジオの中へ消えていくまで見送り、それからようやく車を方向転換させて椎名グループへ向かった。紗雪はスタジオへ着いた瞬間、すぐに仕事モードへ切り替わった。途中で凪と片山のデスクの前を通り、それぞれの仕事ぶりを軽く確認する。どちらの進捗も申し分なく、彼女は満足そうに目を細めた。吉岡は紗雪の姿を見つけると、すぐに声をかけてくる。「社長、柿本社長とのアポイント、取っておきました。午後にカフェでお会いする予定です」「わかった。その時はあなたも一緒に来て」紗雪はすぐにそう答えた。これは吉岡に経験を積ませる意味もあった。今後、自分がスタジオにいない時でも、吉岡が一人で対応できるようになってほしいのだ。吉岡も当然、紗雪の意図を理解していた。だから余計なことは言わず、素直に頷く。「わかりました。先方の資料は全部まとめておきます。午後は同行しますね」紗雪は軽く「うん」と返した。しかし周囲を見回しても、清那の姿が見当たらない。不思議に思い、彼女
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第1439話

【そんなにダラダラしてると、あとでおじさんとおばさんにどう説明すればいいのよ】その二通を送ったあとも、紗雪はしばらく返事を待っていたが、清那からは何の反応もなかった。もうすぐ10時だ。いくら寝坊しているとしても、さすがにもう起きている時間のはず。それに、清那は普段、出勤に遅れたことなどほとんどない。今日は一体どうしたのだろう。一方その頃、清那は病院で日向に付き添っていた。メッセージに気づくと、少し手が空いたタイミングで紗雪へ電話をかける。すると相手はすぐに出た。繋がった瞬間、紗雪の問い詰めるような声が飛んでくる。「清那、もう十時過ぎてるのに、まだ寝て――」だが最後まで言い切る前に、清那が慌てて遮った。「違うの。寝てたわけじゃない。今日はちゃんと早起きしてたよ」紗雪は不思議そうに眉を寄せる。「じゃあなんでスタジオに来てないの?今日が出勤日なの忘れてる?今日は月曜だよ」清那の声はどこか焦っていた。「忘れてないってば。本当に。ただ、ちょっと用事があって......」「どんな用事よ。仕事まで忘れるなんて」紗雪は、このところ自分が清那に甘すぎたのではないかと思い始めていた。そもそも、変わりたい、成長したいと言い出したのは清那自身だ。だからこそ、毎日のように気にかけていたのに。けれど今の彼女の様子は、以前と何も変わっていない。結局また怠けて、仕事をしない理由をあれこれ並べているだけなのではないか。そう考えた瞬間、紗雪の苛立ちはさらに膨らんだ。しかし清那は慌てて説明する。「紗雪、今回は本当に誤解なの。私、今病院にいるんだけど......」「えっ、病院!?」紗雪は勢いよく立ち上がった。声も一気に高くなる。「怪我したの!?大丈夫!?おじさんたちから何も聞いてないんだけど!?」清那は、その声音から自分を本気で心配してくれているのが伝わってきて、胸が熱くなった。それでも思わず額を押さえる。「違う違う、私じゃないの。怪我したのは日向」「......日向?」その名前を聞いた瞬間、紗雪は少しだけぼんやりした。そういえば、このところ日向とはほとんど連絡を取っていない。新しいスタジオを立ち上げてから、開業初日に顔を合わせたきりだった。それ以外では、二人
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第1440話

通話を切られた画面を見つめながら、紗雪は細く目を細めた。どう考えても、やはり何かがおかしい。日向が入院しただけで、どうして清那があんなに慌てる必要があるのだろう。そもそも清那は、あんなふうに人のために必死になる性格だっただろうか。確かに彼女は大雑把なところがある。けれど、必要以上に他人の事情へ首を突っ込むタイプではなかった。そのことを、紗雪はよく知っている。だからこそ違和感があった。以前の二人の関係なんて、せいぜい普通の知り合い程度だったはずだ。それなのに今は、思っていた以上に距離が近い気がする。紗雪はしばらく考え込んだあと、結局清那の両親へ電話をかけた。だが二人とも、清那が日向のお見舞いへ行っていることを知っていた。それを聞いて、紗雪も少し安心する。「そうなんですね。ならよかったです」すると尚美が、どこか申し訳なさそうに言った。「紗雪、あの子って昔から何をするにも大雑把でしょう?もしちゃんと休みの連絡を入れてなかったなら、どうか大目に見てあげてね」その言葉に、逆に紗雪のほうが気まずくなった。よく考えれば、清那が何か大きな問題を起こしたわけではない。むしろ以前に比べれば、彼女はかなり成長している。だからこそ、叔母さんは心配しすぎなのではないかと思った。「おばさん、実は清那、前よりずっと成長してるんです」紗雪は真剣に説明した。「私が電話したのは、ただ入院の件をご存じか確認したかっただけで......」「その件なら、私も正人も知ってるわ。てっきり今日は出勤しなかったことで、あなたがあの子を怒ってるのかと思ったの」そこでようやく尚美も安心したようだった。紗雪もほっと息をつく。「それなら大丈夫です。お二人が知ってるなら安心しました。他のことは気にしてません。仕事のことだって、清那自身ちゃんとわかってると思うので」「それならよかったわ」尚美は慌てて答える。「何かあったら、私たちにも言ってちょうだいね」「はい」紗雪は笑って続けた。「おばさんも安心してください。このところ清那はうちで本当に頑張ってますし、以前よりずっと頼れるようになりました。だから私も彼女のことは信頼しています。ただ、今日の日向の件だけは何も知らなかったので、確認したかっただけなんです」
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