「わかりました。ではあとで清那に聞いてみます」「ええ、理由ならあの子がちゃんと知ってるから、きっと正直に話してくれると思うわ。でも今の時間帯だと、まだ忙しいんじゃないかしら」そう言ったあと、尚美ははっきりと続けた。「紗雪、こっちもまだ少し立て込んでるの。また今度ゆっくり話しましょう」その言葉を聞いた瞬間、紗雪はすべて察した。これ以上この話題を続けるつもりはないのだ。だから彼女も状況を察して、それ以上引き止めることはせず、そのまま通話を切った。黒くなったスマホ画面を見つめながら、紗雪は静かに考え込む。どうしても、どこか引っかかる。日向が事故に遭ったのなら、なぜ自分には何も知らせてくれなかったのだろう。それに、清那のあの必死な態度も少し不自然だった。紗雪が再び清那へ電話をかけようとしたその時、吉岡がドアをノックして入ってきた。彼は午後の打ち合わせ用資料をすべて机の上へ置き、丁寧な口調で言う。「社長、こちら午後の商談資料です。先に目を通していただければ」「ありがとう、そこに置いておいて」そう答えたあと、紗雪はふと思い出したように彼へ尋ねた。「資料を見た感想は?」吉岡は真剣に考えながら答える。「......柿本社長はかなり譲歩してくれています。現地調査も済ませましたけど、このプロジェクト自体はすぐ動かせる段階です。今必要なのは、細かい契約内容の調整と、どの資材メーカーから材料を発注するか決めることくらいですね」少し間を置き、彼は付け加えた。「他は特には......あ、そういえばデザイナーだけ、まだ正式に決まってません」その答えを聞き、紗雪は心から感心した。「吉岡、本当に前より成長したね」「ありがとうございます。全部、社長が教えてくれたおかげです」吉岡は遠慮なく言葉を続ける。「社長のそばで働いて、たくさん学ばせてもらいましたから」それはお世辞ではなく、本心だった。逆に紗雪のほうが少し照れてしまい、軽く手を振る。「それはあなた自身が吸収力あるからよ。このまま頑張れば、将来私がいない時でも、このスタジオをちゃんと回せるわ」その瞬間、吉岡の表情が一気に変わった。「え、そんな......『いない時』って、どういう意味ですか!?」声には明らかな焦りが滲んでいる。
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