その言葉を聞いた瞬間、京弥は躊躇い始めた。もともと、彼は大したことないと思っていたのだが、伊吹には彼の躊躇いが見抜かれていた。それを見た伊吹は、さらに畳みかけるように言った。「結果がどうであれ、あの医者たちに試させてみる価値はあるだろ?」その言葉に、京弥の視線は伊吹ではなく紗雪の方へと向いた。繊細な顔立ちをした彼女を見つめながら、彼は確かにまた迷い始めていた。そう考えると、伊吹の言っていることも一理ある。紗雪のためなら、これまで試そうともしなかったことでも、試してみる気になれる。加えて、紗雪の病状はこれ以上先延ばしにできるものではない。京弥もまた、それを理解していた。そして、ようやく彼は伊吹の方をしっかりと向いて言った。「その医者、信用できるのか?」この問いに、伊吹は傷心している伊澄のことなど一切気にせず、急いで駆け寄ってきてこう答えた。「信用できる人だ。国外でも有名な医者で、特に脳神経の分野に強い」「安心してくれ。俺が二川さんのために真剣に考えてるのは本当だ。ふざけてるわけじゃない」その言葉に、京弥は薄く唇を引き結び、彼の話を受け入れたことが明白に表れた。それを見た伊吹は笑みを浮かべて言った。「じゃあ、数日中に彼らを呼んでくるよ。大丈夫だ。二川さんのことを軽く扱うような真似は絶対にしないから」京弥は「ああ」とだけ答え、視線をそらしてドアのそばに立っていた伊澄を一瞥した。「彼女を連れて出ていけ」そう言い放つと、背を向けた。その態度がすべてを物語っていた。彼はもう伊澄とこれ以上言葉を交わすつもりはなかった。今こうして冷静に話しているのも、伊吹が連れてくるという医者の話があったからだ。もしそれがなければ、この兄妹をとっくに追い出していたに違いない。伊吹もまた、京弥のその意図をしっかりと汲み取った。拳を握りしめながら、こう言った。「俺は必ず二川さんを助ける方法を探す。家のことを冗談にするつもりなんて一切ない」最後の一言は、声を落として言った。「それにそんな冗談、俺には言える立場じゃない......」成人男性として、幼い頃から何かと比べられてきた相手に頭を下げるのは、やはり自尊心に傷がつく。だが、家族の前ではそんな自尊心すら無意味だった。彼は小さく
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