点滴の瓶に睡眠薬でも混ぜられていたのかはわからないが、紗雪は意外とすぐに眠りについた。彼女はこちらで安らかに眠ることができたが、京弥の方は心配でたまらなかった。彼は電話をかけるも「電源が入っていないか」と表示されるばかり。さらに送った二通のメッセージも、まるで海に沈んだ石のように返事はなかった。部屋を何度も歩き回りながら、彼の表情には明らかに焦りがあった。彼はすぐに匠に電話し、紗雪の現在の居場所を調査するよう命じた。一体どうなっている?自分の思っている通りじゃないといいが......匠はすでに自宅で休んでいたが、電話を受けたとたん真っ暗になった。なぜいつも自分の休んでるときにトラブルが起きるんだ、と思いながら頭を揉みつつ、無理やり電話に出た。「社長?何かご用件でしょうか?」ふだん不満を抱くことが多い匠だが、京弥と話す時はいつも丁寧だ。「今すぐ紗雪の居場所を調べろ」電話越しにその指示を聞いた匠は混乱しつつも、すぐに行動を開始した。「夫人が帰宅していないということですか?」匠も呆れ顔だったが、京弥は眉間に皺を寄せて答えた。「帰っているなら、今頃こんな連絡はしない」「今夜中に結果を出せ」そう言うと電話は切れ、匠はベッドに座ったまま呆然としたが、結局は「一応給料をもらってるからな......」と自分に言い聞かせて行動を開始した。一方京弥は会社に急行するも、二川グループは既に閉業しており、警備員も帰宅し、全社が真っ暗だった。彼は汗をにじませながらハンドルを握りしめ、その場で身動きできずにいた。その頃、伊澄は家で京弥のエンジン音を聞いた。彼が外出すると、彼女は静かに顔を出して思う。「紗雪に何かあった方がいいわ。あの女が消えれば、京弥兄は私だけ見てくれる......」匠がもし伊澄の考えを知ったら、きっと腹を抱えて笑うだろう。たとえ紗雪が戻ってこなかったとしても、その席が伊澄に回ってくるなんて絶対にありえない。何の取り柄もないくせに、やたらと自信満々で、トラブルばかり起こすような女。そんな女を嫁にもらって何になる?飾りとして部屋に置いておくつもりか?それに、たとえ「飾り」になりたくても、彼女より綺麗な女なんて世の中にいくらでもいる。まさか兄と社長の関係を盾にして、
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