辰琉はようやく状況を理解し、慌てて緒莉の手を掴み、離そうとしなかった。「緒莉、待ってくれよ。何を言ってるんだ。俺には君がいるのに、他の誰かに興味を持つわけないだろ?」彼は急いで弁解した。「ちょっと驚いただけなんだ。君があまりにも迷いなく行動したからさ」緒莉は顎を少し上げ、冷然とした目つきで言った。「私の邪魔をする人は、誰であろうと消えてもらうだけよ」「紗雪さえ目を覚まさなければ、私は自然に彼女のポジションを引き継げる。そうなれば、たとえお母さんがそれを受け入れたくなくても、止める術はないわ。私が唯一の後継者になるの」彼女は高慢な表情で辰琉を見下ろしながら続けた。「その時には、ただの会長どころか、二川グループそのものが私のものになるのよ」そして彼女は辰琉の顎を軽く持ち上げ、挑発的に微笑んだ。「ねえ、そんな女を嫁にもらったら、達成感があると思わない?」その一言に、辰琉もついに納得したようだった。確かに、緒莉が二川グループ全体を嫁入り道具にしてくれれば、彼にとっても悪い話ではない。紗雪や美月の顔色をうかがう必要もなく、二川グループと提携するだけで十分だ。彼の目に喜色が浮かび、緒莉の決断が非常に正しかったと改めて確信した。「やっぱり君はすごいよ、緒莉!」そう言って、辰琉は唇を寄せたが、緒莉はその唇を手で押さえ止めた。「ちょっと待って、話はまだ終わってないわ。今日来たのは、そのためでもあるのよ」「言ってくれ。俺にできることなら、何でもやるよ」「大丈夫よ、あなたならきっとできる」緒莉は彼の胸元にもたれかかりながら、言葉を続けた。「安東家は鳴り城で医療関係のコネがあるって聞いてる。そのコネを使って、紗雪を今の病院にずっと留めて欲しい。絶対に転院させないように」「そうすれば、彼女に薬を打ち続けられる。彼女はずっと目覚めることはない」その言葉を受け、辰琉もすぐに続けた。「そして彼女が目を覚ました時には、もう君が二川グループを継いでいる。つまり、手遅れってわけだな」緒莉は満足そうに微笑み、辰琉の口元に軽くキスをした。「やっぱり辰琉は賢い人ね。私の考えとまったく同じ」「任せてください。必ずやり遂げるよ。そっちが問題さえ起こさなければな」「彼の弱みを握っているから安心して」「
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