翌朝――「……君。航君……」誰かが呼ぶ声で航はゆっくり目を開けると、何とそこには朱莉が航を覗き込むように見下ろしていた。「な・な・なんだよ! お……驚かすなよ!」航はガバッと起き上がると朱莉に抗議した。「あ、ごめんね。勝手に部屋に入ったりして。ただ、今朝は何時に起こせばいいのか分からなかったから」「え?」航は慌てて部屋にかけてある時計を見ると驚いた。何と時刻は8時を過ぎている。「や……やべ! 寝過ごした!」そして飛び起きようとして朱莉を見た。「おい、いつまでここにいるんだよ……」「え? いつまでって?」「俺……着替えたいんだけど」「あ、ごめんね。気付かなかった。すぐ出るね」朱莉は立ち上がると、素早く部屋の外へ出て、ドアをパタンと閉めると呟いた。「朝ご飯……食べる時間無いかな?」そこで、朱莉は手早く支度を始めた—— 一方航はかなり焦っていた。「くそ! 寝過ごすとは!」航は急いで機材のチェックをし、本日の対象者の予定を書き記した手帳を確認する。「え~と確か今日は古宇利島へ愛人と行くって言ってたな……。全く婿養子のくせにいいご身分だ。こんなことしてられない!」慌てて着替えて、部屋を飛び出して朱莉に言う。「悪い! 朱莉。朝飯は……」航が言いかけた時、朱莉が水筒とランチバックを差し出してきた。「え?」航が戸惑った顔を見せると朱莉は笑顔になる。「食べる時間が無いでしょう? おにぎりと今朝のおかずを詰めたから時間がある時に食べて。一応保冷材はいれてあるけど暑いから早めに食べてね」「朱莉……」航は思わず胸に熱いものが込み上げてきて……ぐっと拳を握りしめると顔を上げた。「悪いな、朱莉。ありがと」「気にしないで。それじゃ気を付けて行って来てね」そして航は笑顔の朱莉に見送られてマンションを後にした―― 航が仕事に出かけた後、朱莉は自分の朝食を食べ、洗濯をしようとして気が付いた。「そうだ。今日航君が帰ってきたら洗濯物のこと言わないと。ひょっとして私に気を遣ってコインランドリーを使ってるかもしれないし」 洗濯物を回し、部屋の掃除をする為に片づけをしているとリビングのソファの椅子の下にチケットらしきものが落ちているのを発見した。「どこのチケットだろう……?」拾い上げてみると、それは朱莉が行きたいと思っていた『美ら海水族
Last Updated : 2025-04-22 Read more