それは朱莉が蓮のおむつを交換して、ミルクを飲ませて寝かせ付けた後のことだった。突然翔から電話が入ってきたのである。「え? こんな時間に翔先輩から電話なんて……」時計を見ると23時を過ぎていた。今までこれ程遅い時間に電話がかかってきたことが無かったので朱莉は戸惑った。(ひょっとして何かあったのかな……)スマホをタップすると電話に出た。「はい、もしもし」『やあ、朱莉さん。こんばんは』心なしか翔の声が明るく聞こえた。「こんばんは、翔さん。何か良いことでもあったのですか? 声が明るく聞こえますけど?」『そうかい? やはり分かってしまったかな……。実はね、明日香の記憶が戻ったんだよ。それで今日連れ帰ってきて、今眠ったところだから朱莉さんにも知らせておかないといけないと思ってね』「そうだったんですね。明日香さんの記憶が戻って本当に良かったです」朱莉は心から言った。すると次に翔の口から驚きの話を聞かされる。『うん、それでね朱莉さん。明日香が戻って来たから、もうそちらに行くことは出来なくなったんだ。明日香はその……小さい子供、特に赤ん坊が苦手でね。きっと俺が蓮の様子を見に行くことを嫌がると思うんだ。それで悪いけどこれからは朱莉さんがお母さんの面会に行くときはベビーシッターをお願いしてもいいかな? その料金は別途上乗せして振り込むことにするから。悪いけどよろしく頼むよ』「そう……なんですか? それではこれから蓮君に会いには来られないと言うことなのでしょうか?」『う~ん……そういうことになるかもしれないね。あ、でもお祝い事にはプレゼントを贈らせてもらうから、その点は任せてくれ』「は、はい。分かりました……」『それじゃ、朱莉さん。引き続き蓮こと頼むよ。君だけが頼りなんだ』「はい。分かりました」『それじゃ、お休み』「はい。おやすみなさい……」そして翔からの電話は切れた。朱莉はスマホを握りしめたままため息をついた。<君だけが頼りなんだ>翔の声が頭の中でこだまする。「翔先輩……でも、私も先輩だけが頼りだったんですよ……?」ポツリと朱莉は寂しそうに呟くと、PCを立ち上げてネット検索を始めた。ベビーシッターを探す為の——**** その次に翔は琢磨に電話をかけた。4コール目の呼び出し音で琢磨が電話に出た。「もしもし」『翔か。昨夜は泊めて
Last Updated : 2025-05-06 Read more