23時―― 琢磨との飲み会で上野の事務所に戻って来た航は事務所に明かりが灯っているのに気が付き、ドアを開けると父の安西弘樹がテーブルを前に長椅子に座って待ち構えていた。「と、父さん。何やってんだよ。驚くじゃないか。まだいたのか?」すると弘樹は難しい顔で航を見た。「いいから航。そこに座れ。お前に話がある」「何だよ……」航は弘樹の真向いの長椅子に座った。「航。お前、今迄何処に行ってた?」「はあ? 知り合いと有楽町の居酒屋で飲んでいただけなんだけど?」「まさか、鳴海朱莉さんと一緒だったわけじゃないよな?」「な、何言ってるんだ! そんなはず無いだろう?」航は弘樹に沖縄で朱莉の家に居候していたことは内緒にしていた。なのに突然朱莉の名前を口に出され、激しく動揺した。「俺が何も気づいていないとでも思っていたのか? 知ってるんだぞ? お前がずっと沖縄で鳴海朱莉さんのマンションでお世話になっていたことを。いつ話してくれるのかずっと待っていたのにお前が正直に教えてくれないから未だに鳴海朱莉さんにお礼が言えていないじゃないか」その言葉は何処か航を責めている。「そ、それは……」(言えるわけないじゃないか……! 言えば反対されて朱莉の家を出る様に言うに決まってると思ったから……)「つい先日、これがポストに投函されていた」弘樹は航に茶封筒を渡した。「え? 何だこれ……?」航は茶封筒の中身を取り出し、息を飲んだ。そこには航が沖縄で朱莉と一緒にいる姿の写真が何枚も入っている。それだけでは無かった。一番最後の写真は航のスマホに届いた画像と同じ写真だった。「!」(まさか……京極が言っていたのはこのことだったのか……!?)航は身体を震わせながら拳を握りしめた。「航……お前、調査員のプロだろう? 一体何をやっていたんだ?」「お、俺は……」「鳴海朱莉さんと一緒にいて浮かれていたか?」「!」航の肩がピクリと動く。「やはりな……。航、お前鳴海朱莉さんのことを好きなんだろう? 最後の写真を見れば……誰だって分かるぞ?」弘樹は溜息をついた。その言葉に航は思わず顔をカッと赤く染める。「いくら書類上とはいえ、朱莉さんはあの鳴海翔の妻なんだ。分かっているのか?」「そ、そんなことは十分、分かってる!」「不倫の代償が大きいのは知っているんだろう?」「……
Terakhir Diperbarui : 2025-05-07 Baca selengkapnya