Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 371 - Bab 380

408 Bab

3-19 それぞれの会食後 1

 21時半――会食も終わった頃、朱莉は猛に尋ねた。「あの、そろそろ失礼してもよろしいでしょうか? レンちゃんを寝かせつけてあげたいので」「ああ、そう言えばそうだったな。すまなかったね、楽しくてついこんな時間まで引き留めてしまって」「いえ、こちらこそお陰様で素敵な時間を過ごすことが出来ました。ありがとうございます」朱莉は頭を下げた。「それでは僕も失礼します。朱莉さん、一緒に帰ろう」翔は朱莉に声をかけた。「おい? 翔。今の言い方は何だ? 夫婦なんだから一緒に帰るのは当たり前だろう?」猛に指摘されて、一瞬翔はハッとした顔つきになったが、すぐに冷静な表情になる。「いえ、今のはほんの言葉のあやですから、気にしないで下さい」「会長、それでは私も失礼いたします」姫宮は深々と猛に挨拶をした。「ああ、姫宮。これからも翔のことをよろしく頼む」「はい、承知いたしました」「ところで翔、明日のお宮参りは何処の神社に行くことになったんだ?」「え? え……とそれは……」(しまった……まずいぞ。朱莉さんのことだからきっともう調べてあるだろうけど、何処の神社か確認していなかった)「水天宮に行く予定です」猛の突然の質問に翔は戸惑ったが、すぐに朱莉は答えた。「なるほど。水天宮か……うん。確かあそこは安産祈願で有名な神社だったな。それにしても翔……」猛はジロリと翔を見た。「お前……ひょっとすると朱莉さんに神社を探させたのか?」「あ……そ、それは……」翔が言い淀んだので、朱莉は咄嗟に口を出した。「翔さんはお忙しい方なので、私が自分で調べると申し出たんです」「なんだ。そうだったのか?」猛は朱莉に笑顔を向け、次に翔に視線を移す。「翔。お前は少しここに残れ。話がある」「はい……分かりました」翔はグッと歯を食いしばるように返事をした。そんな2人の様子を見て朱莉は心配になってきた。(大丈夫かな……? 翔先輩……)すると朱莉は突然姫宮から声をかけられた。「朱莉様、それでは私達はお先に失礼しましょう」「え? で、でも……」すると猛が言った。「大丈夫だ、朱莉さん。車の手配は姫宮がしてくれた。多分もう玄関前に着いてると思うぞ」「え? そうなんですか!?」(すごい姫宮さん。いつの間に……。やっぱりとても優秀な秘書なんだ)朱莉は隣に立っている姫宮を尊
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3-20 それぞれの会食後 2

 長い廊下を無言で歩き、猛は一つの部屋の前で止まるとドアを開けて電気をつけた。その部屋は猛の書斎である。20畳もある広い書斎に、高級書斎机と立派な肘掛椅子。さらに皮張りのソファの応接セットも置かれていた。猛はソファに座ると翔に声をかけた。「どうしたんだ? 翔、お前も早く座れ」「失礼します」翔がソファに座ると、猛は口を開いた。「翔。お前……色々と蓮の事朱莉さんに任せきりなんじゃないか?」猛の言葉に翔は一瞬冷や水を浴びせられた感覚を覚えた。「い、いえ。自分ではそのようなつもりは……」「そうか? お前は自覚が無かったのか?」「……」「朱莉さんに蓮の写真を何枚か見せて貰ったが、その写真には蓮しか写されていなかったぞ? 普通、家族写真があってもいいと思わないか? 朱莉さんにそのことを尋ねたら、答えに困っていたな……。だからお前に尋ねることにしたのだ。何故、お前達の家族写真が無い。いや。せめて朱莉さんが蓮を抱いている写真位はあってもいいんじゃないのか?」猛は翔を責め立てた。「……申し訳ございませんでした。色々忙しかったもので、つい家族写真がおろそかになってしまいました。明日は蓮の大切な行事ですので写真をきちんと撮ります」「……そうか。ところで翔、明日香はどうしてる?」「え?」翔は、どこか見透かしたかのような猛の目に思わず背筋が凍り付きそうになった――****「朱莉様、今日はお疲れ様でした」車内で姫宮が朱莉に声をかけてきた。「はい……正直、会長にお会いするまでは緊張していましたが、意外と気さくな方で安心しました」すると姫宮は笑みを浮かべた。「会長は朱莉様のことを気に入られておりますからね。でもあの会長に気に入られるなんて、中々無いことなんですよ。朱莉様は凄い方ですね」「い、いえ! わ、私なんて姫宮さんに比べたら全然駄目な人間ですから」「そんなことは無いですよ。朱莉様は努力家です。子育て教室に通った訳でも、誰からも子育ての方法を教わったことがなくてもきちんと蓮君を育てているではありませんか。しかも誰の手も借りずに。だから……そんな朱莉様だからこそ……」姫宮はそこで言葉を切った。「姫宮さん……?」「何があっても……朱莉様の身の保全はお守りしますね」「え?」(姫宮さん……突然何を言い出すの……?)朱莉は姫宮の意味深な言葉に
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3-21 待ち伏せ 1

 翌朝―- 「うわあ……レンちゃん。とってもよく似合ってるわ」朱莉は羽織付き袴のロンパースを着せた蓮を見て、微笑んだ。着物用ハンガーには事前にネット通販で購入したお宮参りに着せる黒の着物が掛けてある。背中に鷹をメインに宝船などが描かれた黒地の着物。柄は鷹を中心に松や小槌、軍配、飛翔鶴などの縁起の良い柄が描かれている。更にこの着物は仕立て直せば七五三の三歳時のお祝い着としても、袴を合わせて着用出来るようになっていた。「お天気にも恵まれて良かったね〜」手足をバタバタさせてこちらをじっと見ている蓮のほっぺにそっと触れた。朱莉はテーブルの上に置いたスマホに手を伸ばし、改めて内容を確認した。昨夜、日付が変わりそうな時間に翔からメッセージが届いたのだ。それは本日のお宮参りについての内容で、9時に迎えに行くから用意して待っていて貰いたいと書かれていた。時間を確認すると8時を過ぎていた。蓮のオムツの準備や、ミルクの準備は終わっている。ネイビーに水と餌をやり終えると朱莉は自分の準備を始めた。今日のスタイルは濃紺のワンピースに低めのヒール。朱莉は蓮の為にはお宮参りで色々と購入したが、自分の為には一切お金は使わなかった……とういうか使うことが出来なかった。翔にはカードで好きなだけ買い物をしても構わないと言われていたが、妻と言っても所詮偽装妻でしかない朱莉に取っては、どうしても遠慮せざるを得ない立場だった。  やがて時間になり、玄関のインターホンが鳴らされた。ドアアイで確認するとそこにはいつものスーツ姿の翔の姿が写っている。「おはようございます」ドアを開けながら翔を見て、朱莉は笑顔で挨拶をした。「ああ、おはよう」翔は元気が無さげに挨拶を返してきた。「翔さん、今朝はどうしたんですか? 瞼は腫れぼったいし、目の下にクマが出来ていますよ?」朱莉は心配になって尋ねた。「ああ。分かってしまったかな? 実は昨夜あまり眠れなくてね」気恥ずかしそうに翔は笑う。「何かあったんですか?」「それは……い、いや。車の中で話すよ。蓮を連れて来てくれるかな?」「はい、分かりました」朱莉はスリングを付けると蓮を抱き上げ、ママバックと畳んだ着物が入っているケースを持って来た。それを見ると翔は慌てた。「あ、すまなかった朱莉さん。まさかそんなに荷物があるとは思わなかったから。全
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3-22 待ち伏せ 2

(え? その声は……?)ドキッと心臓の音が高鳴り、鼓動が激しくなってくる。朱莉はゆっくり振り向くと、そこには京極の姿があった。彼の手には紙バッグが握られている。「京……極さん……」息を飲んで京極を見つめる朱莉。「朱莉さん。今日はいつも以上に素敵ですね。もしかして何処かへお出かけですか?」京極はにこやかに話しかけてくる。「は、はい……そうです。ところで京極さんは何故ここに?」返事をすると京極が近付いて来た。「何故ここに……ですか? それは僕がここに住んでいるからですよ? ここの住人ですから、いても不思議なことではありませんよね?」耳元に口を寄せるように語りかけて来る京極から朱莉は逃れるように後ずさった。「あの……本当に周りから誤解されるようなことは……お願いですからしないでいただけますか……?」朱莉は蓮を強く抱きしめたまま、京極を見た。朱莉の足は……少しだけ震えていた。「朱莉さん……。そんなに僕が怖いですか?」京極は悲しい目で朱莉を見つめながら尋ねるも、それには答えられず黙って俯く。すると、京極がため息をついた。「分かりました。怖い目に遭わせてすみませんでした。それでは失礼しますね」「は、はい……失礼します」朱莉は視線を合わせないように挨拶をすると、京極は立ち去って行った。するとタイミングよく、プレミアムブランド車がエントランス前に到着し、翔が車から降りてきた。「朱莉さん。お待たせ」エントランスに入って来た翔は、朱莉を見るなり顔色が変わった。「朱莉さん? どうしたんだ? 顔色が真っ青だけど?」翔はほんの少しの間離れていただけなのに朱莉のあまりの変貌ぶりに驚いた。「あ……だ、大丈夫です。少し気分が悪くなっただけですから」朱莉は無理に笑顔を作って返事をした。(駄目……言えない。翔先輩にはここに京極さんが現れたことは絶対に……!)「そうか? なら後部座席に座って水天宮に着くまで休んでいるといい。まあ時間にすれば30分位で着くみたいだから、あまり休めないかもしれないけど。チャイルドシートも後部座席に付けてあるからね」「え? 会長を迎えに行くのではないのですか?」朱莉はてっきり鳴海家へ寄るものだとばかり思っていた。「祖父はお宮参りが済んだら、またすぐに中国に戻るそうなんだ。だから別の車で来るよ。現地で待ち合わせなんだ」
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3-23 家族の真似事 1

「……さん、朱莉さん……」「え……?」誰かに揺さぶられる気配を感じ、朱莉は目を覚ました。するとそこには驚くほど至近距離で朱莉を見つめている翔の姿があった。「え……? え!? しょ、翔さん!?」あまりにも驚いたので、朱莉の頭は一瞬で覚醒した。「ごめん、朱莉さん。驚かせてしまったようだね? いくら呼び掛けても目を開けなかったものだから」「あ、いえ。私の方こそ、レンちゃんの様子を見ないで寝てしまって……」朱莉はそう言ったが、新生児がまとめて眠れるようになったり、ミルクを飲めるようになるにはまだ月齢は足りない。この頃の新生児を育てる母親は数時間ごとにお世話をしなくてはならないので、朱莉が寝不足気味になるのは致し方ないことだった。「大丈夫かい? もしかして疲れがたまっているのかい? 何か助けが必要なら相談に乗るけど?」「翔さん……」朱莉は今迄翔から辛辣な言葉は浴びせられたことはあるけれども、労いの言葉をかけて貰ったことが無いので正直、驚いてしまった。以前の朱莉なら盲目的に翔に恋焦がれていたから、この言葉だけで自惚れてしまっていたかもしれないが……今の朱莉は違う。あれ程恋い焦がれていた気持ちは、徐々に消え失せていたのだ。(駄目……もう翔先輩の言葉で浮かれては。後で冷たい言葉を投げかけられた時、それだけショックが強くなってしまうんだから)朱莉は自分に言い聞かせると、翔に返事をした。「いえ、大丈夫です。車内があまりにも心地よくてつい、眠ってしまったんです」「ハハハ……そうなのかい? それならまた言ってくれれば乗せてあげるよ? 勿論蓮も一緒にね」あまりにも想像もしていない返しをしてきたので、朱莉は驚いた。(え? う、嘘でしょう……? うううん、きっと冗談に決まってる)「そうですね。いつか機会があれば」朱莉は曖昧に言うと、蓮をチャイルドシートから降ろし、ベビーカーに乗せると翔にスリングを渡した。「翔さん。これはスリングと言って、抱っこ紐のようなものです。最初は慣れないと使いにくいかもしれませんが、使いこなせると本当に楽に抱っこできるようになるんですよ」「ええ? これが抱っこ紐なのか? 初めて見る形だ」帯状に広がった大きな布にリングが通った形状の抱っこ紐を翔は今迄見たことが無かった。「私は普段は横抱きにしているんですけど、今日はレンちゃんに着
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3-24 家族の真似事 2

 その後——朱莉は蓮を抱っこした翔を覆うように着物でつつみ、帯の間に縁起物のお守り袋を通して着せると、2人の姿はとても様になっていた。猛とは混雑の場合、見失わないようにと水天宮の寳生辨財天(ほうしょうべんざいてん)の前で待ち合わせをしていた。2人並んで待ち合わせ場所に向って歩きながら朱莉は話しかけた。「素敵ですよ、翔さん、レンちゃんも。よく似合っています。境内に着いたら早速お2人の写真を撮りましょうね」「ああ……そうだね」「あ、会長も中に入って、3人で御写真を撮ればいいですね」朱莉がにこやかに話す姿を見て翔は顔を曇らせた。「あ、ああ。そのことなんだけどね……朱莉さんも良ければ一緒に……」翔が言いかけた時、こちらに向かって猛が2人のスーツを着た男性と一緒に現れた。「もう、着いておられたのですね? 遅くなってしまい申し訳ありませんでした」「いや、気にするな。時間通りだからな。それに大変じゃ無かったか? 蓮にそれほどまでの準備を朱莉さんが1人でするのは……」「え?」(会長は私が1人で準備したことをどうして知っているんだろう?)朱莉は思わず翔を見上げるが、視線を合わせようとはしない。「うん。それにしても……本当に立派な着物だな。ありがとう、朱莉さん」猛は目元を嬉しそうに緩め、朱莉に頭を下げてきた。「い、いえ。そんなことありません。当然のことですから」(まさか大企業の会長が私なんかに頭を下げるなんて!)そして翔は、そんな2人の様子を黙って見つめていた——その後——3人で本殿で御参りを終えた後、神札所がある施設へと移動し、御祈祷の受付をした。呼ばれるまでの待ち時間、翔は猛と重々しい表情でずっと2人きりで何かを話しあっていた。その様子を少し離れた場所で朱莉は見守っていた。(一体何を話しあっているのかな……? でもきっと会社のことなんだろうな……)その時、朱莉のスマホにメッセージの着信があった。(誰からだろう……?)すると相手は姫宮からであった。開いてみると、短い文章が添えられていた。『朱莉様。お天気に恵まれて良かったですね』(姫宮さん……。プライベートなことなのにここまで思っていてくれるなんて……)朱莉はすぐに返信をすることにした。『ありがとうございます。お休みの日なのに、気に掛けていただいて本当に嬉しいです』そしてメ
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3-25 翔の葛藤 1

 家族写真を撮り終え、朱莉が蓮のオムツを交換する為に席を外していた。「翔。昨夜の話、ちゃんと理解したんだろうな?」猛は険しい顔で翔と話をしていた。「はい。勿論です」「もう本人には伝えてあるが……お前の代わりになれる者は、まだ他にもいると言うことを忘れるなよ?」「……はい、分かっています」(あの時……たまたま思いついて俺が写真を手にしたのは、このことを予兆していたのか……? 俺はいつまでお前の影に怯えていないといけないんだ……?)翔は唇を噛みしめ、グッと拳を握りしめたその時――「すみません。お待たせいたしました」ママバックを下げた朱莉が蓮を抱いて戻って来た。「朱莉さん、重かっただろう? 荷物持つよ」翔がサッと荷物を預かる。「え? あ、はい……」(やっぱり会長の前だと翔先輩は、すごく態度が変わるんだ)翔の様子を厳しい目で見守っている猛の視線に朱莉は気が付いていなかった——****「それじゃ、翔。朱莉さん、元気でな。必ず写真のデータを送って来るんだぞ?」車に乗り込んだ後も猛は何度も念を押してきた。「はい、大丈夫です。ちゃんと送らせていただきます」朱莉が答えると、ようやく猛は納得した。「そうだ。来年は我が会社が設立後40周年を迎えるんだ。そこで代表社員だけでなく他社のCEOにも出席してもらう新年会を兼ねた大規模記念式典を開催するからな?」(え!? 記念式典!?)朱莉はその様な話は初耳だったので驚いて翔を見た。しかし翔は朱莉に視線を合わすことなく返事をした。「はい、大丈夫です。朱莉さんも承知しているので」(ええ!? そ、そんな……!)「そうか、それでは2人供。今度会う時は来年の記念式典だな。ちゃんと蓮も連れて来るんだぞ?」「はい。勿論です」翔はにこやかに返事をするのを朱莉は呆然とした思いで聞いていた。「それでは朱莉さん、元気でな」不意に猛に声をかけられ、朱莉は慌てて挨拶をした。「はい。わざわざお宮参りに来てくださって、ありがとうございました」朱莉は丁寧に頭を下げると、猛は一瞬笑みを浮かべた後に険しい顔で翔を見た。「翔、上に立つ者は確かに強くなくてはならないが、守らなくてはならない者には親切にしてやらないと駄目だ。分かったか?」「はい。承知しております」「?」朱莉は何処か緊張感が漂う2人の様子を怪訝そうに見
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3-26 翔の葛藤 2

「何故驚くんだい? それに写真撮影に父親である俺がついて行くのは当然だろう?」翔の言葉に朱莉は目を見開いた。「で、でも……」翔の方からお宮参りは1人で行ってくとれと言っておきながら、突然意見を変えるとは思いもしていなかったからだ。もう朱莉には翔の考えが理解出来なくなっていた。唖然とした表情をしている朱莉を不思議に思い、翔は尋ねた。「どうしたんだ? 朱莉さん」「い、いえ。なんでもありません。それではよろしくお願いします。ところで食事の件なのですが……レンちゃんがいるので個室になっているお部屋か、お座敷の様になっているお店が良いのですけど。出来れば赤ちゃん連れが可能なお店でお願いします」「ああ、そうか。確かに言われてみればそうだね。蓮の事を考えて行動しなければいけなかったな。それじゃ少し調べてみよう」その後、翔がネットで『子供連れ可』のレストランを探している間に朱莉は車の中で蓮にミルクをあげていた。(翔先輩大丈夫かな……? 大分お店探すのに手間取っているようだけど……)やがて朱莉が蓮のミルクを飲ませ終って、蓮を抱きかかえていると憔悴しきった顔で翔が運転席に乗りこんできた。「……すまなかった、朱莉さん。どうしても店が見つからなくて……」「気にしないで下さい。元々家で食事をしてから写真撮影に行こうと思っていたので」朱莉の言葉に翔がシートベルトをしながら返事をした。「よし、ならすぐに帰ろう。俺が昼ご飯を作るよ」「え? 料理が出来るんですか?」朱莉は驚いた。「ああ。今は週に3日、家政婦さんがやって来て食事をまとめて作り置きしてくれているけど、元々料理は好きだからね。」「そうなんですか? そう言えば九条さんも料理が得意だと以前お話してくれたことがあります」朱莉はそこで、アッと思った。(ど、どうしよう……翔先輩の前で九条さんの話をしてしまうなんて……)しかし、翔は朱莉の考えに気付いていない様子で首を傾げた。「え? 琢磨が料理が得意だって? 朱莉さんにそれを言ったのかい?」「は、はい……」すると――「アッハハハハ……!」突然翔が笑い出した。今迄そのような笑みを見たことが無かった朱莉は驚いた。「ど、どうしたんですか?」「あ……い、いや……。あいつは全く料理なんか作れないぞ? せいぜいお湯を沸かしてインスタント麺を作るぐらいしか出
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3-14 明日香からのメッセージ 1

「朱莉さん、それじゃ先に蓮を連れて自宅へ戻って待っていてくれるかな? 車を駐車場へ入れて来るから」翔はエントランス前で車を停車させた。「はい、分かりました」チャイルドシートで眠っている蓮を朱莉はそっと抱き上げると、翔が車から降りてドアを開けてくれた。「あ、ありがとうございます」「ああ、足元気を付けて」「はい」朱莉は戸惑いながらも返事をした。「それでは先に部屋に戻っていますね」「ああ。荷物は俺が持って行くから、そのままでいいよ」「ありがとうございます」頭を下げて朱莉がエレベーターホールへ向かうのを見届けると翔は運転席に乗り込み、駐車場へと向かった。(明日香と俺はひょっとしたらも駄目かもしれない。あれから全く連絡がないし。そうなるとやはりこれからは朱莉さんとの未来を考えた方が良さそうだ。彼女には酷いことばかりしてきたから、親切にして少しずつ信頼を勝ち取っていかないとな)しかし、当の朱莉は翔がこのようなことを考えているとは思いもしていなかった——**** 朱莉は蓮を連れて自宅へ戻るとすぐにベビーベッドへ寝かせ、スマホをカバンから取り出すと着信が入っていたことに気が付いた。その相手は何と明日香からだったのだ。(明日香さん……一体何て書いてきたんだろう?)朱莉は明日香のメッセージを目を通した。『朱莉さん、今日は蓮のお宮参りに行ったのかしら? もし写真を撮ったなら画像を送って貰える? 蓮の様子を知りたいから。私はまだ長野県にいるわ。ここは田舎だけど、都会にいたら経験できないことで満ち溢れているのね。気に入ったわ。だから1週間くらいの予定だったけど、イラストが完成するまでは長野にいることにしたの。お土産は送らせて貰ったわ。東京に帰るのは半月後位になるかも。翔には私から連絡したくないから、朱莉さんから伝えておいてくれる。嫌なことを頼んでしまうかもしれないけど、よろしくね』そしてメッセージと共に1枚の画像ファイルが貼り付けてある。それを開いてみるとそこには満点の星空と駅が映し出されていた。「わあ……素敵な写真。それにしても何だか不思議。初めて会った時と、今の明日香さんはまるで別人みたい。それに翔先輩に私から伝えてって……。一体どうしたんだろう? 2人は恋人同士なのに」しかし朱莉自身も、翔に対する恋心がすっかり消えていることに気付いていない
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3-14 明日香からのメッセージ 2

それから約30分後――「よし、出来た」翔はテーブルに出来上がった料理を並べた。テーブルにはオムライス、コンソメスープにサラダが乗っている。「朱莉さん、出来たよ」リビングに顔を覗かせると、朱莉がソファの上で倒れ込むように眠っていた。その姿を見た翔はてっきり体調が悪くて倒れてしまったのかと勘違いして慌てて朱莉の側に行くと、朱莉は只眠っているだけだということが分かった。「何だ……眠っているだけか……」翔は溜息をつくと、朱莉の顔をじっと見た。(そういえば、こんな風に朱莉さんの顔を見ることって全く無かったな)翔の目には常に明日香しか映っていなかった。子供の頃に自分のせいで大怪我を負わせてしまったことに負い目を感じ、一生守っていかなければと思い、今迄生きてきた。でも結局、明日香はそれが負担に思うようになってきたのかもしれない。翔はそっと朱莉の髪に触れた。ストレートヘアの明日香とは違い、緩くウェーブのかかった細い髪質は手触りが良かった。思わず翔は朱莉の頬に手を触れ……そこで我に返り、慌てて手を離した。(お、俺は今何をしようとしていたんだ!?)翔は我に返り、一度深呼吸すると朱莉に呼びかけた。「朱莉さん、食事出来たよ」そして肩を軽く揺する。「う……う〜ん……」朱莉は小さく呻き、目を擦りながら身体を起こし……目の前に翔がしゃがんでいることに気が付いた。「翔……先輩……?」「え?」今迄一度もそのような呼び方をされたことが無かった翔は首を傾げた。「きゃああっ! す、すみません! 私、また眠ってしまったんですね!」朱莉は真っ赤な顔で飛び起きると頭を下げた。「いや、構わないよ。それより食事が出来たんだ。蓮が起きる前に食べよう」「は、はい。ありがとうございます」未だ赤い顔で俯きながら髪を撫でつけている朱莉の姿を見て翔は思った。(フフ……何だか子猫みたいだな……)朱莉は食事が並べられているテーブルを見て驚いた。そこには木製のトレーに美しく盛り付けられた料理が並べられていたからである。デミグラスソースがかかったフワフワのオムライスにオニオンスープ。サラダが盛り付けられていた。「す、すごい……。まるでお店のメニューみたいです」椅子に座りながら朱莉は目を見開いて料理を観察している。「そうかい? そう言って貰えると嬉しいよ。味も気に入ってくれる
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