21時半――会食も終わった頃、朱莉は猛に尋ねた。「あの、そろそろ失礼してもよろしいでしょうか? レンちゃんを寝かせつけてあげたいので」「ああ、そう言えばそうだったな。すまなかったね、楽しくてついこんな時間まで引き留めてしまって」「いえ、こちらこそお陰様で素敵な時間を過ごすことが出来ました。ありがとうございます」朱莉は頭を下げた。「それでは僕も失礼します。朱莉さん、一緒に帰ろう」翔は朱莉に声をかけた。「おい? 翔。今の言い方は何だ? 夫婦なんだから一緒に帰るのは当たり前だろう?」猛に指摘されて、一瞬翔はハッとした顔つきになったが、すぐに冷静な表情になる。「いえ、今のはほんの言葉のあやですから、気にしないで下さい」「会長、それでは私も失礼いたします」姫宮は深々と猛に挨拶をした。「ああ、姫宮。これからも翔のことをよろしく頼む」「はい、承知いたしました」「ところで翔、明日のお宮参りは何処の神社に行くことになったんだ?」「え? え……とそれは……」(しまった……まずいぞ。朱莉さんのことだからきっともう調べてあるだろうけど、何処の神社か確認していなかった)「水天宮に行く予定です」猛の突然の質問に翔は戸惑ったが、すぐに朱莉は答えた。「なるほど。水天宮か……うん。確かあそこは安産祈願で有名な神社だったな。それにしても翔……」猛はジロリと翔を見た。「お前……ひょっとすると朱莉さんに神社を探させたのか?」「あ……そ、それは……」翔が言い淀んだので、朱莉は咄嗟に口を出した。「翔さんはお忙しい方なので、私が自分で調べると申し出たんです」「なんだ。そうだったのか?」猛は朱莉に笑顔を向け、次に翔に視線を移す。「翔。お前は少しここに残れ。話がある」「はい……分かりました」翔はグッと歯を食いしばるように返事をした。そんな2人の様子を見て朱莉は心配になってきた。(大丈夫かな……? 翔先輩……)すると朱莉は突然姫宮から声をかけられた。「朱莉様、それでは私達はお先に失礼しましょう」「え? で、でも……」すると猛が言った。「大丈夫だ、朱莉さん。車の手配は姫宮がしてくれた。多分もう玄関前に着いてると思うぞ」「え? そうなんですか!?」(すごい姫宮さん。いつの間に……。やっぱりとても優秀な秘書なんだ)朱莉は隣に立っている姫宮を尊
Terakhir Diperbarui : 2025-05-10 Baca selengkapnya