Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 381 - Bab 390

408 Bab

3-15 翔の憂鬱

 2人で食事をとり終え、朱莉が席を立つ。「翔さん。後片付けは私がしますので時間まで休んでいて下さい」「片付けも俺がやろうと思っていたんだけど?」「いいえ、大丈夫ですよ。その替わり、もし蓮ちゃんが目を覚ましたらお願い出来ますか?」「ああ。それなら任せてくれ」翔はリビングへ向かい、ベビーベッドで眠っている蓮の顔を覗きこみながら思った。(うん。さっきの会話……まるで本当の夫婦みたいだったな。朱莉さんと本当の家族になる……悪い話ではないかもしれない)キッチンの方を見ると、朱莉はエプロンをして食器洗いをしていた。(そうか。きっと琢磨は朱莉さんのああいう家庭的な所が好きになったのかもな……)そこまで思い、暗い気持ちが蘇ってきた。(そうだった……俺はもう琢磨から縁を切られたんだっけな。自分から切った時とは違う喪失感だ……)その時、翔のスマホに着信が入ってきた。相手は姫宮からだった。内容はお宮参りの件についてだった。今日はお疲れさまでしたと書かれていたので、翔はこの後、写真を撮りに出かけることになっている旨を書いて姫宮に送信した。(そう言えばうっかり朱莉さんに記念式典の話をするのを忘れていた。各社のCEOも来ると言っていたな。他にも関連企業の重要ポストも来ると言っていたし。……あいつがやってきたらどうしよう……。何処のCEOがやって来るのか知らされていないし、尋ねてもきっと祖父は答えてくれないだろう。父なら知ってるだろうか……? でも俺には教えるなと口止めされているかもしれない。あいつは俺とは違って思慮深い男だから誘われても来ない可能性の方が高いが……。とにかく何があっても絶対に朱莉さんとあいつを会わせるわけにはいかない。会えば絶対驚くに決まっている。当日はなるべく俺の側から離れない様に言っておかないと……)今から憂鬱な思いになり、翔はため息をついた——**** 目が覚めた蓮のオムツ交換とミルクを上げると朱莉は翔に声をかけた。「翔さん。そろそろ写真を撮りに行きませんか?」持参してきたノートパソコンで仕事をしていた翔が顔を上げた。「ああ、そうか。もうそんな時間なんだね。よし、それじゃ行こうか」「あの……お仕事されてましたよね? 大丈夫ですか? 何なら私1人で行っても構いませんけど?」 すると翔が立ち上った。「何言ってるんだ。俺は蓮の父親な
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-11
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3-16 京極の過去と朱莉の意外な関係 

「ふ~ん……まさかとは思ったけど、本当に一緒に出掛けるとは……予想外のこよをしてくれるな……。鳴海翔め……」ノートパソコンを前に朱莉の隣を歩く翔を鋭い目で睨み付けている人物がいる。「本当に何処までも自分勝手な男だ」その声はぞっとするほど冷たいものだった。エントランスから朱莉と翔が蓮を連れて出ていく姿をカフェテラスからじっと見ていたのは京極だった。ここからならエントランスの様子が良く分かるからだ。「ねえ、あのお客様。さっきからずっとこのカフェにいるけど、何をしているのかな?」「パソコンを持ってるから仕事をしているんじゃないの?」「だけど、ここよりもご自宅の方が絶対いいと思うけど」「それじゃ待ち合わせなのかもね……」 しんとしずまり返ったカフェ。2人の女性店員が話をしているのだが、その内容が京極に筒抜けなのに気が付いていない。彼女達の話声を聞きながら京極はため息をついた。(全く……会話が筒抜けじゃないか。ここの店はきちんと従業員の教育をしているのか? それにしても、鳴海翔め……)ここ最近、翔の行動パターンが掴めなくなってきたことが腑に落ちない。いや、元をただせば明日香の一時的な記憶喪失のせいで、彼女自身の考えに大きな改変が見られたからだ。「このままではまずいな……」京極は小さく呟くと再びPCに目を落した——**** 京極は統計学と人間行動メカニズムについてのスペシャリストだった。そこへITを導入し、情報処理の会社を起業して僅か数年で急成長させることに成長したのだ。学生時代は奨学金を借りながら勉学に励んだ。中でも心理学の授業が好きで、いつしかその分野にのめり込むようになっていた。 気付けば京極の趣味は人間観察になっていた。大学で知り合った友人達は京極の趣味を知ると、自分の心を読まれるのでは無いかと怯え、1人、また1人と京極の元を去って行き、いつしか孤立していた。 すると途端に心が楽になった。1人なら誰にも自分の自由な人間観察の時間を奪われることは無いからだ。人間観察と言う歪んだ趣味を持つ京極。でも彼がこうなってしまったのには育ってきた環境が悪かったからだ。幼い頃の親族の裏切りや大切な家族との無理矢理の別れ、そして父の死。人間は何て醜い生き物だのだろう。彼等に飲まれない為には、自分はどうあるべきか……。そこで誰よりも優位に
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4-1 12月のある出来事 1

 季節は12月に入り、町はクリスマス一色になっていた。明日香はまだ長野から東京へ戻る気配は無かった。この頃になってくると蓮は身体に丸みをおびて、ぽっちゃりした体型に変化していた。「はーい、レンちゃん。オムツ変えてさっぱりしたね〜」朱莉がベビーベッドに蓮を寝かせた。「アーウー」蓮は手足をバタバタさせて朱莉を見ている。「フフフ……本当に可愛い。どんどん大きくなっていくね?」朱莉は愛おし気に蓮を見ながらそっと頬に手を当ててニッコリ微笑んだ。すると、蓮が朱莉に手を伸ばして言った。「ダーダー」「え? もしかして抱っこ? レンちゃん、抱っこして欲しいのかな?」朱莉が蓮を抱き上げると、蓮は嬉しそうに笑みを浮かべて、朱莉の胸に顔を埋めた。「レンちゃんが本当に私の産んだ赤ちゃんだったら良かったのにな……」朱莉は寂しげにポツリと呟いた。 13時―ベビーベッドで御昼寝をしている蓮の側で、朱莉はネット検索をしていた。蓮に初めてのクリスマスプレゼントを選ぶ為だ。(う〜ん。クリスマスの頃はレンちゃんは3カ月……この頃の赤ちゃんのおもちゃは……)朱莉はカチカチとマウスを動かしながら様々な商品を眺めていた。その時、朱莉のスマホに翔からのメッセージが届いた。「あれ? どうしたんだろう、こんな時間に……あ、まだお昼休みなのかも」あのお宮参りの日から、ほぼ毎日翔からメッセージが届くようになっていた。メッセージの内容はいつも殆ど同じで、朱莉が今日1日何をしていたのか尋ねる内容ばかりであった。なので朱莉は毎日蓮の報告をしていたのだが、今回の内容はいつもとは違っていた。『朱莉さん。もうすぐクリスマスだね。プレゼントは何が欲しい? 考えておいてくれないか?』「プレゼントか……。翔先輩もやっぱり蓮ちゃんにプレゼント考えているんだ。でも、パパだから当然だよね。きっと忙しくて探せないのかも。それじゃ私の分も含めてついでに探そうかな」そして朱莉はネット検索を再開した。****「翔さん、どうしたのですか? 先程から何かソワソワしていますけど?」コーヒーを翔のデスクの上に置きながら姫宮が尋ねる。「あ……実は朱莉さんにクリスマスプレゼントは何が欲しいのか分からないから先程、メールを送ったんだ。何が欲しいか考えておいてくれって。でもやはり本人に聞かないで、サプライズ的に渡す方
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-12
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4-2 12月のある出来事 2

考え込む翔に、再び姫宮は尋ねた。「どうされたのですか?」「い、いや。今迄の明日香との生活を振り返ってみたんだ。よくよく考えてみれば、俺は明日香に振り回されっぱなしの生き方をしていた気がする。明日香はいつも何処かピリピリしていて、時には腫れ物に触るような気持ちで接していたこともある。だけど今はすごく気持ちが楽なんだ。明日香の時々起こすヒステリーに付き合わされることも無いし。何ていうんだろう……朱莉さんは穏やかだから、一緒にいて楽な相手なんだ。だからこのまま明日香のことは放っておいてもいいんじゃないかと最近思うようになってきているんだ。明日香だって恐らくもう俺のことなんかどうだっていいと思っているのかもしれないしな」翔は、一気に自分の気持ちを吐露した。「ですが、そこに朱莉さんの気持ちは含まれてはいませんよね? 一番肝心なのは朱莉さんの気持ちだと思うのですが?」「え? 朱莉さんの気持ち……? いや……まさか偽装婚に応じる位なんだ。これが本当の結婚に変わるのに異論はないんじゃないかな?」「私が口を挟むべきことではないと思うのですが、やはり蓮君は明日香さんが産んだお子さんなのです。もう一度明日香さんとお話をしてから朱莉さんとのことは考えた方がよろしいかと思います」そこまで姫宮が話した時、翔のスマホが着信を知らせた。「あ、朱莉さんからだ……。クリスマスプレゼントの返信かもしれないな」翔は早速スマホをタップして、眉をしかめた。「……何だ? これは……?」「どうされたのですか?」「い、いや……クリスマスプレゼントのリクエストなんだが、歯固めのおもちゃか布絵本がいいと送って来ているんだ……」がっくり項垂れる翔。「あ、朱莉様らしいですね……。どうやら蓮くんのクリスマスプレゼントのリクエストだと思ったらしいですね」姫宮は笑いをこらえ、肩を震わせる。「そうだった……。朱莉さんは鈍い女性だったて言うことを忘れていたよ。だけど考えてみれば蓮にとっての初めてのクリスマスだからな。クリスマスホームパーティーを開いてみるのもいいかもな」翔の言葉を姫宮は黙って聞いていた——****——その一方……朱莉は蓮に渡すプレゼントを決めた。それは天井一杯に映像が広がる「お休みシアター」。可愛らしいアニメーションだけでなく、美しい星空も投影してくれる、ちょっとしたプラネ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-12
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4-3 亀裂 1

 朱莉は急に泣き崩れた明日香を見て驚いた。「明日香さん? 一体どうしたのですか? 何かあったのですか?」静かな声で語りかけると明日香は顔を上げて朱莉を見た。「しょ、翔が……」「翔さんがどうかしたのですか?」「わ、私……実は3日後に…東京へ戻るつもりでいたのよ……」すると再び明日香は嗚咽しながら、ポツリポツリと語り始めた――**** 今を遡ること8時間前の出来事だった。——14時過ぎ この日も明日香はホテルでイラスト制作の仕事をしていた。作業はいよいよ大詰めで星空の背景を加工する作業まで進んでいた。その時、明日香のスマホに着信が入ってきた。(もしかしたら出版社からの催促かもしれないわね……)そう思った明日香はスマホをタップしてメッセージを表示させると、相手は翔だった。(何よ……全く。翔ったらこっちから連絡を入れるまでは一切構わないでと伝えてあったのに……)明日香は半ばうんざりしながら、内容を読んだ。『明日香。もう1カ月以上も連絡が取れなくなって不安で堪らない。俺にはやっぱりお前が必要なんだ。頼む、愛しているんだ。お願いだからすぐに帰って来てくれないか? 明日香が傍にいてくれないと頭がおかしくなりそうだ。このままでは仕事に悪影響を及ぼしかねない。一生のお願いだ。俺の側にいて欲しい』「な、何なのよ……この女々しい文章は。だけど、ここまで必死にお願いされたなら流石に一度は東京へ戻らないとまずいかもね。全く世話の焼ける人だわ」明日香は溜息をつくと今迄描いていたイラスト作業を中断し、画像を保存すると電源を切った。その後、ネットで電車の時刻表を確認すると出発する為に部屋の片づけ作業を始めたのだった。 1カ月以上滞在していたホテルを出る時、総支配人が挨拶にやって来た。この人物はまだ30代前半とみられる男性ではあったが、中々のやり手であった。他のホテルには見られないきめ細かなサービスが明日香の長期滞在のポイントとなったのだ。「鳴海明日香様。長期滞在の場所を当ホテルに選んでいただきまして、誠にありがとうございました」丁寧に挨拶する総支配人。「いえ、こちらこそお世話になったわね。そうだわ、ほんのお礼にイラストを描いたの。良かったら受け取ってくれる?」明日香は自分が描いたイラストを総支配人に手渡した。それは沢山の銀河が描かれた幻想的なイラストだ
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4-4 亀裂 2

 21時過ぎ—— イラストの仕事も無事終わり、部屋でワインを飲みながら明日香は翔の帰りを待っていた。すると玄関のドアが開けられ、慌てた様子で翔がリビングへ入って来たのだ。そして明日香を見ると驚愕の表情を見せた。「あ、明日香……う、嘘だろう……?」そんな様子の翔を見て明日香は思った。(ふふ……本当に今日帰って来るとは思わなかったみたいね。あんなに驚いた顔して……)「ほら、約束通りちゃんと帰ってきたわよ? 翔」笑顔で翔を迎える明日香。(どう? あれ程私に泣きついてメッセージを送って来たんだから……さぞ嬉しいでしょう?)しかし、翔の反応は意外なものだった。「ど、どうして突然帰って来たんだ?」困ったような顔を浮かべる翔を見て明日香はカチンときた。「どうしてですって? 翔! 貴方が私に早く帰って来てくれと泣きついてメッセージを送って来たからでしょう!?」「メッセージ? 何のことだ?」翔はポカンとした顔をしている。「とぼけないでよ! 今日私のスマホに送って来たじゃないの! 証拠だってあるのよ!」明日香は自分に届いたメッセージを表示させて翔に突き付けた。「!」そのメッセージを読みながら、翔の顔色がみるみる青ざめていく。「な、なんだ……? このメッセージは……確かに俺のアドレスだが、こんなメッセージ送っていないぞ……?」その声は震えている。「何ですって? 翔じゃ……無いの? このメッセージを送って来たのは……」「あ、ああ。大体明日香は俺に言ったじゃないか。一切俺からは連絡を入れるなと……だから俺は約束を守ってきたのに……」何故か困った表情を浮かべる翔。「じゃあ誰がこのメッセージを私に送ってきたっていうのよ……?」「そんなのは知らない。大体、俺は自分のPCにパスワードだってかけてある」「誰かにPCを乗っ取られたんじゃないの? それってかなりまずいわよ?」流石に明日香も心配になってきた。「あ、ああ。明日、朝一で手配するが取りあえず警備員に連絡を入れておこう」その後、警備員に連絡し終えた後に翔は明日香の向かい側のソファに座った。「もうてっきり帰って来ないと思っていたよ」「そんなはずないでしょう?」明日香はワインを飲みながら翔の様子を伺った。折角一月ぶりに帰って来たと言うのに、何故か翔は喜んでいないように見えたのだ。「ねえ、
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4-5 翔の後悔 1

  泣き崩れながら今迄の経緯を話す明日香の話を、朱莉は信じられない思いで聞いていた。(何? その話……幾ら何でも明日香さんに酷すぎる……)そこで朱莉は明日香に声をかけた。「明日香さん。お疲れでしたでしょう? お部屋を用意してきますから今夜はもうお休み下さい。私から翔さんに詳しくお話を聞いてみますから」「朱莉さん……ごめんなさいね。め、迷惑ばかり……か、かけて……」明日香はすすり泣きながら謝罪の言葉を述べる。「私なら大丈夫です。それよりもまずは明日香さんと翔さんの問題を解決しないと。お二人で話は難しいでしょうから私から翔さんに話を聞いてみますね? とりあえず今夜はもう休んで下さい」「え、ええ……。あの……待ってる間……蓮を見て来てもいい?」明日香は涙を拭いながら朱莉に尋ねた。「勿論ですよ。何と言っても明日香さんは蓮ちゃんのお母さんですから」「お母さん……私が……」明日香はポツリと呟くと、隣のリビングへ移動して行った。その後ろ姿は……酷く憐れだった。「明日香さん……」(翔先輩は一体何を考えているのかな? 長野から東京まで戻って来たばかりの明日香さんに対して、幾ら何でもこんな仕打ちをするなんて……酷過ぎる)朱莉は溜息をつくと、客室の用意をした。「明日香さん。お布団用意しましたからお休み下さい」しかし、明日香は余程疲れていたのか既にリビングのソファの上で眠っていた。そこで起こすのも忍びないと思った朱莉は客室の布団を持って来ると明日香の身体の上に掛けてあげた。(それにしても、明日香さんに届いたメッセージ……一体誰が送って来たんだろう? そんなことをして何になるっていうのかな?)朱莉にはいくら考えても分からなかった。その時、突然朱莉のスマホに翔からの着信が入ってきたのだ。(翔先輩!)朱莉は驚き、明日香の様子を伺ったが、既に深い眠りについているようで起きる気配は無かった。朱莉は明日香の様子を伺いながら電話に出た。「はい、もしもし……」すると電話越しからは軽やかな翔の声が聞こえてきた。『やあ、今晩は朱莉さん。夜分にすまないね。今ちょっと電話いいかな?』「はい、大丈夫です。私も丁度お話したいと思っておりましたので」『本当かい? それは光栄だ』どことなく浮かれた感じの翔の声色に朱莉は不思議に思った。(明日香さんにあんな酷い態度を取
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4-6 翔の後悔 2

翔の態度に不信感を抱いた朱莉は、話を切り出すことにした。「翔さん、その前に少しお話したいことがあるのですが。よろしいですか?」『ああ? 何だい?』「今明日香さんが家に来ているんです。疲れた様子で既にお休みですけど」朱莉は冷静に言った。『!』電話越しからも翔の息を飲む様子が伝わってくる。『明日香が朱莉さんの所へ……? 信じられないな……』「いえ、事実です」『2人は……それ程仲が良かったっけ?』翔は今更ながら妙な質問をしてきた。「そうですね。沖縄以来、以前と比べて関係は良好ですよ?」『そう……か』「翔さん。大体のお話は明日香さんから伺いました。明日香さん、酷く泣いていました」『急に長野から戻って来たから俺も驚いてどうすればいいか一瞬分からなくなってしまったんだよ』「明日香さんの話では、まるで翔さんは明日香さんに戻ってきて欲しく無かったと言ってる様に聞こえたと話していましたよ?」『……』しかし、翔からの返事は無い。「翔さん……まさか本当に明日香さんのおっしゃった通りなのですか……?」『い、いや。そういう訳ではないんだが……』歯切れが悪そうに答える翔に朱莉は言った。「今夜一晩明日香さんはお預かりしますが、きちんとお話された方が良いかと思います。レンちゃんの為にも」『あ、ああ分かったよ。それで……』翔が言いかけた時、蓮がぐずりだした。「あ、すみません。レンちゃんが目を覚ましたようなので……電話、切らせていただきますね」『分かった、それじゃ蓮をよろしく頼む』「はい、失礼します」朱莉は電話を切ると、急いで蓮の元へ向かった――****電話を切った後――「ふう〜……参ったな……。まさか明日香が朱莉さんの所へ行ってるとは思わなかった」翔は溜息をついた。「くそ! それにしても誰の仕業なんだ? あんなメールを送るなんて……。あの内容を送り付けたのは俺達の事情を知っている人間の仕業に違いない。ひょっとして姫宮さんが犯人なのか……? あまり内部の人間を疑いたくは無いが……。いや、待てよ? 今日彼女は殆ど社にいなかったぞ? ずっと今日は外に出ていたよな? 社長室の戸締りだって俺が自分でしているし……。彼女が犯人のはずは無いな。どのみち、セキュリティをもっと上げなければ……外部にデータが漏れたなら一大事だ!」翔は髪をクシャリと書き
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4-7 報復を誓う男 1

 翌朝―― 自分のアドレスで明日香に不可解なメールを送りつけられた翔。今朝は不機嫌なまま8時に出社して来た。すぐに社内のネットセキュリティ対策部のエキスパート社員にPCを調べて貰った所、やはり外部からの侵入が認められ、一度だけ使用された痕跡が見つかった。そこでパスワードのリセット及び再設定を行った。そして変更が終わった後にマルチウェアに感染している可能性を視野に入れ、パソコンをネットから切り離しセキュリティ対策ソフトで完全スキャンを行い、作業は終了したのだった。  やがて9時になり、姫宮が出勤して来た。「おはようございます。翔さん」姫宮はデスクの前にいる翔に頭を下げて挨拶をした。「ああ、お早う。実は姫宮さん。君に聞きたいことがあるのだが……」椅子に座ったままの翔は神妙な面持ちで姫宮を見上げた——****同時刻——トントントントン……「う〜ん……」明日香はまな板の音と、味噌汁の匂いで目が覚めた。その際自分が何処にいるのか一瞬分からなくなってしまった。辺りを見渡し、自分がソファの上で眠っていた事に気が付いた。明日香の身体には布団が掛けてある。ボンヤリする頭を押さえながら起き上がった時、リビングに置かれたベビーベッドから小さな音が聞こえてくるのに気が付いた。「……」中を覗き込むと、蓮が起きていて小さな手足をバタバタ動かしていた。そして明日香を見た。「ダー」小さな声で言って、じっと明日香から目を逸らさない。(この子は私の産んだ子……)明日香はそっと蓮に手を近付けると、蓮はそのとても小さな手で明日香に触れた。(柔らかくて暖かい……)明日香はその事を知った時、胸に熱いものが込み上げてきて、声を殺して泣いた。「明日香さん!? どうされたんですか?」すると気配に気が付いたのか、朱莉がキッチンから顔を覗かせ、明日香が泣いていることに気付くと慌ててやって来た。「どうしたのですか? 明日香さん。何処か身体の具合でも悪いのですか?」朱莉は心配そうに明日香に尋ねてくる。「朱莉さん……」どうして彼女はこんなにも自分のことを心配してくれるのだろう? あんなに意地悪なことを沢山して酷い目に遭わせたのに……どうしてあの頃の自分はあんなに残酷な事を平気でする人間だったのだろう……。そう思うと、涙が溢れて堪らない。「朱莉さん……私……」する
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4-8 報復を誓う男 2

――11時 明日香は玄関に立っていた。「明日香さん、本当にホテルに泊まられるのですか?」朱莉は明日香に再度尋ねた。「ええ、先程ネットでホテルも予約したしね。これから部屋に戻って宿泊準備を終えたら、すぐに行くわ」「あの……翔さんに報告は……?」朱莉は言いにくそうに尋ねた。「いいわ、置手紙を書いていくから。朱莉さんも、もう暫く放っておいてくれていいわよ。これ以上、迷惑を掛けたくないから」「明日香さん……」「大丈夫よ、朱莉さん。貴女にはちゃんと定期的に連絡入れるから」「はい、それでは私もレンちゃんの写真付きのメッセージを送りますね」「あ、ありがとう……」明日香は頬を染めてポツリと言うと、朱莉の部屋を後にした――「ふう……」朱莉は小さくため息をつくと、PCを開いて通信教育の勉強を始めた……。****「ねえ……また例のお客様、来ているわ」「本当ね。この間も長い時間滞在していたけど、今日も開店時間からきているわよ?」億ションに併設するカフェ。また前回と同様同じ女性店員同士が京極を見て、ヒソヒソと囁き合っている。(全くよく回る口だ。あの2人は仕事と言うよりもここへ遊びにきているつもりじゃないだろうな?)京極はPC画面に目を落しつつも、耳は2人の女性店員の会話を拾っていた。(もっとも、俺も人のことは言えないか……。俺の趣味は人間観察だ。彼女達とさほど趣味の違いは無いかもしれないな……)そして先程、京極は億ションを出て行った明日香の様子を思い出していた。(あの気が強く、プライドの高い明日香のことだ。恐らく昨夜は鳴海翔の元を出て、朱莉さんの住む部屋を訪ねたのだろう)そこまで考えた時、京極のスマホに着信が入った。「もしもし……分かってる。……え……? 勝手なことをするなって……? ああ、約束する。もう迷惑をかけるような行動はとらないよ。すまなかったな……」京極は電話を切ると溜息をついた。(全く……鳴海家の人間はこちらの予測とは違う行動パターンを取ってくるから質が悪い……。だが絶対お前達の望み通りに等させるつもりはないからな。必ずあの時の報復をして、思い知らせてやる。俺の舐めた苦汁をお前たちにも味合わせてやる……!)ギリリと歯を食いしばりながら、京極は再びPCのキーを叩き始めた——**** 21時―― 翔は疲れ切った顔つきで、
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