いよいよ明日はクリスマス・イブ。蓮に取って初めてのクリスマスである。朱莉はまだ蓮が赤子であるにも関わらず、準備に余念が無かった。ツリーはもう半月前から飾ってある。壁にはリースを飾り、バルコニーにはちょっとしたイルミネーションも設置した。何故ここまで朱莉がクリスマスの為に準備をしているかと言うと、それは自分の少女時代の記憶にある。あの頃の朱莉は裕福な家庭で育っていた。しかし、家業が外食産業と言うことで、クリスマスなどのかき入れ時は両親は家で過ごすことは叶わなかった。その代わりに、両親は忙しい仕事の合間に、少しずつクリスマスの飾りつけを行い、朱莉が寂しくないようにクリスマスは盛大な飾りをしてくれたのである。「フフ……この飾りを写真に撮って……あ、動画撮影もいいかな。いずれレンちゃんがもっと大きくなったら、いつか私が撮影したクリスマスの思い出の動画を観て欲しいな……」朱莉が蓮といられるのは状況次第では長くても後4年。それが過ぎればお別れが来る。蓮の記憶に自分が残らない内に朱莉とお別れをするのがお互いに取って一番なのは分かっているが、出来ればほんの少しでも蓮の記憶の中に自分を残して欲しい……。それが朱莉の本心であった。朱莉は飾りつけをしながら、バウンサーの上でクリスマスオーナメントを口に入れようとしている蓮を見た。「あらあら、レンちゃん。それはお口に入れない方がいいよ? はい、その代りこれ」朱莉はガラガラを振りながら蓮に見せた。「ダーダー」蓮がオーナメントを離してガラガラに手を伸ばしてきたので朱莉は笑顔で渡した。「はい、どうぞ。レンちゃん」言いながら手渡すと蓮はガラガラを手に取るとすぐに口にくわえて遊び始めた。「フフフ……レンちゃんは本当にお利口さんですね~」朱莉は蓮の頭を撫でると、飾りつけの続きを始めた――**** その日の夕方——朱莉が夕食の支度をしていると翔から突然電話が入ってきた。「はい、もしもし」『朱莉さん、仕事が終わったら少しそっちに寄らせてもらってもいいかな? 話があるんだけど』「はい、いいですよ。あ、翔さん。もしよろしければ、お夕飯食べていきますか?」『あ……い、いや。それじゃ迷惑かもしれないし……』「そんなこと無いですよ。今夜はおでんなんです。もう多めに仕込んであるのでよろしかったらどうですか?」『そうかい?
Terakhir Diperbarui : 2025-05-14 Baca selengkapnya