Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 411 - Bab 420

420 Bab

4-29 姫宮の言い分 1

 点灯式も無事終わり、翔は朱莉の元へ向かおうとした時、姫宮に声をかけられた。「お疲れさまでした、副社長」「ああ、お疲れ様。それじゃ俺は朱莉さんの処へ行くから」「お待ちください、副社長」翔が背を向けて歩き出そうとした時、姫宮が呼び止めた。「姫宮さん、悪いけど今俺は朱莉さんに話が……」「はい、その件で私からお話があります」「え…? その件て……もしかするとさっきの男の件か?」「はい、そうです。こちらでは少しお話ししにくい内容なので……受付のソファに移動しませんか? 今の時間は殆ど人がおりませんので。それに朱莉様の耳にはあまり入れたくないお話ですので、少し別の場所でお待ちいただくよう伝えてまいります」姫宮はそれだけ告げると朱莉と蓮が座っている観客席ブースへと向かった。「朱莉様」「姫宮さん……。こんばんは」朱莉は立ち上がって挨拶をした。「朱莉様……大変なことになってしまいましたね」姫宮は同情心を露わに朱莉に話しかけてきた。「姫宮さん……か、彼は……」朱莉は声を震わせた。「いいのですよ、朱莉様。私には説明は不要ですから」それはまるで何もかも分かり切っているような口ぶりだった。「朱莉様、副社長にはどう説明されるおつもりですか?」「……」朱莉は黙ってしまった。何も妙案が思いつかなかったからだ。朱莉のそんな様子を見ていた姫宮が言った。「私にお任せ下さい。副社長を納得させる理由を思いつきましたので。ただし朱莉様は後程副社長に何か言われても決して反論しないで下さいね。この件につきましては安西さんも納得されているので」「え? 航君が……ですか?」「はい、そうです。全て私に一任されましたから。今は朱莉様の立場を守るのが最優先ですから」姫宮の言葉に朱莉は尋ねた。「何故……姫宮さんはいつもそうやって私を助けてくれるのですか……?」すると姫宮はフッと笑みを浮かべる。「今はまだお話しできませんが……いずれお話しいたします。それまでは……待っていて下さいね、朱莉様。外は冷えますので、一度第2ビルのロビーでお待ちください。私が副社長と話をしてまいります」そして姫宮は一礼すると急ぎ足で去って行った。「姫宮さん……」(どうして貴女は……そこまで私の為に……?)「レンちゃん。それじゃ寒いから中へ入ってパパが来るの待っていようね」朱莉は蓮をあ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-15
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4-30 姫宮の言い分 2

「落ち着いて下さい。彼の行動がエスカレートしていたのは今まで翔さん……貴方と会ったことが無かったからです。でも今夜翔さんと会って、目が冷めたそうです」「あいつが……? そんなことを言ったのか?」(本当の話だろうか……? あの男が朱莉さんを見る目は……完全に男が女に惚れている目つきだったぞ?)しかし、姫宮はきっぱりと言い切った。「はい、もう金輪際朱莉様に二度と付きまとわないと約束しました」「しかし……やはり訴えたほうが……」「翔さん。それは我が社のスキャンダルに発展してしまいますよ?鳴海グループの御曹司の妻がストーキングされていたとなると、マスコミはどのように面白おかしく騒ぎ立てるか分かったものではありません。最悪、契約婚のことも公になってしまう可能性があります。訴えるのは得策ではありません。それに朱莉様も望んでおられないと思います」「朱莉さんが……?」「はい、朱莉様はおとなしい方です。目立つのを極力恐れます。それに彼に約束させました。もしもう一度同じ行いをした場合は社会的制裁を与えると告げました」「社会的制裁……」「はい、鳴海グループの力を持ってすれば簡単なことだと思いますが、心優しい朱莉様はそれを望んではおられません。なので……今回の件はこれで全て解決済みです」「解決済み……」翔は姫宮の言葉を口の中で繰り返した。「し、しかし……」翔が尚も言いよどむも……。「それに元はと言えば、こうなったのは多少なりとも翔さんにも責任があると思いますが……?」姫宮の言葉は的を得ていた。(そうだ……俺が契約妻の朱莉さんを今まで蔑ろにして……いわば彼女を放置状態にしていたから妙な男に付きまとわれたんだ……)「そうだな……俺にも責任の一環はあるよな……」「はい。だからあまり朱莉様を追及されないで下さい。いわば朱莉様はストーカーの被害者ですから」****「翔先輩……まだ話終わらないのかな……」朱莉は第二ビルのロビーのソファで蓮にミルクをあげながら翔の来るのを待っていた。蓮にミルクを与え、抱っこをしていると翔がガラス越しからこちらへ向かってやって来るのが目に入った。翔も朱莉の姿に気が付いたのか手を振って笑顔でこちらへ向かって来る。(え……? 笑顔……? どうして? もっと機嫌悪い顔で来ると思っていたのに……)「朱莉さん、お待たせ」翔は笑顔
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4-31 姫宮と京極 1

「ええ……今からそっちへ行くから……分かってるわね? 私の言いたいことくらい。それじゃ、又後で」姫宮は電話を切るとため息をつくと足早に目的地へと向かった――****——ピンポーン 京極の億ションのインターホンが鳴った。「来たか……」気だるげに立ち上がると京極はドアを開けた。目の前には怒りを抑えた姫宮がそこに立っていた。「正人……私が何をしにここへ来たのか分かってるわよね?」「ああ、分かってる……。人目に付いたらまずいんだろう? 中へ入れよ」姫宮は返事もせずにヒールを脱ぐと、部屋へ上がり込んできた。そして洗面台へ行くと手洗いにうがいをして部屋へ戻って来た。「全く……相変わらずその辺はきちっとしてるよな?」京極は腕組みをして姫宮の一連の行動を見ていた。「何言ってるの? こんなのは当然のことでしょう?」一瞥すると姫宮は冷蔵庫を開けてビールを取り出し、ダイニングテーブルに座るとプルタブを開けて、一気に飲んだ。「おいおい……いきなりここへきてビールとは……らしくないじゃないか?」すると姫宮は缶ビールをテーブルの上に置いた。「何言ってるの? お酒でも入らないとさすがに今夜は話もしたくないわ。正人……貴方、一体なんて真似をしてくれたの? 今度という今度は流石に黙っていられないわ」「安西航を会場に向かわせたことか? ……本当に彼は俺の予想外の行動を取ってくれるよな? ククッ……」肩を上げて笑う京極を姫宮は鋭い剣幕で言った。「何言ってるの!? 本当はこうなることが分かっていて彼をあの場に行かせたんでしょう? しかも自分の手を汚さずに。安西君と一緒にいた女性は一体誰なの?」「ああ……彼女は俺の会社の新入社員だよ。ほんと、驚いたよ。まさか彼女があの安西と知り合いで……しかも彼に思いを寄せているとはね」「酷い男ね。何も関係無い自分の社員を利用するなんて。彼女、安西君に心無い言葉を投げつけられて……気の毒だったわ」「そうか……。でも意外とあの2人はお似合いだと思わないか? 2人がうまくいけば俺は恋のキューピッドって言うわけだ」あくまでもひょうひょうと語る京極に姫宮はぴしゃりと言った。「ふざけないで! 正人は朱莉さんから鳴海翔を引き離す為にはどんな手段を取っても構わないと思っているの? 本当に安西君にも酷いことをしてしまったわ。あれではもう彼は
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4-32 姫宮と京極 2

 京極の様子を見ていた姫宮は声をかけた。「ねえ正人。それだけ朱莉さんを思っているなら、何故彼女が窮地に追いやられるような真似をするのよ? 結局貴方は鳴海翔を追い詰めることだけを考えて、その結果朱莉さんを苦しめているのよ? そもそも今夜安西君をあの場に呼び寄せたのも、最近雰囲気の良くなってきた朱莉さんと鳴海翔に嫉妬してわざとトラブルを起こしそうな安西君を利用したのでしょう? それだけじゃない。更により一層、安西君を朱莉さんから遠ざける為にわざと仕組んだのは分かり切っているのよ? まさに一石二鳥だったと言う訳よね。最終的に正人の思惑通りになったのだから」「ああ。静香にはいつも感謝しているよ。いい働きをしてくれるからな」笑みをうかべる京極。「ふざけないで! とにかく以前にも似たような話はしたけれど、もう一度言うわ。これ以上余計な真似はしないで。貴方が勝手に動く度に尻拭いさせられるこっちの身にもなって欲しいわ。あまりこれ以上目に余る行動をするなら私はもう手を引かせて貰うからね?」姫宮は立ち上がった。「帰るのか?」「ええ、そうよ。明日も仕事だしね」玄関まで出て来た京極は尋ねた。「静香、車で家まで送ろうか?」「いいえ、結構よ。それこそ一緒にいるのを見られる方がまずいんじゃないの?」コートを羽織った姫宮が京極を振り返る。「別にいいじゃないか……見られたって。だって俺達は実の兄妹なんだから」「!」何処か笑みを浮かべながら京極の言った台詞に一瞬姫宮は固まる。「まだ……私を恨んでるの……?」姫宮がポツリと言った。「恨む? 何故だ? あれは大人たちが勝手に決めたことで、静香には何の関係もない話だろ?」「……」姫宮は何か言いたげに京極を見上げた。「それじゃあね、正人」それだけ告げると、京極の部屋を後にした――**** 「さあ、朱莉さん。好きな料理を遠慮なく頼んでいいよ?」2人は完全個室型の掘りごたつがある和風ダイニングカフェに向かい合って座っていた。蓮はお店のベビー布団を借りて朱莉の側で眠っている。「翔さん……クリスマスの季節なのによくこんな人気店予約出来ましたね?」朱莉はキョロキョロ部屋の様子を見渡した。「ああ一月ほど前に予約を入れていおいたんだ。気に入ってくれたかな?」「はい、勿論です。お座敷があるレストランって素敵ですね。だって
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4-33 クリスマス・イブのディナーの席で 1

 食事もほぼ終盤に差し掛かった頃、朱莉が言った。「あ、そう言えば翔さんにクリスマスプレゼントを渡そうかと思って持って来たんです」「え? 俺にクリスマスプレゼント?」あまりの突然の話に翔は不意を突かれたかのように顔を上げた。「はい、気に入って頂ければよいのですけど……」朱莉はショルダーバックから青いリボンでラッピングされた手のひらに乗る程の箱を手渡した。「開けて見てもいいかな?」箱を手に翔は尋ねた。「はい、どうぞ」朱莉に言われてリボンを解き、箱の蓋を開けると中にはブランド物のキーケースが入っていた。「これは……車のキーケース?」「はい、そうです。以前車に乗せて頂いた時…キーケースが付いていなかったので。自分で車を運転するようになって気が付いたんですけど、キーケースはあれば便利だなと思って。もしよろしければ使って下さい」「……ありがとう」(そんなことまで気付いていたのか)翔は感動しながら礼を述べたのだが……。「朱莉さん……すまない。俺は結局朱莉さんに何をプレゼントしたら良いか分からなくて」翔はばつが悪くて朱莉の視線から目を逸らした。「もう頂いてますよ」「え?」「今日のディナーが私にとってのクリスマスプレゼントですから」そう言って朱莉はニコリと微笑んだ。「朱莉さん……」翔は言葉を詰まらせた。(これが明日香だったら、高級アクセサリーとか香水をねだってくるところなんだがな)そこまで考えて、翔はようやく明日香のことを思い出した。明日香からは一度も連絡は来ていない。再び黙り込んでしまう翔を見て、明日香のことを考えているのだろうと朱莉は気付いた。「翔さん、明日香さんのことでお話があるのですけど」「え? 明日香?」翔は驚いて顔を上げた。「はい。翔さんからお迎えに行かれてはどうでしょうか? ひょっとすると明日香さんは待っているのかもしれませんよ?」「明日香が俺を……?」(本当にそうなのだろうか? ここまで明日香から何も言ってこないと言うことはもう俺に愛想を尽かして他の男と恋愛関係に陥っているかもしれないと思うのだが……?)はっきり言えば翔は明日香を迎えに行くつもりはさらさら無かったが、朱莉の真剣な眼差しで自分を見つめてくると、このままでは流石にまずいと感じた。(ここで明日香に対して誠意ある行動を朱莉さんの前で見せておか
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4-34 クリスマス・イブのディナーの席で 2

「で、でも……いきなり長野へ行こうと言われても…」朱莉が困った顔をする。「え? 何か問題でもあるのか?」翔が不思議そうな顔をする。「翔さん。明日香さんをお迎えに行くのですよね? 明日香さんは翔さんに取って大切な女性じゃないですか。それなのに私が付いて行くのはさすがにどうでしょうか? 恋人を迎えに行くのに、別の女性が付いて行くのは流石にあり得ないと思うんです。折角のお誘いなのに申し訳ありませんが、明日香さんのお迎えはどうか翔さん、お1人で行っていただけますか? 私は東京で翔さんが明日香さんを連れ帰って来るのを待っていますから」「朱莉さん……」思いつめた表情で語る朱莉の顔を、翔は呆然と見ていた。その言葉から、朱莉は翔が明日香とやり直すことを切に願っているのだと知り、同時に少し落胆する気持ちが自分の中に湧いて出て来た事に戸惑いを感じていた。(ひょっとすると俺は明日香よりも朱莉さんに惹かれ初めているのか……? いや、きっと明日香が俺の元から去ってしまって少しナーバスになっているだけなのかもしれない。ならやはり自分の気持ちをはっきりさせる為にも明日香を迎えに行くべきなのかもしれない……)「そうだったね。考えてみれば確かに朱莉さんの言う通りかもしれない。よし、今度の週末明日香を迎えに行って来るよ」「はい。きっと明日香さんは翔さんが直接迎えに行けば、とても驚くと思いますよ。喜んで帰ってくれるかもしれません」「だといいけどね……よし。食事も済んだし、そろそろ帰ろうか?」「はい、そうですね」そして翔と朱莉は蓮を連れて、店を後にした――**** 億ションの朱莉の部屋の前で別れ際に翔が言った。「朱莉さん」「はい、何でしょうか?」「これからは何か困った事があった場合は直ぐに相談してくれるかな? 力になりたいんだ。何故なら……」翔はそこで言葉を切った。「どうかしましたか?」朱莉が首を傾げる姿を見て、翔は思わず朱莉に触れようと手を伸ばしかけ……そこで動きを止めた。「朱莉さんは今は蓮の母親だからね」「確かに言われてみればその通りですね。悩みがあると育児に支障をきたしてしまうかもしれないですし……。分かりました。今後は翔さんに相談することにします」「ああ。是非そうしてくれ。それじゃお休み」「はい、お休みなさい」そして朱莉は翔が階段を下りていくのを
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4-35 嵐の前触れ 1

 翌朝―― 翔が出社すると、既に姫宮はオフィスのPCに向かって仕事をしていた。「あ、翔さん。おはようございます」姫宮は立ち上がると挨拶をした。「姫宮さん、昨夜は遅い時間に電話を入れて悪かったね」「いえ、大丈夫です。でもお部屋を予約することが出来て良かったです。尤もスイートルームになってしまいましたが」「いや、別にそれ位は構わないさ。それじゃ早速だが、スケジュールが変更になったから打ち合わせをしようか」翔はPCをたち上げた――**** 18時、朱莉の部屋—— 翔は仕事が忙しいのか、特に何の連絡も入って来ることは無かった。朱莉はこの日、小さなクリスマスケーキを買った。夕食にはチキンのグリル焼き、サラダ、ラザニヤを作り、バウンサーに寝かせた蓮の傍で1人でクリスマスのお祝いをした。クリスマスのCDを流し、蓮にはサンタのコスチュームのベビードレスを着せて写真撮影をした。そして翔のスマホに蓮のサンタ姿の画像と共に、簡単に昨夜のお礼を兼ねたメッセージを送信した。「フフフ……レンちゃん。とっても可愛いわよ」翔にメッセージを送信すると朱莉は蓮の柔らかいほっぺを撫でながら笑みを浮かべた。「マーマー」その時、突如として蓮が朱莉を見て笑った。「え……? レンちゃん……? ひょっとしてママって言ったの?」朱莉はバウンサーから蓮を抱き上げた。すると再び蓮が朱莉を見て言った。「マーマー……」「レンちゃん……」思わず朱莉の目に涙が浮かび、感極まった朱莉は蓮をギュッと抱きしめた。「うん……そうだよ、レンちゃん。今だけは……後少しだけは……私はレンちゃんのママだよ……」そして蓮のほっぺたに自分の頬を摺り寄せると幸せそうに笑みを浮かべた。(レンちゃんがママって言ってくれたことが……私の一番のクリスマスプレゼントだなんて……)朱莉はいつまでも蓮を抱きしめていた――****「ふう~……」翔はネクタイを緩めながら疲れた顔で自宅へと帰って来た。コートと背広をハンガーにかけるとすぐにバスルームへ向かい、熱いシャワーを浴びながら呟いた。「最近シャワーばかりだったからな……。ホテルでは温泉につかってゆっくり過ごすか……」バスルームから戻ると、スマホに着信が入っていることに気が付いた。着信相手は朱莉からであった。翔はメッセージを開いてみた。『お仕事お疲れ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-16
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4-36 嵐の前触れ 2

——ここは長野の『ホテルハイネスト』 明日香は白鳥のプライベートルームで2人きりのクリスマスを祝っていた。「ほら見て誠也。貴方がくれたお揃いの指輪とネックレスを付けてみたのよ?」明日香は白鳥の前に立った。「良く似合っているよ明日香。君は色白だからその青い宝石がより一層引き立ってみえるね」「ふふ……ありがとう」明日香は白鳥の首に腕を巻き付けると目を閉じ、キスを交わす。やがて2人は自然の流れでいつものように同じベッドの中にいた。2人の関係を知る者はまだ誰もいない――****——12月27日土曜日8:00 今日は翔が長野へ明日香を迎えに行く日だった。億ションのエントランス前には朱莉が蓮を抱いて、翔の見送りに来ていた。「それでは翔さん、車の運転どうぞお気をつけて行って来て下さい」「ありがとう。それより今週は蓮を見てあげることが出来なくてすまない」翔は申し訳くて朱莉に謝罪した。「いいんですよ。今日はベビーシッターさんにお願いしましたから。それよりこちらこそすみません。レンちゃんをシッターさんに預ける形になってしまって」「ハハハ……何だ。それ位どうってことないさ。用事があって蓮を見れないときは遠慮しないで今後もシッターを利用していいからね?」翔は笑いながら蓮の頭を撫でる。「よし、それじゃ蓮。行ってくるからな? 朱莉さん。明日香を何とか説得して連れ帰って来るよ」「はい、どうぞよろしくお願いします」翔は頷くと、車に乗り込むと長野県の野辺山高原へ向けて出発した――****——同時刻「……まさか本当に私達まで野辺山高原に行くとは思わなかったわ」姫宮は京極の運転する車の助手席で肩をすくめた。「まあ、いいだろう? 俺の勘が言ってるんだよ。そこへ行けばきっと何かがあるとさ」「そう、別にいいけどね。野辺山高原は星空が綺麗だと言うから露天風呂に入るのが楽しみだわ」そして姫宮は欠伸をした。「最近……色々バタバタして忙しかったから………少し眠らせて貰うわね」「ああ、好きにしろ」やがて姫宮はスヤスヤと寝息を立てながら眠りについた。そんな姫宮を見ると京極は車内のカーオーディオのボリュームを落とし、運転に集中することにした――**** 15時――「すみません、それでは2時間だけ、この子のお世話をお願いします」玄関先で朱莉はシッターとしてや
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4-37 それぞれの思惑 1

 六本木から野辺山高原まで約3時間半かけて翔は目的地の「ホテル・ハイネスト」に到着した。まるで白亜の宮殿のような豪華なホテルに翔は感嘆のため息をつく。「ふ~ん……これは立派なホテルだな……」ホテルの入り口まで車で着くと、すぐに2人のドアマンが現れ、車のキーを預かると駐車場まで乗っていき、1人は荷物を預かるとフロントまで案内をしてくれた。「ようこそ、当ホテルへお越しいただきまして、誠にありがとうございます」フロントの女性スタッフが深々と頭を下げてきた。「こちらこそお世話になります」翔も頭を下げた。「只今、総支配人を呼んでおりますので少々お待ちいただけますか?」「え? 総支配人が?」「はい、当ホテルのスイートルームをご利用のお客様には総支配人がご挨拶させていただくのが慣習となっておりますので、どうぞあちらのソファでおかけになってお待ちください」「はい。分かりました」別のホテルマンに案内され、ロビーのソファに座っているとコーヒーを出された。「どうぞ、こちらはブルーマウンテンになります」「ああ、ありがとう」すぐにホテルマンはその場を去り、翔は出されたコーヒーを一口飲んだ。(へえ……美味いな……)翔がコーヒーを飲んでいると、不意に声をかけられた。「失礼致します。鳴海翔様でいらっしゃいますか?」顔を上げると、そこには品の良いスーツを着こなし、スラリとしたまるでモデルのような男性が立っていた。その雰囲気は何所となく琢磨を彷彿とさせる。「え……と。貴方は?」「申し遅れました。私はこのホテルの総支配人の白鳥誠也と申します」白鳥は深々と頭を下げながら名刺を差し出してきた。「ああ……これはわざわざありがとうございます。あいにく今日はプライベートでこちらへ来たもので、私の名刺が無いのですが……」翔は名刺を受け取け取る。「どうぞお気になさらないで下さい。この度は当ホテルをご利用いただきまして誠にありがとうございます。スイートルームをご利用のお客様は私が案内をさせていただくことになっております」「はい、ではよろしくお願いします」翔は立ち上がった。「それではご案内させていただきます」豪華なカーペットを敷き詰めた長い廊下を歩きながら白鳥が話しかけてくる。「こちらへは初めていらしたのですか?」「ええ、そうです。それにしても立派なホテルで
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-16
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4-38 それぞれの思惑 2

 やがて、一つの部屋の前に来ると白鳥は足を止めてドアを開けた。「こちらが鳴海様がお泊りになる当ホテル自慢のスイートルームでございます」「……これはすごい部屋だな……」翔は感嘆の声を漏らした。まず目に飛び込んできたのは20畳程の広々とした部屋。さらにその奥には2つの扉が見える。オーシャンビューの大きな窓からは自然に囲まれた美しい景色が広がっている。床は重厚そうなカーペットが敷き詰められ、壁には大きなスクリーンが掛けられ、シアターが完備されている。奥にはバーカウンターがあり、棚にはアルコールが並べられているのが分かった。「アルコールは料金に組み込まれておりますので、お好きなだけお飲みください。映画もネット配信されておりますのでいつでもご自由にお楽しみできます。お部屋のお風呂はミストサウナとジェットバスも完備されておりますが、当ホテルの温泉は源泉かけ流しの湯となっておりまして、岩盤浴もございます」白鳥の説明を聞きながら翔は朱莉と蓮のことを思った。(やっぱりこれほど立派な部屋なら……連れてきたかったな……)「以上で説明を終わらせていただきますが、何かご質問はありますか?」「それじゃここに宿泊している客について尋ねることは出来るかな?」翔は白鳥を見た。「鳴海様……そのような個人情報をお伝えすることは出来かねます」「いや。隠さなくてもいい。ここに宿泊していることはもう把握済なんだ。もし教えてくれれば今後、こちらのホテルを贔屓にさせて貰うし、社員研修の場にこのホテルを指定してもいいんだが?」「しかしですね……」尚も渋る白鳥に翔は続ける。「……いくら支払えば教えてくれる? 小切手でも切るか?」「……」白鳥は翔の顔を見た——****「それでは失礼致します」白鳥は頭を下げると翔の宿泊する部屋を後にした。長い廊下を歩きながら白鳥は先ほど会った翔のことを考えた。(あの男が鳴海翔か……フフ……。本当に運が良かった。これでますますこのホテルを大きくすることが出来そうだな。しかし、本当に迎えに来るとは思わなかった。明日香はそんな事は無いだろうと言っていたが……やはり手元に置いておいて損は無い女だな)そして白鳥は笑みを浮かべた――**** 一方、その頃――「おい、静香。起きろよ、着いたぞ」京極は助手席ですっかり眠り込んでいた姫宮を揺り起こした。
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