点灯式も無事終わり、翔は朱莉の元へ向かおうとした時、姫宮に声をかけられた。「お疲れさまでした、副社長」「ああ、お疲れ様。それじゃ俺は朱莉さんの処へ行くから」「お待ちください、副社長」翔が背を向けて歩き出そうとした時、姫宮が呼び止めた。「姫宮さん、悪いけど今俺は朱莉さんに話が……」「はい、その件で私からお話があります」「え…? その件て……もしかするとさっきの男の件か?」「はい、そうです。こちらでは少しお話ししにくい内容なので……受付のソファに移動しませんか? 今の時間は殆ど人がおりませんので。それに朱莉様の耳にはあまり入れたくないお話ですので、少し別の場所でお待ちいただくよう伝えてまいります」姫宮はそれだけ告げると朱莉と蓮が座っている観客席ブースへと向かった。「朱莉様」「姫宮さん……。こんばんは」朱莉は立ち上がって挨拶をした。「朱莉様……大変なことになってしまいましたね」姫宮は同情心を露わに朱莉に話しかけてきた。「姫宮さん……か、彼は……」朱莉は声を震わせた。「いいのですよ、朱莉様。私には説明は不要ですから」それはまるで何もかも分かり切っているような口ぶりだった。「朱莉様、副社長にはどう説明されるおつもりですか?」「……」朱莉は黙ってしまった。何も妙案が思いつかなかったからだ。朱莉のそんな様子を見ていた姫宮が言った。「私にお任せ下さい。副社長を納得させる理由を思いつきましたので。ただし朱莉様は後程副社長に何か言われても決して反論しないで下さいね。この件につきましては安西さんも納得されているので」「え? 航君が……ですか?」「はい、そうです。全て私に一任されましたから。今は朱莉様の立場を守るのが最優先ですから」姫宮の言葉に朱莉は尋ねた。「何故……姫宮さんはいつもそうやって私を助けてくれるのですか……?」すると姫宮はフッと笑みを浮かべる。「今はまだお話しできませんが……いずれお話しいたします。それまでは……待っていて下さいね、朱莉様。外は冷えますので、一度第2ビルのロビーでお待ちください。私が副社長と話をしてまいります」そして姫宮は一礼すると急ぎ足で去って行った。「姫宮さん……」(どうして貴女は……そこまで私の為に……?)「レンちゃん。それじゃ寒いから中へ入ってパパが来るの待っていようね」朱莉は蓮をあ
Terakhir Diperbarui : 2025-05-15 Baca selengkapnya