All Chapters of 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Chapter 421 - Chapter 428

428 Chapters

4-39 決定的瞬間 1

 翔は夕食の時間に明日香と同じテーブルに着席させて貰えるように白鳥にお膳立てをして貰えたので、その旨を朱莉に伝えるためにメッセージを打っていた。送信すると部屋の窓から外を眺めた。窓の外からは美しい景色が広がっている。(夏に来れたら最高の場所だろうな……。絶対明日香は自分のテーブル席に俺が付いているのを見たら驚くだろうな。癇癪を起さなけれればいいがもし……もし、帰らないと言われたらどうしよう……?)部屋でじっとしていても落ち着かないと感じた翔は呟いた。「折角だから夕食まで風呂に入りに行ってくるか……」そして入浴の準備を始めた。**** 14時――京極は「ホテル・ハイネスト」のロビーにいた。一応、顔がばれないようにウィッグを付け、あご周りにひげを付けた京極の変装は完璧だった。現に今までこの姿で琢磨や航の近くを歩いていても気付かれたことは無かった。(恐らく鳴海明日香と鳴海翔は何処かで場所を決めて会うはずだ。ロビーが怪しいと思ったが違うようだな。互いの部屋だったらまずいな……。だが、静香の話ではあの2人は今仲たがい中だ。どちらかの部屋に行くのは考えにくい。もしかすると明日香には黙って鳴海翔はここへ来た可能性もあるし。だとしたら2人が会う可能性のある場所と言えば……)京極は先ほど貰ってきたホテル案内のパンフレットを開いた。そして食事についての案内のページを開く。「なるほど……食事をとる場所は5Fにあるレストランか。宿泊客以外も利用できるし……きっと2人はここで会うに違いない……」京極の勘は今迄外れたことが無い。絶対の自信があった。「夕食の時間までこの辺りを散策してみるか」京極は呟くとふらりとホテルの外へ出た。何気なく足を向けた方向に美しい中庭があることに気が付いた。(綺麗な中庭だな……。行ってみるか……)京極は少し立ち寄ってみたくなった。そこで足を踏み入れ、歩き始めた時に男女の会話する声が聞こえてきた。(先客がいたのか……)人がいるなら邪魔をしてはマズイと思った京極は元来た道を戻ろうと歩きかけた時、ふと聞き覚えのある女の声が耳に飛び込んできた。(え? あの声は……?)木の陰に身を隠すように京極はそろそろと声の聞こえる方向へ近寄り……衝撃で目を見開いた。そこには明日香と見知らぬ男性がベンチに座っていた。2人はまるで仲睦まじいカップルに
last updateLast Updated : 2025-05-16
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4-40 決定的瞬間 2

 その頃、姫宮は入浴後にホテルのルームーサービスで足裏マッサージを受けていた。すると突然手元に置いたスマホに着信が入ってきた。着信相手は京極からである。姫宮はスマホをタップしてメッセージを表示させた。『この男を知っているか?』メッセージに添付ファイルがある。姫宮は画像ファイルをタップすると、スマホ画面一杯に若い男性の顔が映し出された。「え……? 誰かしら?」すると姫宮の呟きを聞き、マッサージをしていた女性スタッフが声をかけてきた。「お客様、どうかされましたか?」「いえ……知り合いから画像が届いたのよ。この男性を知らないかって」どうせ今夜一晩だけしか泊まらないホテルなのだ。多少見せても構わないだろう……そう踏んだ姫宮は女性スタッフに画像を見せた。すると意外な答えが返ってきた。「あら〜この方は白鳥誠也さんですね」「白鳥誠也?」「この辺りでは有名な方ですよ。何せここ一帯のホテルの中で一番有名なホテル・ハイネストの総支配人ですからね」「え? ホテル・ハイネストの総支配人……?」(一体どういうことかしら……。でも言われた通り質問に答えていては駄目だわ。また勝手に正人に暴走されても困るし……)「どんな方なのかしら?」姫宮がその話に乗ってくると、女性スタッフは目を輝かせながら熱く語り始めた。「とにかく、この方は凄いんですよ! まだ32歳と言う若さであの有名なホテルの総支配人をされているのですから! しかも独身でイケメン! 女性達の憧れの的なんです!」「ふ〜ん……そうなの……」(正人が突然、この男を知っているか? なんてメッセージを送ってきたと言うことは、絶対に何かもっと重要なネタを掴んでいるはず。まずはそれを聞きだしてから彼のことを教えた方が良さそうね……)そこで姫宮は笑顔で言った。「マッサージ、どうもありがとうございます。お陰様で足がすっきりしました」「え? もうおやめになるのですか?」「ええ、大丈夫です。ご苦労様でした」「はい、それでは失礼いたします」女性スタッフが下がると姫宮はスマホをタップしてメッセージを打ちこんだ。『この男性がどうかしたの?』すると少しの間を空けて、再び京極からメッセージが入ってきたのだ。『面白い映像が撮れた」「面白い映像……?」姫宮は首を傾げながら添付ファイルをタップして息を飲んだ。そこに映し
last updateLast Updated : 2025-05-16
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4-41 波紋 1

 18時―— 翔はレストラン近くで身を隠すように明日香が入って来るのを待っていた。ほどなくすると、ワインレッド色のニットのワンピースを着た明日香がレストランへ入ってくる姿を見つけた。(明日香……子供を産んでも相変わらず派手な服が好きなんだな。朱莉さんとは違って……)久しぶりに見る明日香の姿を朱莉と比較している自分に少し驚きつつ、翔は明日香がテーブルに着席する姿を見届けた。ウェイターからメニューを受け取り、注文を言いつける明日香。そしてウェイターが去り、明日香がスマホを取りだして眺め出した頃合を見て翔は素早く明日香のテーブルに座った。「?」明日香は突然自分のテーブルに人の気配を感じ、顔を上げて目を見開いた。「翔!!」「久しぶり、明日香」翔は頬杖を突きながら明日香を見た。「な、何よ……。一体今さら何をしにここへ来たのよ……?」明日香は警戒しながら翔を睨み付けた。(明日香は相変わらずだな。まるで猫みたいだ……)苦笑する翔。「まあ、そう言うなよ。折角久しぶりに再会したんだ。まずはワインで乾杯でもしないか?」「私は祝いたい気分じゃないわ」視線を逸らす明日香に翔は尋ねた。「明日香。ひょっとして俺がここにやって来たのは迷惑だったか?」「もし迷惑そうに見えないなら一度眼科に行くことをお勧めするわ」丁度その時、2人の前にウェイターがシャンパンを持って現れた。「待って、私…、こんなもの頼んでいないわ」グラスに注ごうとしたウェイターを制止する明日香。次に翔を見て尋ねてきた。「翔、貴方なの? これを頼んだのは」「いや、俺も何も頼んでいない」するとウェイターが言った。「このシャンパンは当ホテルの総支配人からのプレゼントです」「何ですって!?」明日香の肩が大きく跳ねる姿を見て翔は思った。(何をそんなに大げさに驚いているんだ?)「な、何故総支配人が……?」明日香が声を震わせるのを聞き、翔はあることに気が付いた。「ああ、ひょっとするとこれはサービスなのかもしれないな。俺が今宿泊している部屋はスイートルームだから。チェックインした際もコーヒーのサービスがあって、総支配人自らが挨拶に来たんだよ」「え!? な、何ですって!?」途端に明日香の顔が青ざめる。「どうしたんだ? 明日香?」翔は先ほどから総支配人の話題になる度に大げさな位反応
last updateLast Updated : 2025-05-17
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4-42 波紋 2

メインディッシュの肉料理をカットしながら翔は尋ねた。「明日香、いつ東京に帰ってくるつもりなんだ?」「……」しかし明日香は答えない。それは答えたくても答えられなかったからだ。翔の本心を知るまでは明日香は何も語るまいと心に決めていた。「……黙っていられたら何も分からないじゃないか……」翔はため息をつきながら肉料理を口に入れた。「うん。美味いな……」そんな様子の翔をチラリと明日香は見ると尋ねてきた。「そ、そいう言う翔は……何故突然ここへやって来たのよ! 私が東京に残っていた時には連絡すらよこさなかったくせに……今更何なのよ」明日香はグイッとシャンパンを飲み干す。「実はそのことなんだけど、明日香が書置きしていったメモなんだが……ソファの隙間に入り込んでいて全く気が付かなかったんだよ。メモを発見したときは既に1週間以上経過していたんだ」「え? そ、そうなの? で、でもそれにしたって、その後一度も連絡をよこさなかったし……しかもいきなり何よ! 何の前触れもなくここへやってきたりして!」明日香は責めるような目つきで翔を睨み付けた。「それに関しては本当に悪いことをしてしまったと反省しているよ。メモに気づくのも遅くたったし。それで何となく連絡出来なくなってしまったんだ。時間が開けばあくほど、ますます連絡を入れにくくなったんだが、朱莉さんに説得されてね」「え? 朱莉さんに?」「ああ、そうなんだ。蓮は明日香の子供なんだから、このままにしておくのはまずいって。俺と明日香がやり直しできる事を願っていると朱莉さんは言っていたよ」「そうなの……朱莉さんが……」明日香はポツリと呟いた。自分が産んだ子供を嫌な顔一つせず、笑顔で面倒を見る穏やかな朱莉。白鳥と深い仲になって明日香は気が付いた。白鳥と自分は似ている。そして翔には……朱莉のような女性の方がお似合いなのではないかと。ただ、明日香と翔の間には蓮がいる。明日香にしてもこうして今離れて暮らしてはいるが、蓮を忘れたことなど一度も無い。毎日スマホに入っている蓮の写真を眺めるのは日課になっていたのだ。それに一番肝心な問題が残っている。それは……。「どうしたんだ? 明日香。さっきから全然食が進んでいないようだが?」翔は心配そうに明日香に声をかけてきた。「そ、そうね……。久々に翔に会ったから驚いて食欲が失せたの
last updateLast Updated : 2025-05-17
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4-43 曖昧な関係 1

 明日香と翔の本当の関係を全く知らない白鳥は椅子に座っている明日香の両肩に背後から手を置き、話を続けた。「明日香さんは素晴らしいイラストレーターなので、彼女自身の作品を集めて、このホテルで画廊を開こうかと考えているのです。明日香さんも快く引き受けてくださったので、今後も公私含めて良いパートナーになっていければと考えております」ニコニコと笑みを浮かべながら言葉を続ける白鳥とは対照的に明日香の顔色は見る見る内に青ざめていく。しかし白鳥は明日香が背中を向けているので、その様子に気が付いていない。(そ、そんな……誠也……! よりにもよって翔の目の前でこんなことを話すなんて……!)一方、驚いているのは翔の方だ。(何だって……? 総支配人が明日香の恋人になったとでもいうのか? もしかすると明日香がこのホテルに戻って来たのは、この男が新しく恋人になったからなのか? あの置手紙は俺を試す為にわざと置いていったのか……?)「あ、明日香……。今の話は本当なのか?」翔は声を震わせて尋ねるが、明日香は口を一文字に結んだまま答えようとしない。(翔の馬鹿……! そんなこと、誠也の前で答えられるはずないでしょう!?)「どうしたんですか? 明日香さん。お兄さんが質問していますけど?」白鳥は不思議に思い、明日香に尋ねた。「そ、そうね……。あ、あの悪いけど兄と2人で話がしたいの。席を外してくれるかしら?」「そうだね。家族との話し合いも大事だろうし」そして白鳥は翔に視線を移した。「それではごゆっくりしていって下さい」丁寧に頭を下げると白鳥はその場を立ち去って行った。「「……」」暫くの間、翔と明日香の間には気まずい沈黙が流れたが、これではらちが明かない。「明日香……今の話は本当なのか?」「今の話って……?」「総支配人が言っていた話だよ」「……ここでは話したくないわ」明日香はテリーヌを口に入れた。「そうだな、確かにここでするべき話では無かったな……。分かったよ。食事がすんだら俺の部屋へ行こう。そこで話し合いをしよう。いいな?」「……分かったわ」 そこから先は、2人は無言で食事を進めた。そんな2人の様子を背後で伺っていた京極は思った。(もうここから先は話を聞くことは無理だな……。俺も食事をさっさと済ませたらホテルへ戻ろう。静香が待っているだろうしな)そし
last updateLast Updated : 2025-05-17
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4-44 曖昧な関係 2

「それじゃ、乾杯でもしようか?」翔の言葉に、明日香は眉を顰める。「乾杯? 何に?」「再会を祝って……じゃ駄目か?」「こんな状態で祝えるとでも思っているの?」「分かったよ。もうやめよう……こんなギスギスした会話。担当直入に聞くよ。明日香。あの総支配人とはどんな関係なんだ?」「どうって?」「ごまかすな。それともストレートに聞かないと分からないのか?」「……寝たわよ」少しの間をおいて明日香は答えた。「え……? ね、寝たって……」余りの突然の言葉に翔は耳を疑った。「ええ、そうよ。それも一度や二度じゃないわ。何回も関係を持ったわよ。どう? ちゃんと答えたわよ。それともまだ他に何か聞きたいことはある?」「明日香……お、お前……その話、本当なのか!?」思わず翔は立ち上がり、明日香の隣に座ると両肩を掴んでいた。「だからお酒を飲みながらじゃないと話なんか出来ないって言ったのよ!」パンッ!明日香は翔の手をはたいて振り払った。「明日香……お前、どういうつもりなんだよ? 他の男と寝るなんて。俺と言うものが……」そこで翔は言葉を切った。(今……俺は明日香に何を言おうとしていたんだ? 俺と言うものがありながら…とでも言うつもりだったのか?明日香が去って、気付けば明日香とやり直す事も考えず、逆に朱莉さんとの偽装婚を本当の婚姻関係にしようとしていたのに……?)一方の明日香は翔が突然黙り込んでしまった事が腑に落ちない。(何なの? 翔……。一体何を考えているのよ?)「明日香……お前……あの男が好きなのか?」翔は真剣な目で明日香を見た。「え? 好きかですって……? 良く分からないわ」「わ、分からないって……お前……」「それじゃ、聞くけどそういう翔はどうなのよ! 普通だったら自分の恋人が浮気をしていることを知った場合、もっと相手を強くなじるのが普通じゃない? 浮気相手にだって食ってかかるのが普通なんじゃないの? それなのに……なのにどうして翔! 貴方はそれ程まで冷静でいられるのよ! 以前の翔だったらもっと相手に強い態度で出たはずよ? 何せ、朱莉さんにまで散々酷い態度を取っていたくらいだからね!」「あ……朱莉さん……?」翔はそこでドキリとした。まさかここで朱莉の名前が出て来るとは思わなかった。「そうよ翔。私だって人のことを言えないけど……貴方は本
last updateLast Updated : 2025-05-17
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4-45 バーでの会話 1

 気まずい雰囲気の中、結局結論が出ないまま明日香は自分の部屋へと帰って行った。1人ホテルでブランデーを飲みながら翔は窓の外の景色を眺めていた。外は美しくライトアップしたホテル内の庭が幻想的な雰囲気を醸し出している。(綺麗な景色だな……。朱莉さんと蓮の3人で見られたら良かったのに……)翔は気付いていなかった。無意識のうちに、いつの間にか普段から朱莉や蓮のことを考えていることに――**** 21時過ぎ—― 姫宮は1人、ホテルのバーカウンターでカクテルを飲んでいた。すると京極から電話がかかってきた。「はい」『これからそっちに戻る予定なんだが……今何処にいるんだ?』「ホテルのバーカウンターでお酒を飲んでいた所だけど?」『そうか、ならそのままそこで待っていてくれ。後20分以内にはそっちへ行くから』「分かったわ」それだけ言うと電話は切れた。姫宮は空になったカクテルグラスをテーブルの上に置いた―ーそれから約20分後、言葉通り京極が現れた。「待たせたか? 静香」「大丈夫、時間ぴったりだったから」京極は姫宮の隣に座った。「何飲んでるんだ?」「マルガリータよ」「そうか。俺はマティーニにするか」そして京極はバーテンに手を上げてマティーニを注文した。その様子を姫宮はじっと見つめている。バーテンは慣れた手つきでマティーニを作ると京極の前へスッと差し出しながら言った。「お2人は、お似合いのカップルですね」「ああ、まあな。良く言われるよ」京極は肩をすくめると、バーテンはそれを笑顔で返し、去って行った。「またいつもみたいに適当なことを言って……」姫宮はカクテルを飲みながらすこしだけ京極を睨む。「ああやってさり気なく釘を打っておけば、静香に変な虫が付かないだろう?」「そうかしら?」残りのグラスを煽るように飲むと、トンと空になったグラスを置いた。傍目から見たら美男美女のお似合いカップルに見えるかもしれないが、正真正銘2人は実の兄妹である。しかも二卵性双生児なので、顔もあまり似ていない。「それで? 何か面白い情報でも手に入ったのでしょう?」姫宮は京極の顔をじっと見つめる。「まあな。あのホテル・ハイネストの総支配人と鳴海明日香……どうやら2人は付き合っている様だった」「え? 嘘でしょう!?」流石に驚き、身を乗り出す。「いや、嘘じゃない
last updateLast Updated : 2025-05-17
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4-46 バーでの会話 2

「そう? でも正人ならそう言うと思ったわ。それでどうする? 私が調べる?」「いや……安西航に調べさせようかと思うんだ」「え!? 何故彼に……!?」姫宮の目が見開かれる。「……ちょっとした罪滅ぼしのつもりさ。俺が余計な真似をしたから静香は朱莉さんを守る為に安西航をやむなくストーカーに仕立て上げてしまっただろう? 朱莉さんと会えない状態を作り上げてしまったからな。破格のお金で依頼しようと思っている」「そう……」「それに安西航は九条とも繋がっているからな。さり気なく今の明日香と鳴海翔の関係があの男の耳にでも入れば……ますます面白いことになりそうじゃないか?」何処か楽しそうに言う京極を姫宮は冷ややかな目で見つめる。「正人……そう言って、本当は楽しんでいるだけじゃないの?」「いや? 別に楽しんでいるわけじゃない……。だが静香、忘れたわけじゃないだろう? 俺達が今迄何の為にここまで必死になって頑張って生きてここまできたのかを。全てはあいつ等に復讐する為だっただろう?」「……だけど……朱莉さんまで巻き込んでしまっているじゃないの……」姫宮はポツリと呟く。「いや、俺は朱莉さんを鳴海家から守りたいだけだ。それに朱莉さん親子だって鳴海家の被害者なんだぞ?」「だけど朱莉さんのお母様も朱莉さん自身もそのことは何も知らないのよ?」「……」京極は黙っている。「……とにかく、朱莉さん親子にはもう構うのはやめた方がいいわ。これは私からの忠告だから」いつになく強い口調で姫宮は京極に言った。「分かった……。だが……個人的に朱莉さんに連絡位は入れてもいいだろう?」「正人……」(やっぱり貴方……朱莉さんのことが好きなのね……?)姫宮は朱莉に対して不器用にしか振舞えない京極を黙って見つめるのだった—— **** 23時―― 今夜も明日香は白鳥と同じベッドの上にいた。「明日香、お兄さんとは話が出来たのかい?」明日香の髪を撫でながら白鳥は尋ねる。「ええ……少しはね」「何故彼はここまでやってきたんだい?」「私が書置きのメモだけ残して黙っていなくなったからよ。連絡も一度もしなかったし」「そうか……。明日香のお兄さんは随分と妹に過保護なんだな。 明日香も言えばいいのに。もう自分は成人女性だから過保護にしないでくれって」それを聞いた明日香はクスクス笑った。
last updateLast Updated : 2025-05-17
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