翔は夕食の時間に明日香と同じテーブルに着席させて貰えるように白鳥にお膳立てをして貰えたので、その旨を朱莉に伝えるためにメッセージを打っていた。送信すると部屋の窓から外を眺めた。窓の外からは美しい景色が広がっている。(夏に来れたら最高の場所だろうな……。絶対明日香は自分のテーブル席に俺が付いているのを見たら驚くだろうな。癇癪を起さなけれればいいがもし……もし、帰らないと言われたらどうしよう……?)部屋でじっとしていても落ち着かないと感じた翔は呟いた。「折角だから夕食まで風呂に入りに行ってくるか……」そして入浴の準備を始めた。**** 14時――京極は「ホテル・ハイネスト」のロビーにいた。一応、顔がばれないようにウィッグを付け、あご周りにひげを付けた京極の変装は完璧だった。現に今までこの姿で琢磨や航の近くを歩いていても気付かれたことは無かった。(恐らく鳴海明日香と鳴海翔は何処かで場所を決めて会うはずだ。ロビーが怪しいと思ったが違うようだな。互いの部屋だったらまずいな……。だが、静香の話ではあの2人は今仲たがい中だ。どちらかの部屋に行くのは考えにくい。もしかすると明日香には黙って鳴海翔はここへ来た可能性もあるし。だとしたら2人が会う可能性のある場所と言えば……)京極は先ほど貰ってきたホテル案内のパンフレットを開いた。そして食事についての案内のページを開く。「なるほど……食事をとる場所は5Fにあるレストランか。宿泊客以外も利用できるし……きっと2人はここで会うに違いない……」京極の勘は今迄外れたことが無い。絶対の自信があった。「夕食の時間までこの辺りを散策してみるか」京極は呟くとふらりとホテルの外へ出た。何気なく足を向けた方向に美しい中庭があることに気が付いた。(綺麗な中庭だな……。行ってみるか……)京極は少し立ち寄ってみたくなった。そこで足を踏み入れ、歩き始めた時に男女の会話する声が聞こえてきた。(先客がいたのか……)人がいるなら邪魔をしてはマズイと思った京極は元来た道を戻ろうと歩きかけた時、ふと聞き覚えのある女の声が耳に飛び込んできた。(え? あの声は……?)木の陰に身を隠すように京極はそろそろと声の聞こえる方向へ近寄り……衝撃で目を見開いた。そこには明日香と見知らぬ男性がベンチに座っていた。2人はまるで仲睦まじいカップルに
Last Updated : 2025-05-16 Read more