姫宮の話を聞いて、少しの間その場に沈黙が流れ……翔がぽつりと訊ねた。「それで姫宮さんは本当にこの会社を辞めるつもりなのかい?」「はい、ここまでのことをしてきてしまったのです。それに副社長にも全てを話した今、これ以上会社に居続けることは出来ません」「やめた後はどうするんだ?」二階堂が質問する。「そうですね……。幸い蓄えはありますし、焦らず仕事を探そうかと思っています」それを聞いた翔。「仕事のこともだが……京極はどうするんだ? 大丈夫なのか?」すると姫宮は曖昧な笑みを浮かべた。「さあ……どうでしょうか? でも私は何とか京極を止めたいと考えています。こんなことは間違えていますから」「ああ、確かにな。京極の今まで鳴海にしてきたことは犯罪スレスレだ。朱莉さんの件についても怖がらせているし、これはもうストーカーとして訴えてもいいレベルだ。これ以上行動がエスカレートしない内に何とか止めないとな」二階堂の言葉に姫宮は驚いて顔を上げた。「先輩……姫宮さんを前にいくら何でも言い過ぎなのではありませんか?」翔はあまりにもあけすけな二階堂の言い方を止めようとした。「何言ってるんだ? 俺は事実を述べているだけだ。しかし、今一番心配なのは姫宮さんだな。何せ今までのことを全て俺達に話し、尚且つ鳴海の秘書をやめ、さらに会社までやめるとなると、京極に取っては痛手だ。ああいうタイプは逆上したら何をしでかすか分からないからな」「……」姫宮は俯いてしまった。「先輩、いい加減にして下さい!」「何言ってるんだ、翔。俺は本当に姫宮さんの身を心配してるんだ。だから、まずは今後どうすればいいか俺なりに考えてみたんだ。聞いてくれるか?」「そうですね。何か妙案があるのでしたら教えていただけますか?」姫宮は二階堂を見た。「では先輩の考えをお聞かせ下さい」「ああ、まずはお前と朱莉さんが無事に引っ越しを終えるまでは姫宮さんには何喰わぬ顔で出社してもらう。京極に怪しまれないようにふるまう必要があるからな。ところで姫宮さん。引っ越しの日は京極にあの億ションにはいないようにさせると言っていたが……具体的にはどうするつもりだったんだ?」二階堂は姫宮に訊ねた。「ええ。実は来月は父の命日にあたるんです。なので一緒にお墓参りに行かないか誘ってみるつもりです」「そうか……もうすぐ命日だっ
Last Updated : 2025-05-26 Read more