姫宮から各務修也への引継ぎは順調に進んでいた。そして本日、修也は午前中は秘書研修ということで秘書課へ顔を出していた為、久しぶりに副社長室のオフィスルームは姫宮と翔の2人きりとなっていた。「どうだい? 姫宮さん。修也への引継ぎは進んでいるかな?」翔は引継ぎの資料を作成していた姫宮に声をかけた。「ええ、順調です。それにしても彼には驚きです。とても呑み込みが早くて、何でもそつなく出来て……本当に優秀な方なんですね」姫宮は感嘆のため息をついた。「ああ、そうなんだ。修也は……本当に優秀な人間なんだ。だからこそ……」修也はそこまで言って口を閉ざした。「翔さん? どうかしましたか?」姫宮は突然黙り込んでしまった翔を見て首を傾げた。「い、いや。何でもないよ、俺に構わず続けてくれ」「はい、分かりました」そして再び、姫宮はPCと向き合った―― 12時になり、修也が副社長室へと戻って来た。「ただいま戻りました」修也が翔と姫宮に挨拶をした。「ああ、ご苦労だったな。修也」「お疲れさまでした、各務さん。どうでしたか? 秘書課の研修は」「はい、皆さんには親切丁寧に教えていただきました。午後からは引き続き姫宮さんの引継ぎ業務に入らせていただきます」修也はにこやかに返事をする。「それじゃ、姫宮さんと修也……2人で一緒にお昼に行ってくるといいよ」翔は2人に声をかけた。「そうですね。では行きましょうか? 各務さん」「はい、ご一緒させて下さい。それじゃ、翔。行ってくるよ」「ああ。行ってらっしゃい」翔に言われ、姫宮と修也はオフィスを出て行った。そして1人オフィスに残った翔は小さく呟いた。「修也……。お前が俺の秘書になるとはな……。これじゃあ10年前の関係と大して変わりないな……」そしてため息をついた――****「ここが今私が一番気に入ってる店なんですよ」姫宮が連れて来た店は本社ビルの近くにあるカフェだった。このカフェはコーヒーの種類が豊富で15種類の味のコーヒーを提供し、注文に応じてブレンドしたコーヒーを作ってくれるのだ。「姫宮さんはコーヒー通なんですね。僕は普段はインスタントしか飲まないので感心してしまいますよ」コーヒー付きのセットメニューでホットサンドを食べる修也。「でも一度引き立てのコーヒの味を知れば、きっと各務さんもインスタントで
Dernière mise à jour : 2025-05-27 Read More