翔は朱莉をじっと見つめた。(やはり俺では駄目なのか? 朱莉さんは蓮の母親になれても妻にはなれないってことなのか? だけど朱莉さんを諦めたくはない。彼女ほど蓮を愛情持って育ててくれる女性は何所にもいるはずがない……! 何としても引き留めなくては!)「朱莉さん…。だけど、長野へ行くって……いつ行くつもりなんだ? その間蓮はどうするつもりなんだ?」もしも朱莉が長野へ行っている間は自分に面倒を見てもらいたいと言ってくれば、仕事があるので忙しくて面倒を見れないと翔は言うつもりだった。卑怯な手だと思われてしまっても、それでも朱莉と家族になりたかった。例え嫌われてしまったとしても……。(朱莉さんには悪いが、何としても長野行きを諦めてもらわなければ……)しかし、朱莉は予想外のことを口にした。「レンちゃんは一緒に長野へ連れて行くつもりです」「え!? 蓮を長野へ? だけど蓮はまだ7ヶ月だぞ? そんな小さな子供を連れて……」「いえ、レンちゃんはもうだいぶまとめて眠れるようにもなりましたし、ミルクも飲む量が増えた分、授乳の回数が減りました。車で高速に乗って休みながら行くつもりなので大丈夫ですよ」朱莉の言葉に翔はさらに驚いた。「ええ!? 車で行くつもりだったのか!? 新幹線では無くて?」「はい、かえって新幹線を使った方が移動が大変だと思うのです。荷物もありますし」「朱莉さん……」(朱莉さんはそれほどまでに明日香を連れ戻したいのか? だけど明日香が白鳥を見つめるあの瞳は本気だった。俺にだってあんな表情を見せたことはなかったのに……。それに、今俺が一番大事に思っているのは蓮と朱莉さんなの……に……)翔はズキズキと痛む心を隠しながら言った。「朱莉さん、今の明日香は俺じゃなく別の男が好きなんだ。朱莉さんも明日香の性格を良く知っているだろう? こうと決めたら絶対に何があってもその意思を変えることが出来ない。だから……行っても徒労に終わるだけだよ?」(だから……長野へ行って明日香に会うなんて考えないでくれ……!)「レンちゃんを……」「え? 蓮を?」「はい、レンちゃんを連れて行って明日香さんに会わせてあげれば情が沸いてくるかもしれませんよ? 何といっても本当のお母さんなんですから」「朱莉さん……」「だけど……」不意に朱莉の顔が曇った。「もし……もしも、明日
Last Updated : 2025-05-30 Read more