「とっても可愛いお子さんですよね? 今1歳くらいですか?」修也は優し気な瞳で蓮を見つめながら訊ねてきた。「い、いえ……この子……レンちゃんは今8カ月になったところです」「ああ、そうだったんですね、すみません。赤ちゃんの年齢、僕にはぱっと見ただけでは分からなくて」修也は恥ずかしそうに笑う。「そうなんですか?」(と言うことはこの人は独身なんだ……。結婚を約束した女性はいるのかな……?)「すみませんでした。副社長の秘書になったのに、ご挨拶が遅れてしまって」頭を下げる修也を見て朱莉は尋ねた。「あ、あの……各務……さんでしたっけ? もしかして翔さんの御親戚か何かでしょうか?」「ええ、そうです。僕は副社長のいとこにあたるんです」「やっぱりそうだったんですね。どうりで翔さんに良く似てらっしゃると思いました」「そうですね。僕の父と副社長のお父様は双子の兄弟なんですよ。似てるのは当然かもしれませんね」「そうだったんですか!? 翔さんは一度もそんな話してくれたことが無かったので」朱莉は離乳食を食べ終えた蓮の口元をガーゼハンカチで拭きとってあげながら修也を見た。「……」すると、何故か修也はじっと朱莉を見つめている。「あ、あの……? どうかしましたか……?」朱莉はあまりにも修也が自分を見つめているので、顔を赤らめながら尋ねた。「いえ、とても愛情深くお子さんを育てているんだなって思って」「そ、そんなこと……ありません……」朱莉はますます頬を赤らめた。心臓はさっきよりもドキドキしている。(私ったら一体どうしちゃったんだろう。この人は翔さんとすごく良く似ているのに……どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう……)気付けば、朱莉は修也と見つめ合っていた。そして、そんな様子にいち早く気付いたのは翔であった。「修也!」突如、翔が名前を呼んだ。「え? な、何?」修也は驚いたように翔を見た。「あまり……人の妻をジロジロ見るのはやめてくれないか?」語気を強めて翔は修也を睨み付けた。「あ、ご、ごめん。翔。そんなつもりは無かったんだけど」修也はうろたえて謝る。「翔さん。何もそんな言い方をしなくても……」普段なら黙っている朱莉は何故か修也が責められるのが嫌で、つい口を挟んでしまった。「朱莉さんは黙っていてくれ」翔は朱莉を見もせずに答えた。
Last Updated : 2025-05-31 Read more