——ピンポーン翔が洗濯物を干している頃、インターホンが鳴った。「お? 来たか?」翔はモニターを覗きこむと、そこには琢磨が映っている。「今入口を開けるから待ってろ」モニター越しに呼びかけると、琢磨は黙って頷く。「……?」その様子に翔は訝しんだものの、部屋番号を操作してエントランスを開けた。そしてものの3分も経たないうちに、再びインターホンが鳴り響く。翔は玄関に向かい、ドアを開けた。「よお……翔」琢磨は左手を少し上げた。右手には大きなキャリーバックを手にしている。「……どうしたんだ? お前……ホテルは……」「悪い、部屋へ入れてくれ」「あ? ああ……いいぞ?」翔が避けると、琢磨は翔の前を横切り上がり込んできた。琢磨が通り過ぎた際、身体から女性用の香水の香りに翔は気付いた。「翔……来て早々に悪いが、シャワー浴びさせてくれ」いつになく、切羽詰まった様子の琢磨。「あ、ああ。別に構わないが……それよりその匂いはどうしたんだ?」「匂い?」琢磨は自分の袖をクンクンと嗅ぎ、途端に不機嫌そうに顔を歪め、忌々しそうに言った。「くそ! 服にまで……!」「お、おい……琢磨。おまえ……」「話なら後で聞く! それよりも早くシャワー浴びさせてくれ!」琢磨はやけくその様に喚いた——****シャワーを浴びに行った琢磨は未だにバスルームから出てこない。洗濯物を干し終え、蓮の離乳職の準備をしながら翔は時計をチラリと見て呟いた。「もう30分以上経過しているのに、随分遅いな……琢磨の奴。まるで女みたいに長いな……。うん? 女……? もしかして……」その時。「ふう〜やっとすっきりした……」Tシャツにデニム姿というラフな格好でタオルで髪を拭いながら、琢磨がバスルームから現れた。「何だよ。お前、随分長かったな?」丁度離乳食づくりを終えた翔が声をかけた。「まぁ……ちょっとな。所でいい匂いがするが、何を作っていたんだ?」「ああ、これは……」翔が言いかけた時、琢磨は鍋の中を見て驚いた。「うわ!? な、何だ? この緑色の粒粒に白い物体は……」「ああ、これは蓮の離乳食でほうれん草とおかゆのしらす煮だ。食べるか?」「誰が離乳食なんか食べるか!」琢磨が言うと、翔はニヤリと笑った。「ほんの冗談だ。真に受けるな」「お、お前……冗談って……。はあ……も
Last Updated : 2025-06-02 Read more