Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 551 - Bab 560

594 Bab

9-17 それぞれの動き 1

(ナースステーションで看護師さんたちが噂していた人って、きっと翔先輩の担当看護師さんのことだよね)朱莉は考え込みながら自販機へと向かった。自販機の前でアイスティーを購入して、再びナースステーションの前を通り過ぎようとした時、まだ看護師たちが話をしていた。(え? あの看護師さん達まだここで話をしていたの?)朱莉は何故か咄嗟に通路の角に隠れてしまった。そして、ナースステーションの様子をそっと伺った。4人の看護師たちはPCの前で噂話の続きをしている。「あんまり目に余るようなら看護室長に相談した方が良いわよね」「うん、本当。いくらこの病院の理事長が叔父さんだとしても、あれはいくら何でも無いわ」「藤井さんてお金持ちと若い男性に目が無くて困るわよ」「前回は大変だったじゃない、恋人を名乗る女性が現れてナーススーションに文句を言いに来たじゃないの……」「でも、結局あれは一方的に相手の女性がストーカーしてたのよね。結局その女性の方が訴えられたって話よ?」その時――「ダア、ダア」蓮が大声を出した。「え!?」「な、何!?」「赤ちゃん?」3人の看護師達はいきなり廊下で蓮の声が聞こ得たことに驚いたのか、全員が朱莉の方を振り向いた。「あ、あの……」朱莉はバツが悪そうに俯くと、看護師たちは慌てたように口々に言った。「あ、あの……今の話は……」「だ、大丈夫です! 鳴海さんと藤井さんのことは私たちが責任を持って、見張っておきますから!」「どうか……い、今の話は内密にお願い出来ますか?」思い切って朱莉は看護師たちに尋ねることにした。「あの、差支えなければ藤井さんという看護師さんの事教えていただけないでしょうか?」そこで看護師たちは藤井について語った。本名は藤井美奈代、年齢は23歳でこの病院に勤務したのは3年前。男性経歴が激しく、気に入った男性患者がいれば相手がいようが、既婚者だろうがお構いなしに声をかけると言うが、この病院の理事長が彼女の叔父にあたり、今まで隠蔽されてきたと言う。「そうだったんですか……」朱莉は複雑な心境で話を聞いていた。すると1人の看護師が慌てた。「大変! 藤井さんが戻って来たわ!」「すみません、今の話はここだけにしておいてくださいね!」「は、はい。分かりました」朱莉は急いで特別個室へと戻り、ドアを閉めるとソファに座っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-06
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9-18 それぞれの動き 2

その視線に朱莉は思わず俯いた。(あの視線……以前も私はあの視線で見られたことがあった……。過去の明日香さんに。あの目は嫉妬の目だったんだ……)「それでは、また明日伺いますね」藤井は翔に笑み浮かべると、部屋を後にした。「ふう。全く、まいったよ……」翔は溜息をつきながら、前髪を書き上げた。「え?どうかしたのですか?」朱莉が蓮をあやしながら尋ねると、翔は不機嫌な顔になった。「あの藤井とかいう看護師。やたらと距離感が近くて困る。はっきり言って迷惑だ。妙に馴れ馴れしく身体に触れて来るし。入院とは全く関係無い話までしてくるんだよ。朱莉さん、悪いけど担当看護師を変えて貰えるように頼んでくれないか?」「ええ!? た、頼むって……誰にお願いすればいいんですか?」「ふむ。確かに言われてみればそうだな。担当看護師の変更依頼は何処に頼めばいいんだろう?」その時、朱莉の脳裏に先程の3人の看護師が思い浮かんだ。(まだあの看護師さん達はナースステーションにいるかな?)「翔さん、私が今ナースステーションに行って聞いてきます。でも藤井さんがいたら無理ですけど」「ありがとう。それじゃ頼むよ」翔はベッドの上から朱莉に頼んだ。「はい、分かりました。では行ってきます」朱莉は蓮を連れて、再びナースステーションへと向かった。 ナースステーションを覗いてみると、たまたま運良く藤井の姿は無く、50代位の看護師がいた。「あの……私、特別個室に入院中の鳴海翔の妻ですが……」朱莉が遠慮がちに声をかけると、看護師は笑みを浮かべて挨拶をしてきた。「初めまして。私はこの病棟の看護師長です。何か御用ですか?」「はい、実は主人が担当の看護師を変えて欲しいと訴えておりまして」すると途端に看護師等の表情が強張った。「あの……もしや、その看護師は藤井という名字でしょうか?」「あ、はい。そうです」「あの人ったらまた……!」看護師長が口の中で呟く声を朱莉は聞き逃さなかった。「あの……?」朱莉が声を掛けると、看護師長は突然謝罪してきた。「申し訳ございませんでした。すぐに藤井の担当を外します。ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ございませんでした」「い、いえ。それではどうぞよろしくお願いいたします」朱莉も頭を下げると、ナースステーションを後にした。****「どうだった? 朱莉さん
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-06
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9-19 災難 1

 18時半―ー味気ない全粥食を食べた翔はネット配信の海外ドラマを観ていた。ーーコンコンその時、ドアをノックする音が聞こえてきた。(きっと修也だな)先程、翔のスマホに修也から19時頃に病室に来れそうだと連絡を貰っていたのだった。「どうぞ、入って来いよ」するとガチャリとドアが開けられ……翔は中へ入って来た人物を見て息を飲んだ。「き、君は……っ!」 その頃、修也は翔の入院している病棟へ向かう為にエレベーターに乗っていた。会長から貰った電話の件で頭が一杯になり、少しの間考え込んでしまっていたので退社時間が遅くなってしまったのだ。やがて修也を乗せたエレベーターは翔が入院している7階で止まり、ドアが開いた。エレベーターから降りた修也は急ぎ足で翔が入院している特別個室へと向い、ドアの前に到着すると、ノックをした。ーーコンコン『だ、誰だ!?』部屋の中から翔の上ずった声が聞こえてきた。「修也だよ、面会に来たんだ」『修也なのか!? 今すぐ部屋の中へ入ってくれ!』翔の切羽詰まった声が聞こえたので、何事かと思った修也は急いでドアノブに手を掛けた。しかし……。ガチャガチャッ!幾らドアノブを回してドアが開かない。「え? 開かない……?」(何だろう? 病室に鍵を掛けるなんて……普通の状況じゃあり得ない!)「翔!? 翔!? どうしたんだい!?」ドアをドンドン叩いても反応が無い。「おかしい……。何かあったのかもしれない!」修也は急いでナースステーションへと向かった。誰もいなかったらどうしようかと思ったが、そこには運よく男性看護師が1人いた。「あの! すみません!」修也は男性看護師に声をかけた。「どうしましたか? 面会の方ですか?」修也達とさほど年齢が変わらないと見られる男性看護師が首をひねる。「はい、そうなんですが……特別個室の患者の面会に来たのですが、鍵がかかっていて中へ入れないんです。ドアをノックしても、中から返事が無いし。ひょっとすると何かあったのではないでしょうか!?」「患者さんに何かあったのかもしれません! すぐに向かいましょう!」2人は急いで翔の入院している病室へと向かった――「特別個室は内側から鍵が掛けられるようになっているんですよ」男性看護師はガチャガチャと鍵を開けて、中へ飛び込むと青い顔をした翔がベッドの上にい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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9-20 災難 2

20時――「大変申し訳ございませんでした!」騒ぎがあって呼びつけられたのか、この病院の事務長が翔と修也に頭を下げてきた。「全くだ。一体この病院はどうなっているんだ? あんな頭のいかれた看護師を雇っているなんておかしいだろう!?」翔は怒りを抑えることも無く、声を荒げた。「はい、それは本当に大変申し訳なく思っております。あの看護師は懲戒休職の措置を取りました。お詫びとして特別個室の料金を全額免除させて頂きますので、なにとぞこの事は内密にお願い出来ませんでしょうか?」事務長は平謝りに頭を下げてくる。「……」翔は腕組みをしたまま、機嫌が悪そうにしていたが、頭の中では計算していた。(この個室は1日18万円すると言われているからな。入院期間は4日間と聞いているし……そうすると72万円を支払わずに済むと言うことか。別に金が無い訳じゃないが、部屋代を無料にしてくれると言うなら、それに越した事は無いしな)「分かりました。では口外はしませんが……あの看護師を何とかして下さい。いっそ精神鑑定を受けさせた方がいいかもしれないですよ?」「は、はい。正に仰る通りです! 今、本人もかなり興奮気味の為、取りあえず鎮静剤を打っておきましたので、今夜は安心してお休み下さい」「ええ、是非そう願いたいものですね」何処までも無愛想な態度を取る翔に修也は声をかけた。「翔、もうこの辺で終わりにした方がいいよ。先方も、高額な個室代を無料にしてくれるとまで言ってくれているんだから。それに実は今日は大事な話が合って僕は翔の所へ来たんだよ」「え? 大事な話?」翔は眉を顰めた。「うん。だけど、これは会社の内々の話だから……」言いながら修也はチラリと事務長の方を見た。「あ、あの……そ、それでは私は下がらせていただきますね」そして事務長はそそくさと立去り、部屋には翔と修也の2人きりになった。「全くあの看護師め……。だが修也、お前が来てくれて助かったよ。ありがとう」「いや。あれ位大したこと無いから、お礼なんていいよ。それより……」修也は何処か落ち着きなく、ソワソワしている。(どうしたんだ? 修也の奴。いつも落ち着いているくせに会社で何かあったのか?)「修也、大事な話があるって言っただろう? 一体どう言った内容の話なんだ?」「それが、実は今日携帯に直々に電話がかかってきたんだ
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9-21 修也と母 1

「修也……お前、その話受けたのか?」翔は青白い顔で尋ねた。「違うんだよ翔。受けたわけじゃなくて会長からの業務命令だったんだ。仕方なかったんだよ」「断ることは出来なかったって訳か?」翔は投げやりに言った。(くそっ! やっぱり爺さんは始めから会社の跡継ぎに修也を考えていたって言うのか!?)「うん。それで会長から翔に伝えてくれって言われたんだよ。会社のことは大丈夫だから2週間はゆっくり過ごせって……」それを聞いた翔の顔色はますます青くなっていく。「修也……。会長は今、どこにいるんだ? 日本に戻っているのか?」「い、いや。日本にはいないよ。今はマレーシアにいるんだ。でも……」「でも、何だ!?」「近々帰国するかもしれないって言ってた……」「そうなのか?! それはいつ聞いた話だ?」「今日だよ。今日会長から連絡が入ってきたんだから」修也は翔の勢いに押されながら返事をした。「翔。会長と直接話したらどうかな? 今回の翔の急性虫垂炎のこと心配していたよ?」「虫垂炎……そうだ! 修也……お前、何故会長に俺の病気の事を報告した!? よくも余計な真似をしてくれたな!」翔は修也にくってかかってきた。「ち、違う! 僕じゃないって! 翔の性格のことだから、会長に病気になって手術になったなんて話、知られるのは嫌だと思ったから報告するつもりは全く無かったんだよ。会長に連絡を入れたのは、秘書課の課長なんだよ。しかも事後報告だったんだよ。だけどやっぱり僕の責任だね。秘書課の人達に会長には内密にして欲しいと伝えなかったんだから。本当にごめん」「いや……もうそれはいい」(そうだ……どっちみち、最初から俺を後継者にする気があるなら、こんなことを会長がするはずない……。俺がもっと会長の目に叶う人間だったら、例えこんな急病になったとしても修也を副社長の代理になんかするはずは無いんだ!)「悪かった…。お前のせいじゃない。責めてすまなかった…」「翔、一体どうしたんだい?」突然翔が謝ってきたので修也は戸惑ってしまった。(そうだ……俺に足りないのは他者への配慮なのかもしれない……)「そんなことより、翔。会長に直に電話して話をしてみたらどうかな? 翔の口から直接会長に話をしてみれば……」「そうだな。確か今、会長はマレーシアにいるんだっけ?」「そうだよ」「確か……日本と
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9-22 修也と母 2

「ただいま、母さん」港区高輪にあるマンションに修也は帰宅した。「お帰りなさい、修也」修也を出迎えた母は、穏やかな笑みを浮かべて玄関まで迎えに来た。「どう? 翔君の様子は?」「うん。元気にしている、大丈夫だよ」「修也、食事はどうなの? 食べてきたの?」「まだ食べていないけど、もう10時になるし食事はいいよ。シャワー浴びて来る」修也はバスルームへと向かった……。20分後――「ふう~気持ちよかった……」タオルで頭を拭いながらリビングへ行くと、テーブルの上には冷えた生ビールと冷ややっこに枝豆とポテトサラダが用意してあった。「え? 母さん。これって……?」「今日も暑かったからねえ。修也はビール好きでしょう?」「うん、確かに好きだけど……おつまみまで用意してくれてありがとう、母さん」「何言ってるの。ずっと離れて暮らしていた息子とようやく一緒に暮らせるようになったんだから世話位焼かせて頂戴。だけど……」「うん? だけど……何?」ビールを飲みながら修也は尋ねた。「私は修也の可愛いお嫁さんに早く会いたいわ~」「え!? な、何を急に……!」修也は危うくビールを吹き出しそうになった。「あら? 折角東京に戻って来たって言うのに……誰かいい人はいないの?」「いないよ、そんな人。今は仕事を覚えるので手一杯だよ」「そう? 残念だわ……。貴方はとっても優しい子だからきっとお嫁さんを貰っても大切に出来る人なのに」ため息をつく母。「僕にはまだ早いよ。とりあえず今は一刻も早く仕事を覚えないとね」そして修也はポテトサラダを見つめると目を細めた。「懐かしいな……子供の頃、大好きだったっけ」「あら? 一人暮らししている時は作ったりしなかったの?」「うん。つい、ポテトサラダって作り過ぎてしまうから作るのやめていたんだ。でも今は母さんと2人暮らしだから、作りすぎても食べきれそうだね。母さんも大好きだよね?」「ええ、そうね。それじゃ、翔。私は先に休ませてもらうわね。明日は何時に家を出るのかしら?」「早めに出社して確認しないといけない資料があるから……7時には出るよ」「なら6時には起きないとね」「うん。でも母さんは寝ていていいからね?」「何を言ってるの。会社で働いている息子が朝早く出るのにそれを寝て送り出さない母親が何処にいるって言うの? 朝ご飯用
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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9-23 空港での別れ 1

 翌朝―― 朝の食事と回診が終わると、すぐに翔は祖父にメールを入れた。すると5分も経過しない内に翔のスマホが鳴った。着信相手は勿論会長からである。「もしもし!?」『おお……翔、元気そうじゃないか。いやあ驚いたよ。秘書課の課長から連絡を貰った時はな。まさかお前が急性虫垂炎にかかるとはな。でも手術は大ごとにならなかったそうじゃないか。しかし医学は発達したものだ。昔は開腹手術じゃ無ければ手術等出来なかったからなあ……』翔の焦りとは裏腹に、電話越しから聞こえて来る会長ののんびりした口調に苛立ちを募らせながら翔は言った。「会長! それよりもどういうことですか!? 修也に副社長代理をまかせるなんて……! 私には2週間程休暇を取るように言ったそうですね? 言っておきますが私は本来なら休暇をとるつもりは無いのですよ!? ですが、会長の命令とあれば受けるしかありませんが……」『翔……そんなにいやなら休暇はもういい。実はお前にはやって貰いたいことがあってな。お前には4年間カルフォルニア州へ行って貰う。そこで研修を受けてくるんだ。無事に研修期間を乗り越えられた上で、お前か修也のどちらかを後継者にする』「な、何ですって……!?」翔は耳を疑った。そんな話がまさか会長の口から飛び出してくるとは夢にも思わなかった。「ど、どういうことですか!? うっ……!」あまりに大声をあげたので手術の痕がズキリと痛み、翔は呻いた。『ほら、あまり興奮するな。傷に障るぞ? 良いか翔。人は競争してこそ成長する。お前は今迄自分が後継者に選ばれるのは当然と思っていたようだが、それに奢るな。鳴海家の地を引く人間なら誰だって後継者候補にあがるし、能力を兼ね備えている人物なら外部の人間が選ばれる可能性だってあるのだ。修也は本当に優秀な人物だ。お前だってそのことは知っているだろう? それに修也は経験も豊富だ。色々な場所や部署で仕事をしてきたのだからな。そこへ行くとお前はどうだ? ずっとトップの地位に座り続けているだけで下の者の苦労も知らない経験不足だ。そのような人間にこの巨大グープを任せるわけにはいかんのだよ』「そ、それは……」確かに祖父の言葉は的を得ている。だが、どうしても翔は納得出来なかった。『異論があるなら、この話やめてもいいぞ。その代わり出向は確実だ。もう二度とトップに昇れることはないと思え
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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9-24 空港での別れ 2

 15時―― 朱莉が蓮を連れて面会に現れた。「こんにちは、翔さん」「ああ……朱莉さん」翔はPCから顔を上げると弱々しい笑みを浮かべた。「ど、どうしたんですか? 顔色が酷く悪いですよ? まさか具合でも悪いのですか?」「いや。そうじゃないんだ。ただ……」「ただ?」朱莉は首を傾げた。その様子を見て翔は思った。(駄目だ……こんな重要な話……絶対に隠しておいてはいけないに決まっている!)「朱莉さん……落ち着いてよく聞いてくれ」「は、はい……」朱莉はただ事ではない翔の姿に何かを感じ、ベッドの傍に椅子を寄せると蓮を胸に抱きしめ、翔を見た。「会長に命令されたんだ。体調が回復次第、カルフォルニア州へ行くようにと。それも4年間……」「え……?」(そんな……私はどうすればいいの? レンちゃんは……?)「朱莉さん……。俺と一緒に来てくれるか? カルフォルニアへ……」翔はほぼ絶望的な訴えとは知りつつも朱莉に尋ねた。そしてもし……この場で頷いてくれたなら正式にプロポーズをしようと考えた。しかし――「す、すみません……。そ、それは……無理……です……」朱莉は申し訳なさそうに、今にも消え入りそうな声で返事をすると俯いた。「そうか……そうだよな。何せ俺達は……」翔が言いかけた時、朱莉は口を開いた。「病気の母が心配なので……私は日本を離れることは出来ません! す、すみません……」朱莉は再び、俯くと肩を震わせた。「え? お母さん……?」(朱莉さんが俺について来れない理由はお母さんのことだったのか? それなら……)翔は下唇を一度ギュッと噛んだ。「朱莉さん……本当に悪いけど、俺が日本に戻ってくるまで……蓮を頼めるかい?」「は、はい! 勿論です!」朱莉は力強く頷いた。「ありがとう、朱莉さん……」翔はその時に決めた。4年後、日本に戻ってきたら朱莉に正式に結婚を申し込もうと。その答えがどんなことになっても受け入れようと。「俺は明日退院するんだ。そうしたら少しずつ転居する準備をする。そして退院後の外来診察が終わったらすぐに日本を発つよ。だから悪いけど……荷造り手伝って貰えるかい?」翔は照れ臭そうに尋ねた。「はい勿論です! 私に出来ることならどんなお手伝いもいたします」朱莉は笑顔で返事をした――**** 翌日―― 翔は無事に退院手続きを終
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第3部 1-1 蓮の入園式 1

 4月――今日は今年4歳になる蓮の幼稚園の入園式。「おかあさーん。まだあ~?」幼稚園の制服に身を包み、園指定の靴を履いた蓮が玄関から朱莉を呼んでいる。「ごめんね~。蓮ちゃん。もうすぐ出かけられるから待っていてくれる?」上品なフォーマルスーツを着た朱莉が蓮に声をかけた。「うん……よし、戸締り大丈夫! お待たせ、蓮ちゃん」朱莉はショルダーバックを下げると、パンプスに足を通した。「お母さん、とっても今日は綺麗」蓮はニコニコしながら朱莉の手をギュッと握りしめる。「蓮ちゃん……」朱莉は思わず頬を染めて蓮をギュっと抱きしめた。「蓮ちゃんも今日は一段と格好いいわよ」「えへへ……」「さて、それじゃ行こうか?」「うん!」朱莉は右手を差し出すと蓮は小さな手で朱莉の手を握りしめてきた―― マンションのエレベーターに乗り込んで外へ出ると、修也が待っていた。「え……? 各務さん?」「あ! 修ちゃん!」蓮が嬉しそうに修也に駆け寄って行く。蓮は優しい修也が大好きなのだ。「蓮君。おはよう、いよいよ今日から幼稚園生だね」修也は蓮の前にしゃがむと笑顔で頭を撫でた。「うん! 僕ね。今日から幼稚園生だよ」蓮は胸を張って笑顔で言う。修也はそんな蓮を愛おしそうに見つめ、立ち上がると朱莉に視線を移した。「あ、あの……各務さん。お仕事はどうされたのですか?」朱莉は戸惑いながら尋ねた。「いえ、実は会長に頼まれたんです。今日は蓮君の幼稚園の入園式だから、翔の変わりに参加するようにって……。あの……僕、ひょっとして迷惑……でしたか?」「うううん。そんなこと無いよ。だって僕修ちゃんのこと大好きだもん」蓮は修也に抱きついた。「そうかい? そう言って貰えると嬉しいな。よし、それじゃあ3人で行こうか?」修也は蓮の左手を握りしめた。「うん、お母さんも手、繋ごう?」蓮は小さな右手を差し出してきた。「そうね。行きましょう?」朱莉は蓮の右手を握りしめると、3人は蓮を真ん中に駐車場へと向かった――**** 蓮が通う事になる幼稚園は朱莉たちが住むマンションからスクールバスで15分程の距離にある。今日だけは入園式なのでスクールバスは利用しないが、明日から蓮はバスに乗って登園することになっている。 今年入園する園児は合計120人。この地域では稀にみないマンモス幼稚園
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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1-2 蓮の入園式 2

すると、傍らに立つ修也が小声で声をかけてきた。「大丈夫ですか? 何だか僕達随分注目されているようですけど全く気にすることはありませんからね? 何か困ったことがあればいつでも相談に乗りますから」「あ、ありがとうございます……」朱莉は修也に元気づけられ、笑みを浮かべるのだった。**** 入園式終了後――修也の運転する車の後部座席に乗り込んだ朱莉と蓮は楽し気に会話をしていた。「どうだった? 蓮ちゃん。幼稚園、楽しんで行けそう?」朱莉は蓮の手を握りしめながら尋ねた。「うん! 僕ね、もうお友達が出来たんだよ! ハルト君とヒナタ君て言うの。明日幼稚園に行ったら一緒に遊ぶ約束したんだよ?」蓮は目をキラキラさせている。「あ、後ねえ……ハルト君とヒナタ君が言ってたんだけどぉ……」「何? 何て言ってたの?」「お母さんのこと……とっても綺麗だねって」「え……ええ!?」朱莉は思わず赤面してしまった。するとそれまで静かに運転をしていた修也が会話に入ってきた。「うん、そうだね。蓮君のお母さんはとっても綺麗だものね」「か、各務さんまで……!」朱莉はますます赤くなる。「あ! やっぱり修ちゃんもそう思う? お母さん綺麗だもんね?」「うん。勿論そう思っているよ」2人の会話が恥ずかしくなる朱莉。「も、もう……この話はやめましょう。それよりも、もっと幼稚園のお話を聞きたいな」「うん、いいよ。他にはねえ……」そして蓮の話はマンションに着くまで続くのだった――****「各務さん、今日は本当にありがとうございました」車から降りた朱莉は修也にお礼を述べた。「ねえねえ、修ちゃんも家に行こうよ」修也のことが大好きな蓮は手を引っ張る。「ごめんね。蓮君。僕は仕事に戻らないといけないんだ」修也は蓮の前にしゃがんだ。「ええ~そんなあ……」蓮は口をとがらせる。「蓮ちゃん、あまり各務さんを困らせちゃ駄目よ」朱莉がたしなめると蓮はますますふくれっ面をする。「だって……」「本当にごめんね……あ、でもその代り今度の日曜日、また水族館に連れて行ってあげるよ。蓮君、イルカ大好きだっただろう?」「え!? 本当!?」「うん、勿論だよ」「え……? でも各務さん。それはご迷惑では……」朱莉の母親の入院はまだ続いている。そして翔がカルフォルニアへ行ってからは修也が代
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