14時――朱莉と修也は病院に来ていた。「それにしてもまさか翔の入院した病院と、朱莉さんのお母さんが入院している病院が一緒だとは思いませんでした」修也は病院を見上げている。「あの……各務さん」朱莉は修也に声をかけた。「何ですか?」「本当に折角のお休みなのに、こんなにも私に付き合わせてしまって本当に申し訳ありません」「別に謝る必要は無いですよ。それに本当なら今日は蓮君と一緒に水族館に行く予定だったんですから。それじゃ、中へ入りましょう」「はい」2人で並んで病院に入ると修也が立ち止まった。「朱莉さん、お花屋さんへ寄ってもいいですか?」「え? お花屋さん?」「はい。良く考えてみたらお見舞いに来たのに手ぶらでした。お花を買って、お見舞いの品にしたいと思ったんです」「そ、そんな! お見舞いなんて気にしないでください! むしろ病院に来ていただいていることも申し訳ないと思っている位なのですから。それに私には敬語の必要はありませんので」朱莉は慌てた。「そう? それなら敬語は辞めさせてもらうよ。だけど、お見舞いの品なんて気にしないでとか言わずにプレゼントさせて貰えないかな? だって朱莉さんは翔の奥さんなんだし。翔だってお見舞いに来たときは何か品物を持ってきていたんじゃないの? 翔はどんな品を選んでいたのかな?」すると朱莉の顔が曇った。「え? どうしたの? 朱莉さん」「あ、あの……翔さんは……」朱莉の様子から修也はピンときた。「朱莉さん……まさか、翔は……?」「は、はい。翔さんは……母のお見舞いに来たことはまだ一度もありません……」朱莉は俯いた。「そう……なんだ。ごめんね。変なこと尋ねて」修也が謝ると朱莉は慌てた。「い、いえ! いいんです。翔さんは忙しい方でしたから。明日香さんと暮らしていた時は、明日香さんの手前、お見舞いに来ることは出来ませんでしたし、蓮ちゃんが産まれてからは、私の代わりに蓮ちゃんを見てくれていたので。もっとも今は各務さんが翔さんの代わりをしていただいて、とても助かっています。本当にありがとうございます」「そんなことは気にしないでよ。だって蓮君は僕と血の繋がりがあるんだから。取あえず、お願いだからお見舞いの品は買わせてよ」ここまで言われれば、朱莉は頷くしかなかった。「各務さん。ありがとうございます。きっと母は
最終更新日 : 2025-06-11 続きを読む